治療方法

治療アルゴリズム

注:

ガイドラインは目安であり、患者の希望や腫瘍の状態、施設の設備環境、術者の経験や知識、技量などにより、肝動脈化学塞栓療法が実施できる可能性もありますので、専門の医療施設にご相談ください。

科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン(2017年版)
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肝切除

肝機能が許す限り、局所制御に優れている。最も確実な治療法であるが、侵襲が大きい。手術後に肝不全を発症すると致命的で、手術前の準備や術後管理などが重要である。肝切除術後の長期成績は年々改善され、5年生存率が54.2%であった。単発の肝細胞癌に対し、第一選択として推奨される。

塞栓療法

鼠径部の血管からカテーテル*を挿入して行われるため、外科的手術に比べて、低侵襲であり、入院期間も大幅に短縮される治療法である。原則として4個以上では第一選択となっている。経カテーテル肝動脈化学塞栓療法 TransArterial ChemoEmbolization (TACE) は、カテーテルを腫瘍支配動脈に選択的に挿入し、ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル(リピオドール®480注10mL、以下リピオドール)と抗がん剤を混和させた懸濁液を注入した後、塞栓物質(中心循環系血管内塞栓促進用補綴材:ジェルパート)を後から詰め、腫瘍を虚血壊死に至らせる治療法(conventional TACE: cTACE)や薬剤溶出性の球状塞栓物質を用いた治療法(DEB-TACE)が推奨されている。
IVR専門医が実施した結果によると、cTACEの治療成績として、抗がん剤としてエピルビシンを使用した場合、奏効率82%、1年生存率94.5%、2年生存率76.7%であった1)。DEB-TACE(海外データ)では、奏効率が51.6%であった2)。
IVR専門医とは : 日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会が認定する医師で、一定以上の実績や知識が必要。
http://www.jsir.or.jp/

1) Jpn J Intervent Radiol 2012:27:299-304
2) Cardiovasc Intervent Radiol 2010:33:41-52

*用語解説

カテーテル:
cTACEの場合、通常は大腿動脈から肝動脈を経由して肝癌にアプローチをしますが、その際、細いチューブ(管)を血管内に通すことになります。この時に使用する細いチューブ(管)のことをカテーテルと呼びます。カテーテルの太さおよび長さは様々で、0.5~0.6㎜程度の太さで、105~150cm程度の長さがある。

ポート:
皮下に埋め込む小型の器具で、リザーバーとも呼ばれる。ポートから肝動脈にカテーテルが通っており、必要な時に皮膚の上からポートに注射器で抗がん剤を投与することにより、患者の投与時の負担を軽減し、何度も簡便に投与できる。

動注療法

体内に専用の器具(カテーテルとポート)を埋め込んで、その器具から繰り返し肝動脈内に抗がん剤を投与する治療法であり、高濃度の抗がん剤を肝細胞癌に直接投与することが可能である。結果として全身の抗がん剤の濃度も低く抑えられ、全身への副作用の頻度は低くなると考えられている。

分子標的治療薬

外科手術、肝移植、局所療法、TACEが適応とならない切除不能進行肝細胞癌でPS(パフォーマンス ステータス)良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh分類A症例にソラフェニブまたはレンバチニブによる治療が推奨されている。ソラフェニブの治療成績としては、全生存率の中央値はプラセボ群241日,ソラフェニブ群324日であり,プラセボ群と比較しソラフェニブ群で有意なOSの延長が認められた。レンバチニブの治療成績としては、全生存率の中央値は、13.6か月で、ソラフェニブ群(12.3か月)と同等であった。

肝移植

日本では脳死肝移植は脳死ドナーの不足により極めて少ないが、生体肝移植は積極的に行われ、肝がんの発生母地である肝硬変と肝癌を一度に治せる優れた治療法であり、5年生存率は約75%と良好である。
セカンドオピニオンとは?
担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セカンドオピニオンを聞く」と言います。ここでは①診断の確認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当医に伝えましょう。
担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませんが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく相談してみましょう。