肝動脈化学塞栓療法

肝がんの局所別 TACE治療戦略

  1. 最も選択的TACEが難しそうな血管を最優先する(尾状葉枝、微細な血管、屈曲蛇行の強い血管)
  2. 複数の血管から栄養される腫瘍の場合、関与が少ないものから塞栓し、主要な栄養血管は最後に塞栓する(主要血管を最初に塞栓するとリピオドールや造影剤が腫瘍内や周囲肝実質内に高濃度に停滞し、透視やその後のDSAで腫瘍の残存評価が難しくなる、残された関与の少ない血管はリピオドールエマルションの動きが観察しづらく、時に腫瘍内にリピオドールエマルションが移行しているかの判断も難しくなります)。
  3. 1つの区域枝や亜区域枝内に塞栓すべき血管が複数存在する場合、ゼラチンスポンジの溢流による他の栄養血管の閉塞を避けるために、一番末梢で分岐する血管から中枢側の血管へと順に塞栓するように努める。ただし、その途中に選択に難渋しそうな血管がある場合、末梢の枝のリピオドール注入後、ゼラチンスポンジの塞栓は後回しにし、先に近位にある難しい血管の選択を試みると良い。

TACE手技の実際

大型肝がんに対するTACE/分割TACEの概念
および治療戦略
初回治療時にできるだけ根治的なTACEを施行する必要がありますが、一期的に強力に塞栓すると急性腫瘍崩壊症候群の発生が危惧されるので、血管解剖に基づき2~3の部分に分割して塞栓し、意図的に残した腫瘍は3~10週前後に塞栓します。大型肝がんの治療では腫瘍破裂の予防が優先され、次に脈管内への腫瘍進展の阻止になります。大型の腫瘍で最も問題となるのは肝外供血の存在で、肝外側副路からの栄養血管を確実に塞栓することが重要となります。

合併症

1. 塞栓後症候群(post-embolization syndrome)
TACE後に出現する悪心嘔吐、発熱、疼痛、倦怠感、食欲不振などの症状の総称。合併症というよりはむしろ塞栓に対する反応であり、通常は1週間程度で消失する。症状の程度は塞栓範囲・強度と相関し、広い範囲を塞栓する場合には軽めに塞栓することで軽減できる。超選択的TACEの場合にはほとんど問題にならない。
2. 肝不全
主に肝予備能が不良な患者で、肝実質が広範囲に塞栓された場合に生じる。マイクロカテーテルが使用されるようになり減少している。
3. 虚血性合併症
肝梗塞、胆嚢炎、胆嚢梗塞、肝門部胆管狭窄、胆管壊死、胆汁嚢胞、その他の非標的塞栓があり、その非標的塞栓のうちで、肝動脈からのリピオドールを用いたTACEではリピオドールによる肺塞栓や脳梗塞が20mL以上の大量のリピオドールを使用した際に報告されています。肝硬変では門脈肝静脈短絡が多数形成され、肝動脈静脈短絡、肺動静脈短絡などを伴う場合は、十分に注意する必要があります。
4. 感染性合併症
TACE後の肝膿瘍、胆汁嚢胞があります。内視鏡的乳頭切開術、胆管空腸吻合術の既往、消化管の悪性腫瘍合併例、胆道ドレナージ、カテーテル、ステント留置ERBDカテーテル留置術や門脈腫瘍栓合併例で発生頻度が高く(胆道内に炎症が生じ、胆管血流が上昇している)、また。胆道術後の患者に対するTACEは原則禁忌です。
5. その他の合併症
TACE後の腫瘍破裂(腹腔内出血)、急性腫瘍崩壊症候群、胸水、肺底部無気肺、横隔膜運動機能低下、血管損傷、血栓、塞栓、穿刺部血腫、仮性動脈瘤、動静脈瘻、迷走神経反射、薬剤に対する過敏反応があります。