2021/03/23(火)

『ECR2021オンライン参加報告』

京都大学医学部附属病院放射線診断科 伏見育崇先生

コロナ禍の昨年に引き続き、2回目のオンライン開催のためか、ほとんどストレス無く講演などを見ることができました。時差のため最終日の演題についてはほとんど見ることができなかったのは少々悲しかったですが。Premium Educational Packageに入っておくと会期以降も見ることができるようでした。
講演画面では、クリムトの「接吻」が発表中にピカピカ光るのがおしゃれ?で、ウィーンの人のクリムト愛の深さが伺えました(勝手な憶測ですが)。Embracingが学会のテーマのようでしたが、ソーシャル・ディスタンスをどうしたらいいのかよくわからなかったです。しかし、Web参加であっても、演者の表情が比較的明瞭に見える仕様であったため、臨場感が比較的保たれていたように思いました。開催時期の関係で自分にとってECRはなかなか参加しにくい学会でしたが、非常に好印象を持ちました。学会が多い時期ではありますが、ECRのルーチン参加も考えていきたいと思います(実は今回が初参加でした)。
以下に、ECR2021において私が興味を持ったテーマをいくつかお示しします。
High-field MRとlow-filed MRの講義が個人的には興味深く拝聴しました。High-filedとしては7テスラ、low-filedとしては0.55、0.05テスラの話題で、1.5~3テスラのような中間は無い両極端な構成でも、十分に楽しめました。AI技術がlow-filed MRの画質改善に役立つ可能性もあることから、ICUやMRへのゼロ・アクセスの地域への展開も期待できるということで、楽しみではありますが、本当に実現していくのか先読み能力に乏しい自分としては半信半疑でもありました。
Neurology 2015に発表されたInternational consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disordersに従った臨床例の提示がありました。Circumventricular organs, Area postremaの重要性、shaggy enhancementがMSとの鑑別に有用などを明快に示していただきました。また、まだまだ整理が付きにくいMOG抗体関連疾患についても、両側性、多発性、FLAMES、髄軟膜造影効果、脳神経involvementなどの有用性を示していただきました。鑑別が難しいMOGADとNMOSDですが、皮質、傍皮質病変ならMOGAD、脳室周囲器官病変ならNMOSD、両側視神経病変ならMOGAD、視神経萎縮ならNMOSD、脊髄病変が消退し萎縮を伴わないものはMOGAD、萎縮を伴うものはNMOSDと明快に示していただきました。
COVID19関連では、UK Biobank brain MRI protocolの発表もありました。Capturing MultiORgan Effects of COVID-19 (C-MORE)というトライアルの一部の紹介のようでしたが、30分とやや長めの撮影プロトコルのUK BiobankをCOVID19 survivor用に改変して、17分程度のコンパクトにしたプロトコルでした。コンパクトにするに当たり、全ての撮影を短くするのかと思ったのですが、T1 (MPRAGE)という基幹シークエンスだけは、UK biobankと同一のものを使用するようで、これにより互換性をキープするのかと推察されました。COVID19では、白質のvolume loss、視床のT2*値の上昇?などが見られるようです。今後さらに縦断的にフォローされていくようです。貴重な前向き研究になると思われました。C-MORE自体は脳、心臓、肝臓、肺、腎臓を含めた70分のプロトコルのようです。
ヨーロッパにおける神経放射線医師に与えたCOVID19の影響についてEuropean Society of Neuroradiology (ESNR)による調査の報告もありました。1500人以上のESNRメンバーなどにメールなどでアンケートを行ったようですが、167回答があり、48%でpersonal protection equipmentが十分に手に入り、40%ではその後状況が改善した、検査数はcrisis phaseを過ぎた状況でも減少している、心理面で悪化の傾向がある、などの報告がありました。他人事ではない状況が垣間見えました。
来年こそは現地でのECRをenjoyできるように世界がCOVID19を克服できることを祈念いたします。(以前に撮影したGratzの街の風景と、チューリッヒ中央駅です)

『ECR 2021学会レポート』

弘前大学 放射線診断学講座 掛田伸吾先生

COVID-19禍のなかECR 2021が始まりました。ワクチンの恩恵に淡い期待もありましたが、昨年と同様、ウエブ開催となりました。私は、昨年の参加アカウントに加え、320 EURを支払いPremium Education Packageを取得し、仕事の合間に視聴しています。Opening Ceremonyでは、PresidentであるMichael Fuchsjager先生より、COVID-19禍における放射線診療やウエブを用いた教育、放射線業務従事者へのオンラインによる心身へのサポート(ヨガや合気道教室など)についての学会の取り組みが紹介されていました。Ceremonyの雰囲気は、クラシックから始まり次々に登場する様々なジャンルの音楽が、学会ポスターに象徴される金色の映像美に大変マッチしており、Fuchsjager先生のこだわりが感じられました。また終盤では、Fuchsjager先生が美声を披露されるサプライズもありました。
学会の内容は、今回も参加者を楽しませる企画が満載で、Image Interpretation Quizは、映画スターウォーズ仕立てになっており、演者が映画のキャラクターに扮して映画のパロディを盛り込みながらプレゼンする様子は、ファンならずとも楽しめたのではないかと思います。また「ESR meets the Arabian Peninsula」という企画では、普段は想像することもないUAEやサウジアラビアなどアラビア半島諸国における教育や放射線診療を知る貴重な機会になりました。研究発表を見ますと、やはりartificial intelligence (AI) とCOVID-19が話題でしょうか。RESEARCH PRESENTATION SESSION:COVID-19 findings では、多くの感染者をだした国々より、蓄積した臨床・画像データに基づく、胸部画像所見や予後に関して、まとまった報告がありました。なかでも造影CTを用いた肺病変と肺潅流の研究では、感染3ヶ月以降に胸部症状を有する患者の65.5%に肺潅流異常を認め、その多くが通常の胸部CTでは所見を指摘できないと報告していました。この結果は、COVID-19患者における高い後遺症の頻度を示すものであり、今後も放射線科医が取り組むべき重要なテーマであると感じました。また、AI in the diagnosis and treatment of COVIDでは、胸部単純X線や胸部CT におけるAIを用いた診断サポートシステムの研究が多数報告され、それぞれのシステムの臨床応用における高い完成度を感じました。脳神経領域の実臨床レベルのAIでは、進行性核上性麻痺(PSP)診断におけるdeep-learningベースのアルゴリズムを用いた脳容積解析システムがあり、中脳容積に適用することでPSPとパーキンソン病を高い精度(AUC = 0.915)で鑑別できると報告していました。この結果は、従来用いられてきたmidbrain to pons ratio (MTPR)に適用し診断精度より有意に高くなっており、AIによる絶対的な容積評価が、以前に我々が用いてきた相対的な容積評価より優れていることを示唆するものかもしれません。このシステムの解析時間は4分程度であり、客観的な診断が難しいとされる様々な変性疾患の萎縮の評価への応用が期待されます。
各機器メーカ-からの新製品は学会の目玉ですが、今回はより実用的なAI技術が多く報告されていました。昨年のRSNAと同様にdeep Learningを用いたノイズ除去再構成技術が各メーカ-で製品化されています。またRSNAでは7T MRIの臨床機が登場したことがトピックでしたが、今回の学会では低磁場MRI(0.55T)も話題かもしれません。低磁場のデメリットである低画質をノイズ低減など最新技術でカバーすることで、臨床的な用途に十分対応できるとのコンセプトです。低磁場装置には、磁化率のアーチファクトの軽減などの利点もありますが、最たるものは経済的なメリットでしょうか。MRI装置の保有台数が過剰とも言われる日本では、あまりピントこない話題かもしれませんが、MRIが普及していない国々では魅力的な装置と思われます。
最後に、全体のプログラムを見て感じるのは、座長と演者に占める女性の割合の高さです。不幸にも、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長のドタバタ劇の直後でもあり、より意識したのかもしれません。日本医学放射線学会でもダイバーシティへの意識と取り組みが年々高まっており、ECR2022では、より多くの女性会員の活躍を予感しています。最後に、今回もいずれの発表も大変勉強になり、多くの若い放射線科医には贅沢な学会と思われました。ただ一方で、さすがにウエブ学会がこんなに長く続くと、以前に経験したハプニング的な討論、思わぬ研究者との出会い、立ち話から始まる研究テーマ、など実地開催ならではの収穫が懐かしく思えます。「Can we limit gadolinium use in neuroimaging?」と題したSPECIAL FOCUS SESSIONで、2人の演者が「I don’t need gadolinium」と「I always need gadolinium」との刺激的なタイトルで発表していましたが、やはりウエブでは何か違和感を覚えます。ディベート形式で、さらに会場からの意見もあれば、より面白いのに・・・。スターウォーズの全シリーズを映画館で見てきた私としましては、来年こそはウイーンに行きたいと願っています。

こんな時もありました。

『独断と偏見のECR2021視聴記』

山梨大学医学部放射線医学講座 市川新太郎先生

ECRは私が最も好きな学会のひとつである。その理由としては以下のようなものが挙がる。
1. ウィーンの街並みがきれい
2. Image interpretation sessionやCase of the dayが充実している
3. 学術セッションも教育セッションも充実している
4. 英語を母国語としない参加者が多い
昨年からオンライン開催となっているため、残念ながらウィーンの街並みを楽しむことはできないが、2と3に関してはオンライン開催でも引き継がれている。4に関してもオンライン開催ではあまりメリットとはならないかもしれない。私は以前現地開催だったころ、自分の口頭発表の前に座長に、「英語が得意ではないので、Q&Aの際に助けてください」と申し出たところ、その座長(ドイツの方だったと記憶している)は、「私も英語が苦手だから大丈夫。君の方が上手だよ。」とジョークで返された経験がある。このように、英語を得意としない者に対して寛容な雰囲気がある(と勝手に感じている)ため、現地開催が再開された際にはぜひ英語にあまり自信のない先生方も発表に挑戦してみていただきたい。
2についてだが、私はImage interpretation sessionやCase of the dayに参加することが好きで、学会参加の目的のひとつとなっている。ECRのImage interpretation sessionはエンターテイメント性が強く、今年はスターウォーズをテーマとしたつくりとなっていた。学会のPresidentをはじめ、司会者や発表者が映画のキャラクターに扮して登場し、スライドのデザインも映画をイメージさせるものとなっている。ECRはImage interpretation sessionが2つあり、エキスパートの先生が解答者となる通常のものと、Junior image interpretation quizという若手医師が解答者となるものがある。どちらも非常に勉強になる興味深い症例を堪能することができる。図1はオンデマンド画面のImage interpretation sessionのアイコンをキャプチャしたものであるが、まさにスターウォーズであり、この絵を見ただけではImage interpretation sessionと気づくのは難しい。また、ECRのCase of the dayは非常に参加しやすいのが特徴である。学会開催期間中毎日4~5問出題されるが、いずれも診断名の候補が選択肢として提示されており、その中から正しい診断を選ぶ形式である。診断名を自分で考えて記載する方式だと、見当もつかないような症例に遭遇した時はお手上げになってしまうが、ECRの方式ではそのような心配がない。誰でも参加しやすい方式だと感じている。正答数が上位10名に入るとWinnerとしてホームページに掲載され、賞状がPDFファイルで送られてくる。私は運よく2年連続でWinnerとなることができた(図2)。
次に3に関してだが、セッションの数が非常に多く、12月末までオンデマンドで視聴することができるのが特徴である。その中で私の専門である、肝臓の画像診断に関する学術セッションについてみてみると、今年は3つ設定されており(RPS 101a Advances in liver imaging、RPS 501a Hepatic imaging、RPS 301b Liver and the pancreas)、LI-RADS関連の話題と、MRI撮像技術に関するものが多かった。LI-RADSは米国放射線学会(ACR)が提唱している、肝細胞癌のレポーティングシステムを標準化するためのアルゴリズムだが、ヨーロッパでも関心が高いことが伺える。また、AIに関しては上記とは別にAIのセッションが設定されており(RPS 705 AI in abdominal imaging)、14演題中6演題が肝臓に関するものだった。腹部のAIでは肝臓領域で特に関心が高いようである。
最後にCOVID-19関連の演題について見てみると、昨年から続くコロナ禍を反映してCOVID-19関連の演題が非常に多いのも今回の特徴である。検索タブのトピック欄にある「COVID-19」をチェックすると11ものセッションがヒットし、そのうちの4つが学術セッションで、33演題が含まれている。また、Poster Exhibitionでタイトルあるいは内容に「COVID」を含む演題名を検索すると、79演題がヒットする。現時点での知見を総ざらいするのに十分すぎるボリュームと考える。
以上、ECR2021について概説させていただいた。興味を持っていただいた方は今からでもオンデマンドセッションを視聴するアクセス権を購入することができるようなので、是非視聴してみていただきたい(https://www.myesr.org/premium-education-package)。再び現地でウィーンの街並みを堪能することができる日が来ることを切に願っている。

図1

図2

2020/12/15(火)

『コロナ禍のRSNA2020』
自治医科大学附属さいたま医療センター 真鍋徳子先生

振り返るとはじめてのRSNAは2001年のNY同時多発テロ(9.11)の直後であり、多くのアメリカ国内からの参加がキャンセルとなり、シカゴ自体もテロへの警戒レベルが高く、シカゴのシンボルタワーであるウィリスタワー(当時はシアーズタワーと呼ばれていた)も入場制限があったように覚えている。それから20年にわたり何度も現地で参加してきたが、シカゴでのお楽しみ(写真1)は今後にとっておくことにして、日本の日常業務と併走できる新しいRSNA参加様式を享受しようと思って臨んだ。時差15時間であるため、現地朝8時半のライブセッションを夜11時半の寝る前に、現地午後5時のセッションを朝職場で仕事しながら聴講する一週間となった。とはいえ、そのほかにもたくさんの興味深いセッションがあるので、ライブではなくオンデマンドと組み合わせてなるべく多くのセッションを視聴するようにした。尚、ライブセッションはon-timeで質問を受け付けているので(セッションが終わると同時に質問も受け付け終了)、現地でface to faceで質疑応答するよりは(写真2)、英語も通じやすいし、ぐっとハードルが低く感じた。
尚、参加者は水曜のDaily Bulletinによる発表では26,318人ということで、参加登録は例年より20%増加したそうである。
いくつか興味深かったものを(注:好みには偏りあるが、ご容赦を)紹介させていただく。

・COVID-19関連:驚くべきことにCOVID-19関連は全部で74(!)のセッションがあり(内訳はFeatured education and science sessions9, education exhibits 51, science abstracts14)、すべて見きれていないが、まずは心血管合併症、救急を中心に拝聴した。scientific sessionは米国以外にヨーロッパと中国からの演題で、どこも今年の3-4月にかけて経験された数十例の症例を集めて検討していた。パンデミックが起き、現場が混乱を極める中で6週間程度の短期間にデータを集め、RSNAに演題を出すという丹力に感服したし、実際に遭遇し悩んでいた症例に似た事例をたくさん勉強できた。またHot Topic sessionのImpact of COVID on Workforce Resilienceはコロナ禍の中で放射線科組織をどのようにマネージメントしていくかという示唆に富んだ内容で、多くのことを考えさせられた。
・心臓関連:多くの演題があるが、時間のない方はdigital posterの受賞演題を中心にみることをお勧めしたい。力作揃いであるが、Magna Cum Laude受賞(CA124-ED-X)はまさかの心電図の読み方の発表で、最新の撮影法の演題でなくとも、多くの放射線科医が苦手としているであろう心電図を取り上げた教育的な切り口が評価されるという良い例であったと思う。またECMO下での造影CTの発表(CA144-ED-X)は、独特のアーチファクトを血行動態の解説とともに詳しく説明しており、COVID-19陽性のECMO患者の造影CTを評価するために必要な知識を得ることができ、大変参考になった。

RSNAでは毎年機器展示も目玉であり、心臓領域はPhilips社が満を持してFeature trackingによるストレイン解析と4D-flow MRI解析ソフトをリリースした。Canonのバーチャル機器展示はかなり凝った作りとなっていて、見応えがあった。RSNA会期後もアクセス可能であるそうなので、ご興味のある方はぜひアクセスを(キヤノンメディカルシステムズRSNA特設サイトhttps://www.canonrsna20.com/)。
海外の学会に参加する醍醐味は、現在のRadiologyの潮流を感じ、世界の中での日本そして自分の立ち位置を確認すること、そしてnetworkingにあると思っている。今回はコロナ禍の中であっても、学会を通じて世界中の放射線科医にいままでない親しみを感じた。一方で、シカゴのあの空気感が恋しくもあり、安全に現地参加できる世の中に再び戻ることを願っている。

写真1:今回はシカゴの写真ないので、前回参加時のあるディナーの一枚。1パウンドのステーキのボリューム!


写真2:前回参加時のdigital poster前での質疑応答。マスクのない三密が懐かしい。相手の顔が見える良さはやはり現地ならでは。

 

『RSNA2020のvirtual conferenceでの腹部領域のトピックス』
広島大学 放射線診断学 中村優子先生

2020年11月29日から12月5日まで、第106回北米放射線学会(RSNA2020)が開催された。例年であれば、シカゴ開催であり、まず今年のシカゴの天候について述べたいところであるが、ご存知のごとく、現在も猛威を奮っている新型コロナウイルス感染はついにRSNAにも影響を及ぼし、今年は完全なvirtual開催となった。準備からirregularなことが多く、みなさんもなにかと苦労したのではないだろうか。特にこれまでscientific sessionは口頭発表とポスター発表に分けられていたが、今年は口頭発表がfeatured sessionとon demand sessionに振り分けられ、録音したスライドの事前アップロード、featured sessionは指定された時間にchat boxでの質疑対応が求められた。最近では国内でも新型コロナウイルス感染の対策としてオンラインやwebでの対応が増えていたため、なんとか対応できたものの、やはり新しいシステムはなにかと不安なことが多かった。
さて肝心の腹部領域のトピックスであるが、筆者は肝臓セッションを中心に聴講したため、肝臓に限局した報告となっているが、あらかじめご了承いただきたい。昨年同様、今年のRSNAではArtificial intelligence (AI)を用いた演題が多く、肝臓領域でもAIに特化したセッションが設けられていた。また本年に限ったことではないが、American College of Radiology (ACR)が提唱している肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma: HCC)の診断アルゴリズムであるLiver Imaging Reporting and Data System (LI-RADS)関連の演題が多く見受けられた。そしてHot topic sessionでは、腹部はAbbreviated MRIが取り上げられていた。これらのテーマにつき、私見を述べる。
AI領域では、診断にAIを用いる演題も見受けられたが、個人的には診断は流動的であり、時代にあわせ常に変化すると感じていることから(現にRSNA2020のテーマはHuman insight/Visionary medicineとされている)、補助にはなりえても(スクリーニングなどには有用かもしれない)、主となることはないのではないかと考えている。むしろ画質の改善にAIを使用することはAIの非常によい使い方であり、代表としてCTやMRIで近年開発されたDeep learningを取り入れた画像再構成が挙げられるが、これに関する演題も増えていた。次にLI-RADS関連では、今年はLI-RADSに2017年から採用されているHCCの治療効果判定アルゴリズムを用いた演題が多く見受けられた。LI-RADSは我が国では日常診療で用いている施設は少ないのではないかと思うが、LI-RADSのkey note lectureでは、LI-RADSはあらたなHCCの治療への効果判定や新しい撮像技術、AIも視野にいれ、updateが試みられており、肝画像診断をすべての面から包括できるようになることを目指していると紹介されており、LI-RADSは今後無視できない存在になると感じた。最後にAbbreviated MRIについてであるが、Abbreviated MRIとは、従来の撮像シークエンスを簡略化することで検査時間を短縮したスクリーニング目的のMRI検査である。以前から耳にはしていたが、個人的にはMRIは精査に用いられることが多いことから、すべてのシークエンスを用いて診断を行う必要があり、そのうちすたれるだろうと思っていた。しかしながら、Abbreviated MRIは、HCCのサーベイランスに使用される超音波のHCC検出感度が低いことから、その代打としての有用性が注目されるようになっており、今年のRSNAではhot topicとして紹介され、Abbreviated MRIのscientific sessionまで組まれていた。我が国でも今後精査のみならずスクリーニングにもMRIが用いられる時代が来るのかもしれない(件数が爆発的に増えそうで、その際はぜひAIに活躍してほしい)。
例年のRSNA参加では、研究面や言語面など、あらゆる面でRSNAは私を叱咤激励してくれるため、自分を奮起させるよい機会となっているのだが、今年は自分のデスクから自分のペースで演題を聴講できるものの、国内で従来どおりの業務終了後に演題を聴講しながら、本当に今週はRSNAが開催されているのだろうかと懐疑的になってしまう自分がいた(本執筆がなければ、どこまで演題を真剣に聴講する気になったか甚だ疑問であり、このような執筆機会を頂けたことに感謝したい)。やはりシカゴに行き、RSNAという会場に足を運べることが重要なのだと痛感した。新型コロナウイルス感染が一刻もはやく収束し、また従来どおりRSNAがシカゴで開催される日がくることを期待したい。

写真1 RSNA2019のポスター会場での当科の医局員の風景

写真2 RSNA2019で撮影した翌年のRSNA2020の宣伝ポスター

 

『RSNA 2020 中枢神経系領域について』
京都大学大学院医学研究科 放射線医学講座(画像診断学・核医学) 伏見育崇先生

Web開催されたRSNA 2020に参加しました。時差の関係もあり、オンタイム初めての試みと思われますので、主催者のご苦労は察するに余りありますが、私が参加したセッションなどでは、オンライン開催で時々見られるようなマイクトラブルは見られず、音声も多くが良好に聞き取れました。さすが、RSNA! リアルタイム参加のセッションであっても、巻き戻して再生することができたため、ストレス無く視聴することができました。通常の診療・生活をしながらのWeb参加だったので、RSNA会場で学会の雰囲気を感じるような没入感はあまり無かったですが、会場を移動すること無くセッションに参加でき、開催時間が重なっているセッションであっても後日に再度視聴が可能であったため、現地開催よりも便利な点も多々あることを実感しました。これは不都合な真実のような気がしました。以下、興味深かった演題などをお示しします。
なんと言っても、COVID19関連。中枢神経系領域のCOVID19関連の病態の報告では、患者数の多いアメリカならではの多彩な所見が報告されていました。
Dr. Christopher G. Filippiによると、初期は通常の検査が急に少なくなり、次に、梗塞・出血・大血管閉塞などが見られたそうです。凝固能亢進による血栓性、凝固異常に伴う出血、血管内皮障害(IL-6などによるサイトカインストーム)などが要因としてあるとのことでした。亜急性期・慢性期では、脳症(ICU brain, 低酸素・虚血、PRES)、微小出血、分水嶺梗塞、稀だが脱髄(ADEM, GBS)なども見られるようです。Unpublished dataとのことですが、2ヶ月間で、脳症または精神症状を呈した141例のCOVID19陽性のICU患者に対して脳MRを行って71例に何らかの陽性所見を認めたそうです。Juxtacortical microhemorrhageなどCOVID19に特異的な?所見も集積しつつあるようです。全く新しい疾患であるCOVID19による中枢神経系異常に対して、苦慮されながら対応されてきた過程を経時的に垣間見ることができました。
Dr. Rajan JainもNYUにおけるCOVID19対応、NYU Family Connect Teamの活動、レジデント教育対応, Virus-Associated Necrotizing Disseminated Acute Leukoencephalopathy (VANDAL)などを示していただきました。
Dr. Ajay GuptaからはCOVID19とStrokeの関係、疫学などをreviewを交えてわかり易く示していただきました。既に多数のreview article, systemic reviewなどが行われていることにも驚きました。Nature Medicine 2020 Extrapulmonary manifestations of COVID-19は勉強になりそうです。
脳脊髄液減少症からは、post myelography CTにおけるearly renal pelvic opacificationの紹介がありました。Spinal longitudinal epidural CSF (SLEC)の陽性例では早期腎盂濃度上昇が見られ、SLEC陰性でもCSF-venous fistulaがある例では早期腎盂濃度上昇が見られたとのことでした。CSF spaceと硬膜外静脈との短絡についても、直接的な短絡、meningeal diverticulaの破裂?やクモ膜顆粒による吸収亢進などが挙げられていました。
MRgFUSの実際、Photon-counting CTなど、最先端技術の紹介も非常に興味深いものでした。
COVID19の早期収束、シカゴでの参加の実現を祈念致します。写真は2019年に撮影したシカゴの夜景です。

 

『RSNA2020 virtual conference Neuroradiology / Head & Neckについて』
東邦大学医療センター大森病院放射線科 堀 正明先生

皆様ご存知のとおり、RSNA2020はオンラインのvirtual conferenceとなりました。参加登録をして、口演などを閲覧しようと意気込んでいても、リアルタイムの講演は日本時間で夜中であり、その後のオンデマンドの講演も、視聴のために1時間とか2時間を空けるのがなかなか難しく、結果ポスターを中心に閲覧しているのが、私自身の正直なところです。シカゴまで行ってしまえば、他の業務で煩わされることはないと思いますが、日本にいて「RSNAのこの講演を見たいから2時間、昼間に時間を確保する」というのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
さて、今回のNeuroradiology / Head & Neckのデジタルポスターですが、全体的には前年度同様の内容で、画像と病理の対比がやはり王道であると感じました。実際に受賞しているポスターは、そのようなものが多いです。また、今年のトピックスの1つが、COVID-19に関する発表であるかと思います。Neuroradiology / Head & Neckのデジタルポスターで「COVID」で検索すると、15程認められます。この領域におけるデジタルポスターは全体で310であるので、やや多い感はありますが、ご時世を考えますと当然です。なお、あまり中枢神経に詳しくない方のために簡単に説明しますと、COVID-19感染に伴う中枢神経の病変は多岐にわたることが知られています。いわゆる脳血管障害(血管閉塞、脳梗塞や出血)の他、脳炎、白質脳症、脱髄等の報告があり、画像としては主にMRIによる論文による報告も増えつつあるのが現状です。前者は、血栓形成に伴う変化が理由の1つとしては考えられますが、後者に関してはサイトカインの関与などの推測はされているものの、その機序の詳細は現段階では不明な部分が多いと思います。そのほか、感染後脳症や脊髄炎、末梢神経障害も知られています。これら神経病変の正確な頻度は人種や地域によっても異なり、本邦におけるその頻度はおそらくあまり高くないと予想されますが、RSNAのポスターによくある表現を借りると、「Radiologist Needs to Know」であることは間違いありません。
余談ではありますが、今回のデジタルポスターの1つ、NR202-ED-X(ペンシルベニア大他)のタイトルがなかなか秀逸であったので紹介したいと思います。「Navigating the Uncharted Waters: What the Radiologist Needs to Know About CNS Involvement by this Crazy Odd VIrus of December 2019 (COVID-19)!」。
さて、オンラインの学会参加は、教育的展示などはゆっくり自宅などから閲覧できるという利点はあるものの、学会というよりは出来のよい、up to dateの教育的コンテンツを見ているような気がします。来年こそは、オンサイトでの参加ができるような世界であることを強く望みます。

『RSNA2020Web開催でのトピック、機器展示の印象』
東海大学医学部専門診療学系画像診断学 丹羽 徹先生

今回のRSNAは全面的にWeb開催であった。RSNA特有の雰囲気は味わえないものの、長距離移動や時差ボケがない、広い学会場内の移動をしなくてすむ、スライドがじっくり見られる、多数の講演をオンデマンドでみられるなど利点も多く感じられた。Web上の構成には趣向が凝らされていた。スライドは演題を見るときに全スライドも同時に表示され、現在どこをみているかがわかりやすい構成になっている、1枚のslide中の複数の動画がスムーズに再生され、アニメーションも問題なく表示される、ある演題を閲覧中に関連のありそうな演題がリストアップされるなど、Web学会としてとてもよくできており、本邦の学会も参考にすべき点があるように思われた。
AIは今回もtopicの一つで多くの演題が発表されていた。病変の検出、画像所見からの予後予測、画質改善(ノイズ除去や高分解能化)、病変・関心領域の抽出などは近年の主なテーマになっていると思われる。今回は、AIを用いて、教育用の画像作成や、小児虐待の骨折診断など、さらにその応用は広がっていることを感じた。本邦では一部AIによる診断補助が画像診断装置(PACS viewer)でも使えるようになってきているが、現状ではまだ、限定的である。一方、海外では多くのAI製品が発売されているようである。今回100のAI画像診断製品を検討した演題があり、個人的にはとても多くの製品がすでに発売されていることを知り驚いたが、一方、本演題ではこれらの製品のうち18製品しかlevel3以上の論文として発表されていないと報告されており、多くのAI製品の検証はまだこれからということのようである。
小児や胎児では、十分な撮像時間がかけられない、動きがあるなど、撮像に制限があるが、以前では十分な画質が得られにくかった胎児の領域の画像評価に関する演題もみられた。Quantitative susceptibility mapping(QSM)による先天心疾患胎児における静脈洞内の酸素化評価や、virtual endoscopy(3D)にて胎児の四肢末端の評価を行う演題があり、近年の装置のS/N向上や撮像時間の短縮により、応用が広がったものと考えられる。
機器展示では、まさにvirtual展示を体験できた。Web上ではあるが、展示ブースに足を運んで、担当の方の説明をうけ、機器をみるようなvirtualな環境が再現されており、興味深かった。企業のセミナー、講演もあり、学術のみならず、医療機器に関する検討、今後の展望などを世界の医師、研究者などからの意見を聞けるのも参考になった。今回は、新しいレポーティングシステムの紹介に関する講演があった。我々の読影報告書は従来からあまり変化しておらず、一部キーイメージやリンクの機能がある装置もあるが、多くの施設では基本的には文字(テキスト)を中心としたものであると思われる。RSNAでは、画像、レポート、カルテ内での相互のリンクを強化したものが紹介されていた。すなわち、過去画像をキーイメージとして貼り付けると、自動的に「xx年yy月zz日のMRIと比較」といった文字がレポートに記入される、ハイパーリンク機能でレポートの文字をクリックすると、viewerが起動し、viewer上でその所見や前後の画像が確認できる、といったものであった。本邦でも一部ハイパーリンク機能を有するものがあることは知っていたが、RSANで紹介されていたシステムは、さらに機能を強化したものであった。「百聞は一見に如かず」ではないが、読影報告書で文字を中心に長々と説明するよりは、今後は画像を中心に所見を説明するようなレポートに変わっていくかもしれない。少なくことも個人的にはこのようなことは望ましいと考えており、今後、本邦のPACS・レポーティングベンダーにも機能を拡張していただきたいと思った次第である。
以上、個人的に気になった点をレポートさせていただいたが、学会の全体像は大きく、とてもすべてを網羅できない。ただし、会員/登録の状況によっては、2021年4月30日まで閲覧できるので、これからも少し時間をかけて講演を見ていこうと考えている。

Web開催のRSNA2020 迷子にならないために
筑波大学医学医療系臨床医学域放射線診断IVR学 中島崇仁先生

今年のRSNAはWeb開催で捉えどころが難しく、得るものがいつもより少なかったように思います。今回はWeb上で迷子にならないように、これまでのオンサイトでの参加を思い出してWeb参加をしてみました。来年は新型コロナウイルスが落ち着いてオンサイトで参加できることを希望して、ここでは私なりの例年のシカゴでのRSNA参加の仕方を紹介します。
毎日のリズムを作るために、Case of the dayという症例当てクイズがお薦めです。当日の夜中の12時が〆切りなので、夕食の後にホテルでPCやタブレットで症例を見て回答しておくと、翌日の午前中にメールで症例毎に正解・不正解の結果が届きます。ポスター会場の入り口には症例展示がありますので、午前中会場で特に聞きたいセッションがない場合は、他の人が集まって議論しているのを聞きながら、自分の回答を考えておくのも良いかもしれません。今年も深夜にやってみましたが、意外といつも通りにできました。
今回、RSNAの会員は参加費無料かつWebの閲覧無料という事になっていますが、これまでもVirtual meetingという形で、150ドルのオプションを選択すると、オンラインでリアルタイムもしくはOn-Demandで自分のPCやタブレットからアクセスする事が可能でした。あとで見直す事は少ないのですが、現地で参加するのにとても重要なサービスです。時差の関係で4時か5時には起きてしまうので、PCやタブレットを開いて、On-Demandで自分の気になるセッションを見ます。朝ですととても集中して勉強ができます。私のようなデジタルガジェット好きは、タブレットで閲覧しながら、PCで知らなかったことなどを調べていきます。そして、おなかがすいたら朝ご飯です。今回も日本時間の深夜にあるセッションをリアルタイムで聞かずに、朝ご飯を食べながらOn-Demandになったセッションを聞くのが正解だったように思います。
お昼は会場でご飯を食べながら、同じ大学の先生とは今年はどこが見どころかなどを話したり、友達や知り合いの先生とは久しぶりの再会でいろいろな情報交換をしたりします。今回バーチャルミーティングという機能がありましたが、実際に会わないと話が盛り上がりません。貴重な情報源でもあったので、ここは日本の学会も含めてなんとかしてもらえると良かったです。
午後は余裕があれば、機器展示会場に参加します。企業ブースのレセプション(受付)に行って、ジャパニーズスタッフをお願いします、と言えば、大抵はどなたかが対応してくださると思います。予めメーカーの方とアポイントメントを取っていることも多く、今回のWeb開催では日本人スタッフの方が日本で日本時間で準備していただけており、丁寧にWebで対応していただけたので、新しい技術についてはいつも以上に知ることができたと思います。
シカゴは日本食も含めおいしいお店がありますので、夕食は夜のセミナーなどのビュッフェではなく、ぜひシカゴの街に食べに行くようにしてください。たくさん食べておくと、力がわきます。今の日本でも皆さんと一緒にご飯を食べる機会がないですので、来年こそはシカゴに行けたら力がわいてくると思います。来年はオンサイトでの開催を希望しますが、Web開催になったとしても、バーチャルでこのような感じで参加してみると、Web会場の中を迷子にならなくて済むかと思います。

筑波大学附属病院の読影室にて

2020/08/31(月)

『ISMRM2020 on the WEB: ようやくWEB学会の歩き方がわかってきた
名古屋大学大学院 医学系研究科 革新的生体可視化技術開発産学協同研究講座 
田岡俊昭先生

2020年のISMRMは本来4月にシドニーで行われる予定でした。COVID-19の感染流行により8月へと延期となり、それに伴い、開催予定地もパリに変更になりましたが、感染は収束せず、WEBでの開催へと変更されました。本来なら2度目のシドニー開催のISMRMとなることから、私は1998年のISMRMのバッグ(写真)まで準備して楽しみにしていたのですが、その点では残念な結果となりました。一方、2020年2月以降半年近く、ISMRMのみでなく、日本医学放射線学会をはじめほぼ全ての学会がWEB開催となり、慣れると共にWEB学会の歩き方もわかってきました。前に座っている人の頭や、後ろの人の私語に悩まされない事もさることながら、WEB学会の最大の長所は、自分の都合の良い時間にプレゼンを閲覧することが出来ること、そして、プレゼンを繰り返し閲覧できることかと思います。何ならプレゼンのエッセンスを効率的に飛ばし見する事もできます。リアルの学会では、自分の興味のある演題もそうでない演題も10分なら10分で変わりませんが、WEB学会では演題にかける時間を自分の興味に合わせて可変出来る点はありがたいです。加えて、ISMRMでは抄録が論文並みに充実していることから、抄録とプレゼンを行ったり来たりしながら勉強が出来る点も、リアルの学会では出来ない長所です。また、ISMRMのサイトは(操作性に少し難があるものの)検索機能も充実しているので、通常は自分が訪れないようなセッションに分類された演題もカバーすることが出来ます。リアルの学会では抄録集で面白い演題を見つけたときにはそのセッションが終わっていたということも結構ありましたね。
今回のISMRMでは、あらかじめ録画されたプレゼンテーションは学会のウェブサイトで閲覧し、ライブのッションはZoomのウェビナーで行われました。月曜日のプレナリーセッションもZoomで行われましたが、京都大学の富樫教授がGold Medalを授与され、名古屋大学の長縄教授がFellowに選出されました。このような晴れがましい場で、皆で思いきり拍手できない点がWEB開催の寂しいところですね。口演発表後の質疑応答は、複数の関連したセッションをまとめる形で、やはりZoomのウェビナーで行われました。私はGlymphatic systemに関しての教育講演(Weekday Course/Tuesday Parallel 2)とパワーピッチ(#537)の二つでこのQ&Aセッションに登壇しましたが、時差の関係で夜中の1時迄の議論となり、かなりつらかったです。時差については国際学会をWEB上で行う際の問題の一つとなりそうです。
パワーピッチセッションはユニークな演題を集めたセッションであり、本来のISMRMではプレゼン時間を3分と短くする一方で、face to faceのディスカッションの時間をしっかり確保したセッションです。今年はWEB開催となった結果、プレゼン時間は一般の口演と同じ9分となり、より充実したプレゼンを視聴することが出来た一方、WEB上での質疑は時間が限られてしまいました。「Novel Neuroimaging Techniques」のセッションでは、半数以上の演題がGlymphatic systemやNeurofluidに関する演題であり、この領域が引き続き興味を持たれていることがわかります。このセッションでは拡散強調像で脳脊髄液の動態を評価しようとする演題が2つありました(#534, #537)。この手法はLe Bihan先生の拡散強調像の最初の論文で提唱されていたものの、そのあと長らく行われていませんでしたが、2019年のJJRでの報告(Jpn J Radiol. 2019;37:135-144)以降、興味を持たれているようです。
WEB学会になっても、ISMRMのセッション名は凝っているというかクセが強いというか、こればかりは昔からの伝統ですね。以前ISMRMのAMPCをしていたときにも、一緒に仕事をしていた委員達がなにやらひねったセッション名を相談しているのを「そんなところで努力しなくてもいいのに・・」と思って眺めていたのを覚えています。今回のISMRM on the WEBでの変わったセッション名の一つとして、「Treasure Chest of Neurogems」がありました。「ニューロの宝石箱やぁー」といったところでしょうか。このセッションでは北海道大学から17O標識水の演題(#2042)がありました。17O標識水は脳脊髄液や間質液のトレーサーとしては理想的であり、AQP4ノックアウトマウスでは血管周囲腔に水がたまる傾向が示されていました。

今回、シドニーに持って行くつもりだった1998年シドニー開催時のISMRMバッグ

『ISMRM2020 腹部領域のトピックス』
山口大学大学院 医学系研究科 放射線医学講座 伊東克能先生

新型コロナウィルスによるパンデミックのためweb開催となった今年のISMRMから、腹部領域の話題についてご紹介したいと思います。肝胆膵領域のscientific sessionはpower pitch sessionも含めて3つ、演題数は34です。撮像技術に関連するsessionでは、deep learning, MR elastography, T1, T2* マッピングに関する発表がありましたが、このうち、The thirsty liver: dynamic T1 mapping after fluid intake in healthy volunteers (0311)では、飲水後の肝T1値の変化を経時的に評価し、40分をピークにT1値が上昇カーブを描くことを示しています。1リットルの飲水が必要で、T1値の変化も40ms程度ですが、この結果からは肝臓における代謝や血流のわずかな変化でもT1値を含めた定量値に影響を与えるということを考慮する必要があると言えます。
肝臓領域では、びまん性疾患(脂肪肝と線維化)と代謝に関するsessionが組まれており、Mapping glycogen concentration in vivo based on the nuclear Overhauser enhancement (NOE) with water (glycoNOE) (0316)では、11.7T MR装置を用いた動物実験で、glycoNOE信号が肝臓内のグリコーゲン量と有意に相関しており、定量化の指標となりうることから、肝代謝性疾患の評価に有用となる可能性を示しています。日本においても今後、肝疾患の主体がウィルス性肝炎から脂肪性疾患へと変化していく中で、代謝性疾患における画像診断の役割も増していくことが考えられ、MRSを含めた機能代謝診断の高精度化が必要と考えられます。
Digital poster sessionは、Abdominopelvic MRI (cancer, benign)の2 sessionがあり、演題数はそれぞれ91, 172です。このうち門脈系の診断に関連したものが比較的多く7題あり、これは4D flow MRIやその他の新技術が門脈領域にも適用されるようになったことが要因の1つと思われます。Evaluation of portal system flow in response to a meal challenge with 4D-flow MRI (2632), Flow quantification with navigator-gated 4D flow MRI in portal hypertension (2621)では、食後における門脈・上腸間膜静脈血流増加と脾静脈血流低下のカラーマッピングと肝硬変患者における門脈血流速度の低下が示されています。また門脈圧亢進症の評価として、脾臓のT1ρ値上昇が指標となること (0320)、肝臓のT1値と正の相関があること (0323)、MR elastographyによる脾臓の硬度と相関すること (0329)、Gd-BOPTA造影MRIにおける肝実質の造影効果と負の相関があること (2483)、などが示されています。
それから、cancer-hepatocellular carcinoma (15演題)が1つのsessionとして組まれていたことは驚きでしたが、これはアジアからの発表とくに中国からのものが増加していることによるもので、多くは定量値やradiomicsとの組み合わせにより診断能を向上させる内容ですが、今後はさらにこの傾向が強くなることが予想されます。
Cancer – Liquid biopsyにみられるように、癌も遺伝子情報を加味した細胞レベルでの早期診断が臨床応用される時代に、癌の早期診断に画像診断が果たす役割は何か、Benign – 臓器の機能・状態を正確に評価し、予防医学、アンチエイジングなどに画像診断をどのように役立てていくのか、今後はこのような研究も進んでいくことを期待しています。

画像は、ISMRM 2019 モントリオールより

『心血管トピック~初のweb開催~』
東北大学大学院 医学系研究科 先進MRI共同研究講座 大田英揮先生

多くの学会と同様に,ISMRMも今回の実行委員会は,多大な苦労をされたと存じます.シドニー開催からパリへの開催変更,そして最終的にはWeb開催へ.当初の見込みとは大きくかけ離れてしまいましたが,とにかくin personでの学会開催をなんとか実現するための,パリへの変更だったと関係者からは伺っています.Web開催での利点・欠点は皆様もいろいろと感じていらっしゃることがあると存じます.私個人といたしましては,web開催の学会に積極的に参加していくのは,現時点ではなかなか難しいというのが一番強く感じた感想でした.その理由として,第1に学会期間中の日常業務と学会参加の両立をするための時間確保が困難であることがあります.出張してしまえば臨床業務から離れざるを得ないために学会に集中できますが,自宅や大学でweb視聴を続ける以上,日常業務が舞い込んできますし,夜間に視聴時間を確保した途端,緊急アンギオで呼ばれてしまったこともありました.第2に,時差の問題があります.時差のために夜間に行われるlive sessionには,翌日の業務に支障が出てしまうためになかなか参加できず,発表をじっくり見る機会も確保できませんでした.現地に行けば強制的に現地時間にリセットして活動するので問題ないですが,web参加のために時差をリセットするのは,日常業務との兼ね合いもあり困難でした.これが,シドニー会場のままであったら,日本人にはとてもいい時間設定だったのではないかと思いもしましたが,結局それでも日中は業務のため参加ができないというジレンマに陥っていたかもしれません.第3に,pre-recording とlive discussionの難しさがあります.今回,初めて土日のeducational sessionで講演(Session Title: Cardiovascular MRI: The Vasculature, Talk Title Supra-Aortic Vessels: Clinical Application & Use) する機会を頂きました(シドニーで話せたら,どんなに良かったことか!).通常の発表では,参加者の方々の反応を見ながら適宜ジェスチャーを加えて話すので,多少つまずいたり,英語の言い方を間違えたりしても,場の雰囲気を勝手に味方にしていくことができます.しかし,一人録画となると,休日の誰もいない(雑音の出ない)医局から,まるで宇宙に向かって話しているようで,とても話しにくくなってしまいます(これは日本語の発表でも同様です).さらに録音を確認すると,簡単な英文法の間違いや言葉のつまずきをたくさんしていることがわかり,何度も録音し直すものの,結局途切れ途切れの動画になってしまい,多大な録画時間,準備時間を要してしまいました.また,深夜帯に行われたlive discussionでは,やはりそもそもの音質の問題や顔が見えないことでの聞きにくさ,自分の発言がネットの向こう側に十分な音質で届いているだろうか,自分の発音は理解してもらえているだろうかといった不安感があり,非常に緊張しました.チャットを使える良さはあるのですが,見慣れない単語を見つけて理解するのに時間を要したり,限られた時間でチャットとトークを並行して理解していく必要があるので,より頭が混乱したりと苦労の面の方が大きいと思いました.また,複数の演者の質問がチャットに来るので,対応するのが大変でした.視聴者側からは,チャットの良さを十分に堪能できたのだろうとは思っていますが,座長,パネリストの苦労は,in personの時より大きいだろうと感じました (non-native speakerのハンディキャップも大きいです).しかしながら,今後のあらゆる学会は,web開催あるいは少なくともhybrid形式の開催が主体になっていく可能性が十分にあります.Web会議のスキルを身につけていくのは,ウィズコロナの時代で必須事項であるとの思いも強くしました.
上記の理由のため,網羅的な紹介はできませんが,心血管領域のトピックについていくつか演題を紹介いたします.
0784: Cardiac MR fingerprintingの臨床研究.Motion artifactを軽減するために撮像ウィンドウを150 msまで短縮し,cMRFで,T1, T2 mapを一回の息止め(15心拍)で取得した.通常のmapping撮像法と比較してnative T1, T2は良好に相関していた.
0785: Golden-angle RAdial Sparse Parallel (GRASP)を用いた自由呼吸下,高時間分解能の遅延造影MRI.IRパルスとramp-upパルスの直後から,bSSFP readoutを,golden-angle(32.038º)の角度を変えながら224 rays分取得し,16 time framesに分割して再構成する.最適なコントラストを表現できている time frameの画像を再構成後に選択することが出来るため,TI scoutが不要になる.
0787: 深層学習を用いたデノイズを活用することで,臨床画像として心臓のテンソルMRIを取得する.従来の加算回数8回の30分の撮像時間で得られたテンソル画像と同程度のものが,4回加算(半分の撮像時間)でも得られるようになった.
心臓MRIの強みの一つとして,心筋組織性状の評価が可能であることがあげられます,一方で,心臓MRIに要するスキャン時間は,他の検査を圧迫する要因にもなるため,短時間撮像や,自由呼吸下での撮像は,今後望まれる手法と考えられます.テンソルMRIは,臨床的にも実現可能な撮像時間内に取得出来るようになれば,今後の臨床的意義の探索に向けて活用されていることが期待されます.
0776: マルチベンダーの大血管4D flow MRIから,AIベースの全自動セグメンテーションを行った.マニュアルでのセグメンテーションの結果と比較して,良好な一致が得られた.
0777: アデノシン負荷潅流画像(6スライス,10mm厚)に対して,深層学習とmotion correctionを用いた再構成を行い,自動的に定量測定する.
いずれも,機械学習の応用に関するセッションでの発表でした.心臓MRIの画像解析には,現状ではマニュアル操作が非常に大きく,臨床に必要な時間を費やしてしまう傾向があります.これらの自動化ツールは,今後の放射線科業務改善にもつながりますし,恣意的にもならないと思われますので,データの頑健性にもつながるかもしれません.
写真は,当院の森技師が深夜の0:50開始のlive discussionに参加しているところです.彼も日常業務との掛け持ちで大変な中,頑張って発表してくれました.私も直前に緊急アンギオが終了して,一緒に参加することが出来ました.最後に,平時になかなか戻れない中,web学会を皆様が少しでも楽しみ,ご活用いただけるようになることを祈っております.

『新型コロナウイルス下でのISMRM2020開催』
京都大学大学院 医学研究科 脳機能総合研究センター 岡田知久先生

今年のISMRM大会は、新型コロナウイルス感染に大きく翻弄されました。開催は当初4月予定のシドニーから8月のパリに移動、その後さらに5月と開催にかなり近づいた時点で再度Web開催へと変更されました。最初からWeb開催との声もあったようですが、直前まで現地開催にこだわった背景には、ISMRMの基本的な考え方があると思います。それは、MRの技術開発を診療に活かすために、臨床医と基礎研究者をはじめとする多様なバックグラウンドを持つ研究者同士が対面で直接議論し繋がることをとても重視している点です。これはWeb開催になっても同じで、Entry pageの最初に「Session」などと並んで「Networking」と明示されています。昨年のラグビー・ワールドカップでのOne TeamならぬOne Community for Clinicians and Scientistsという標語はずっと以前より使われており、ISMRMが目指す方向が明示されています。初日の夕方に開催されるNewbie (初回参加者) receptionでは、Web上に例年どおりテーマ別の集合場所が設定され、各分野のエキスパートと自由に話ができる環境が提供されました。今後、ソーシャル・ソフトウエアがより便利になれば、最近増加しているWebinarなども含めてnetworkingの機会がさらに大きく増えると期待しています。

早々とWeb開催に直接移行する国際会議が多い中で、3か月前までじっくりと状況を見極めることができたのは、運営レベルが高く交渉力の強いCentral Officeがあるおかげです。Executive DirectorであるRoberta Kravitz女史が2017年にProfessional Convention Management Association (PCMA) Global Meetings Executive of the Year Awardを受賞したことからもわかるように、ISMRMは財務体質も含めてとても健全に運営されている組織です。今回のWeb開催では参加費は250ドルと大きく下がりましたが、例年は学会正会員でも1,000ドル以上とかなり高額です。その背景には、研究費で参加できる正会員に若い研究者の参加費を一部負担してもらう、という発想があるようです。実際、研修医や大学院生はTrainee stipend awardに応募できます。欧米諸国だけでなく、中国や韓国からも多くの申請があります。これはAwardなので、初期段階での国際的なAward受賞歴を記載する上でも好都合であり、お財布にも経歴にも優しいAwardです。日本人はとかく遠慮しがちですが、何度でも積極的に応募しましょう。「抄録を出すときには、忘れずに。」 指導医の先生方からも応募するように念を押してください。

また、今年は京都大学 画像診断学・核医学講座の富樫かおり前教授がGold Medalを受賞、名古屋大学大学院医学系研究科 の長縄慎二教授がSenior Fellowに選出されたのは、とても喜ばしいことでした。今回、性別は無関係ですが、一般にISMRMは世界のアカデミアを中心としたかなりリベラルな組織です。今年水曜日夜のSecret Sessionでは、MRI: Making Research Inclusiveと題して、Oxford大学のKarla Miller先生が新型コロナウイルスを吹き飛ばすような、強烈なジョーク?を飛ばしていました。”If you are a Gold Medalist, you’re 1.4x more likely to be named Robert or Peter than to be female.” とか、”Distinguished Service Medalists are five times more likely to work in a town named Cambridge than in a non-English speaking country.”とか。性別や地域に関係なく、ISMRMに積極的に参加すれば、門は開かれます。

ISMRMは毎年、魅力的な場所で開催されます。来年は、風光明媚で風が心地よい5月に、カナダ・バンクーバーで開催の予定です。来年こそは、virtualではなく現地での開催を期待しましょう!

ISMRM2017オープニングセレモニー

ISMRM2021バンクーバー会場(予定)周囲の風景

『ISMRM Virtual Meeting』
北海道大学大学院 医学研究院 画像診断学教室 工藤與亮先生

ISMRMは2006年のシアトルが最初の参加で、ちょうど米国留学中であった。その後、2007年のベルリン、2009年のホノルル、2010年のストックホルム、2011年のモントリオール、2012年のメルボルン、2013年のソルトレークシティー(尿管結石により直前にキャンセル)、2014年のミラノ、2015年のトロント、2016年のシンガポール、2017年のホノルル、2019年のモントリオールと参加してきたが、最近は学会期間中に〆切のある仕事が舞い込んでくることが多く、なかなかゆっくりと参加できなかった。今年はシドニーでの開催ということで時差もなく、じっくりと参加できると考えていたが、COVID-19の感染拡大によりVirtual Conferenceとなり、リアルタイムのディスカッションが日本時間だと夜になったため、もっぱらオンデマンドでの視聴となった。また、Virtual Conferenceだと仕事やプライベートの合間の参加になるため、まとまった時間がとりにくく、時差と闘いながらのオンサイトでの参加の方が学会に集中できる気がした。とは言っても、ISMRMは非常にトピックが広く、オンサイトであってもWeb開催であっても、いずれにしても全部を見ることは不可能に近い。
今年のISMRMでの日本人としての大きなトピックは、名古屋大学の長縄慎二先生がSenior Fellows、京都大学の富樫かおり先生がGold Medalを獲得したことと思われる。日本人としてとても誇らしく感じ、特に長縄先生は専門領域が同じニューロであり、とても勇気づけられた。同じく名古屋大学の田岡先生が参加されていた「CSF Flow & Glymphatic Imaging」のQ&Aセッションで田岡先生が「Peri-Perivascular spaceが見たい」と仰っていたのが印象的であった。これは我が意を得たりで、脳内の水動態を考えるにあたり、マクロなCSFのbulk flowや血流、ミクロな脳実質内の拡散をつなぐ、Perivascular space周囲の水の動きを解明することにより、様々な疾患の病態の理解につながる可能性がある。最近のNeuroinflammationのトピックではBlood Brain Barrier(BBB)のleakageの発表も増えてきており、認知症や頭部外傷での血管透過性の亢進を考えるにあたり、BBBをミクロレベルで考える必要があり、それをイメージングとしてどう見ていくかも重要な課題であると感じた。MRIはボクセル内の微小環境を画像化できるたぐいまれなモダリティであり、MicroscopicとMacroscopicの間の概念であるMesoscopicな分子の挙動を探索していくのが期待される。
人工知能(AI)はどうであったか。ISMRMという学会の特性もあるが、Deep Learningを中心としたAI技術は画像再構成やノイズ除去、セグメンテーションなどでは非常に有力なツールとして確立されているのに対して、MSとNMOの鑑別、脳腫瘍の組織系の鑑別、病態や予後の予測などの臨床応用ではまだまだ最適化が必要な印象を受けた。
来年のISMRMがどういう形式になるかは今後の状況次第かもしれないが、多くの学会がWeb開催となり、発表する機会、発表を見る機会が担保されているのに対し、In personでのディスカッション、情報交換、雑談、旧交を温めるなど、やはりオンサイトでの開催には多くのメリットがある。特にISMRMは世界中から基礎系・臨床系の様々な研究者が集まる学会であり、是非、オンサイトでの開催を期待したい。

 

 

2020/08/03(月)

『ECR(European Congress of Radiology) 2020 視聴報告』
大阪大学大学院医学系研究科次世代画像診断学共同研究講座 鍔本美津子先生

ECR(European Congress of Radiology)は毎年ウイーンで開催されるヨーロッパで最大級の放射線科学会です。2020年はCOVID-19のパンデミックに伴い、onlineのみでの開催となり、期日も従来の3月より7月に変更となりました。OnlineではLive-accessはもちろんのこと、年末までの長期間on-demand access ができます。今回私は、live-accessとon-demand accessでCOVID-19に着目して視聴しました。Live-accessでは最終日以外の毎日夕刻のheadline session としてCOVID-19関連の話題が特集されており、on-demand accessではCOVID-19に関してだけでも11個のセッションが設けられ注目度の高いトピックスでした。内容に関しては画像所見や病状のみならず、各国の状況や、検診、がん患者らに対する影響、検査室のマネージメント、AIが寄与する可能性など多岐にわたっていました。

Imaging in COVID-19 complicationsのセッションでは、①ARDS、②肺塞栓、③脳の合併症についてレクチャーがありました。①ARDSに関しては、COVID-19肺炎の予後予測と線維化の危険因子について解説がありました。COVID-19肺炎がARDSに進展するかどうかを初回のCT画像で予測できるかというテーマに対し、異常陰影の全肺野に対する割合で判断し、異常陰影の範囲が25%以下であればリスクは低く、26%以上であればリスクが高いという簡便な指標が報告されていました。ARDSからの生存者における肺の線維化の危険因子は、まだわかっていませんが、線維化があれば死亡率は高いので線維化の有無を判断することは重要と結論されていました。②肺塞栓は、造影CTを施行したCOVID-19患者の4分の1から3分の1に認められる合併症です。凝固系が亢進しているためとされています。segmental ~subsegmental の肺動脈に血栓を認める事が多く、虚血性心疾患、動脈系の塞栓も見受けられるようです。また肺野の血管影が拡張していることもあり、末梢の肺動脈が拡張し、あたかもtree-in-bud のように見える画像の提示もありました。最後に③脳の合併症についてです。SARS-CoV2 virus はACE2受容体を関して細胞内に入りますが、この受容体は肺胞上皮以外に、小腸、血管内皮細胞、免疫細胞、心筋や、中枢神経領域にも認められるそうです。脳の合併症を引き起こすには2つの経路が想定されていて、ひとつは気道や肺から血行性に侵入する経路。もう一つは嗅球を介して直接的に脳へ侵入する経路です。軽症~中等症の神経学的合併症として、嗅覚障害の症例が、嗅球の異常信号を呈するMRI画像とともに呈示されていました。また、重症患者の神経学的合併症として頭蓋内のサイトカインストームと関連づけて、Acute hemorrhagic necrotizing encephalopathy、Cytotoxic lesion of Corpus Callosum(CLOCC)、髄膜炎、梗塞など、いくつかの画像を呈示しながら説明されていました。

コロナ禍でweb開催の学会研究会が続いています。On-demand配信があれば、くまなく視聴したり、何度も聞き直したりできるメリットもありますが、web開催だけでは情報交換の欠如により、感化されたり刺激を受けたりする機会が減少するデメリットもあるでしょう。しかし、一昔前であれば、web開催するということも不可能であった事を思えばありがたい限りです。知恵と知識を蓄え文明を育ませながら、この時代を乗り越えたいと考えます。

大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座放射線医学教室

 

『ECR 2020 Onlineに参加して』
愛知医科大学 放射線科 鈴木耕次郎先生

2020年7月15日~7月19日にweb開催されたECR2020 Onlineに関して、IVR領域を中心に報告したいと思います。ECR2020は本来3月11日から5日間ウィーンで開催される予定でしたが、2月下旬頃にはEUでもCOVID19の感染が増え始め、3月初旬にESRからECRが 6月15日~19日に延期されると連絡がありました。その後もCOVID19の蔓延が悪化し、4月初旬にonlineのみでの開催に変更になる旨通知がありました。COVID19の蔓延状況を勘案すると致し方ないと思いますが、webのみでも開催されることは良かったと思います。
さて、本題のECR2020ですが、webサイトは総じて使い勝手がよく、プログラム確認や検索なども容易に行うことが出来ました。時差の関係や日常業務の兼ね合いもあり、on timeでのlive配信を視聴することは少し難しかったですが、録画されたセッションやposter exhibitionを中心に視聴しました。EPOSは全部で3814題(scientific exhibit:1797題、educational exhibit:1860題、eurosafe imaging:157題)の発表がありました。Non-vascular IVRでは、チェニジアのAbid先生らがCTガイド下膵生検110例の報告をしていました。膵のCT下生検は目新しいIVRではありませんが、本邦では内視鏡的なEUS-FNAが第一選択となっており、110例の報告は症例数が非常に多いと思います。経腹的直接穿刺、経肝的穿刺、経胃的穿刺、経後腹膜穿刺など様々な方向から生検が行われ、重度合併症はなく安全な方法であると結論されていました。この結果を見ると、膵のCT下生検を不安なく行うことが出来ます。Vascular IVRでは、educationでシンガポールのShi先生らが副腎静脈サンプリングで右副腎静脈のover-selectiveによる偽陰性に関して報告していました。これはカテーテル先端が奥に入りすぎて正常副腎部分からの採血になってしまうことで、サンプリング時のカテーテル位置、血管造影所見を詳細に評価する重要性を再認識しました。
IVR領域の受賞では、ポーランドのRago先生らが、”Intraarterial chemioterapy in retinoblastoma treatment – 4 years experience”でCum Laudeを、国立がんセンター中央病院の菅原先生らが”Direct embolization technique via preexisting nonvascular route for major arterial injury: when and how to do it”でCertificate of Meritを受賞されていました。菅原先生らの発表は、穿刺やドレナージなどのトラクト経由で直接動脈損傷部をコイルやゼラチンスポンジで塞栓する方法で、非常に上手く止血が得られた症例を数多く提示していました。これは日常診療においてのトラブルシューティングとして非常に勉強になる内容でした。
最後に、COVID19のパンデミックが早く終焉を迎え、例年通りウィーンでのECRに早く参加できるようになることを祈願してECR2020の報告を終わりたいと思います。


写真1: 愛知医科大学病院


写真2: IVRスタッフ

『ECR 2020 Onlineに参加して』
京都大学医学部附属病院 放射線部 片岡正子先生

今年は、COVID-19感染が日本のみならずヨーロッパ諸国にも広がり、ECRも直前で延期、そしてWeb開催に変更を強いられた。初めてウィーンの学会参加を予定していた人にとっては残念ではあったと思う。しかし、当時の混乱状況を考えると、多くの発表予定であった力作の教育講演、演題が学会お蔵入りにならなかったというだけでもまずは良しとしなければいけないのかもしれない。今後ますます広がるであろう、Web開催の学会の在り方を示す試金石として、注目していた。
発表準備について、大学院生が口演発表となっていたがスライドに音声を入れて動画を作成ということであった。本番に英語を忘れたらどうしよう?というプレッシャーからは開放されるが、リアルタイムの議論の機会がないのはせっかく口演なのに物足りない。質疑応答の機会をどのように提供し活性化させるのかは、今後の課題と思われた。
会期であった7月の15-19日までは、1時間程度を単位として、Liveの口演やシンポジウムが行われた。
シンポジスト3~4名の口演と、座長を交えてのQAセッション。画像の下に、チャットのような質問コーナーがあり、視聴者からの質問も取り上げられる形式となっていた。チャットで書き込めばいいので、非英語圏の人間には実はハードルが低いかもしれないとも思った。
Table Talk というコーナーでは、ECRの会長が、演者を招いて、今注目の話題についてどんどん質問をする、言ってみればWebインタビューコーナーである。いくつかあるトピックのなかでも、ESR iGuide (clinical decision support for referrers)を取り上げたい。臨床医が画像をオーダーする際のサポート機能を担うガイドライン及びそれを使うためのアプリのようである。(詳細:http://www.esriguide.org/)基準となるガイドラインは、アメリカのACR appropriateness criteriaそのままの部分もあれば、European Society 独自のガイドラインを用いているものもある。学会はこれの使用を進めていきたいように思われたが、今後の発展は注目に値する。ヨーロッパ全体が同じ基準でいいのかどうかは疑問ではあるが、少なくとも検査の適正化には役立つようである。E-learningに関する話題も取り上げられていた。
シンポジウムではBreast imaging に関するトピックもMRIやスクリーニングを話題にしたものがみられたが、数はあまり多くなかった。肺がんスクリーニングについてのセッションがあったが、いずれのスクリーニングも紹介する臨床医との協力や、AIの導入による読影の効率化が話題に挙がっていた。他に、COVID-19 関連、AI関連のトピックも目立っていた。
ただ、初めて参加したECR2020 Onlineの5日間で、内容がチェックできていないものが沢山ありそうだ。まず、最初1-2日ほどは、oralの検索の仕方がよくわからず、見たいものを探すのに右往左往した。Liveの口演がどの時間でどのように行われるのかわからずいくつか聞きたかったTalkを逃したようである(毎日メールでお知らせが来たのではあるが)。そして、時差のため夕方~夜半過ぎ(日本時間)に様々なLiveイベントが行われ、毎日寝不足になった。多くのものを見逃したに違いないと落胆していたら、これらのコンテンツはトピック毎に分けて、”Highlight Week” という形で会期後から11月にかけて再放送されるとのことで、ちょっとほっとした。


画像:ECR Online 参加中

2019/12/20(金)

第105回北米放射線学会(RSNA2019)レポート:AIとモバイルCT
富山大学医学部 放射線診断・治療学講座 野口京先生

北米放射線学会(RSNA)は、世界最大の年次医学会の1つであり、11月の最終日曜日から1週間シカゴで開催されている。今年のRSNAのテーマは「See possibilities together」(図1)。毎年5万数千人が参加しており、午前7時頃は閑散としていても、午前10時頃となると通路が参加者で一杯になる(図2,3)。

今回の学会に参加してみると、人工知能(AI)との関係性がさらに密になりつつあると感じた。年々AIに関するトピックスが増加しており、Artificial Intelligence (AI) (人工知能)、Machine Learning (ML)(機械学習)そしてDeep Learning (DL)(深層学習)などのセッションが19と大幅に増加していた(2018年度から8セッション増加)。今年から“AI Showcase”というAI関連企業専用の展示ブースが登場し、そこには130社をこえる出展社が自社のソフトウェアや製品などのデモンストレーションをおこなっていた(図4)。ほとんどはいわゆるスタートアップといわれる小さな企業のようであるが、放射線医学という領域がすでにオープンな市場としてさまざまなスケールの企業が参入を進めており、RSNA自体もそれを受け入れていると感じた。AIやDLは放射線科医の極めて強力なツールとなりうるものの、その仕組を体系的に理解することは容易ではないため、RSNAは“RSNA AI Deep Learning Lab”と称したユニークなセッションを開催していた。このセッションではオープンソースのAI/DLツールを使い、参加者が自身のPCで実際のDLの動作を体験するというものである。カバーする内容もデータをその特長によって「分類」するようなシンプルなタスクを通してAIの基礎を学ぶようなものから、もっと高度な「セグメンテーション」のさせかた、例えばMRI画像をCT画像に変換するような処理を可能とするGANsと呼ばれる高度なDLアルゴリズムの解説など広範囲におよんでおり、放射線科医がAIやDLを単なるブラックボックスとしてその理解を諦めないための試みであると思われる。一方、学会発表に目をやると、ニューロの分野では腫瘍のセグメンテーションやテクスチャ解析、動脈瘤あるいは骨折部位の自動検出などの発表が多かった。

企業展示に目を移すとやはり、AIによる診断支援や撮影支援などのトピックスが多かった。MRIに関してはフィンガープリンティング技術がアプリケーションソフトとして使用できるようになるということであり、今後の盛り上がりが期待される。

私が個人的にこの学会で最も興味深かった装置がシーメンスヘルスケアのブースに展示されていた。それは頭部専用のモバイルCTである(図5)。高さがおよそ1.5メートル、幅は2メートル弱、厚みは80センチにも満たない。患者テーブルはなくガントリーだけが台車に乗ったかのようなコンパクトなCTスキャナである。ポータブルX線装置のようなパワーアシストがついており、重さは900キロほどあるとのことだが、実機を実際に動かしてみるとその取り回しは軽々としていた。このCTはICUなど患者のベッドサイドに直接持ち込んで撮影するというコンセプトになっており、そのため電源は通常のAC100Vで動作するそうである。ガントリー自体が望遠鏡の筒のように患者の頭部を包み込んで撮影をするため、特別なX線遮蔽も必要ないとのことである。仕様的には32スライスのマルチスライスCTで、ガントリー開口は35センチ、頭部撮影にチューニングされたX線管球と低ノイズ型検出器ユニットに加えて、逐次近似再構成アルゴリズムや金属アーチファクト除去アルゴリズムなど頭部撮影に必要なスペックが整っているとのことである。実際に撮影された臨床画像を見せてもらったが、非造影画像もCTA画像も事前の予想に反して頭部診断画像としては極めて良好な画像であり、日頃読影している汎用CTの頭部画像に引けを取らない画質であった。残念ながら筆者が研究しているDual-energyには対応していないということであるが、このサイズのCTスキャナであれば救急車に搭載するなどの応用も効くことから、スピードが命である急性期脳梗塞の診断おいて、地域医療等のみならずストロークユニットなどにおいても重要な役割を担う可能性がある。

 
図1:RSNA2019              図2:火曜日午前7時

 
図3:火曜日午前10時           図4:AI Showcase


図5:モバイルCT

 

『RSNA2019』
産業医科大学放射線学教室 青木隆敏先生

2019年12月1日(日)から12月6日(金)までの6日間、アメリカシカゴのマコーミックプレイスで開催された第105回北米放射線学会(RSNA2019)に参加しました。今年のテーマは“See Possibilities Together”で、オープニングセッションでは紹介医や患者と協調した医療を行うことの重要性が示されました。AI等のIT技術の進歩が医療の変革をもたらしている中で、放射線科医はいかに患者と向き合うかを考えさせる内容でした。
今年のRSNAもメイントピックスは“Artificial Intelligence(AI)”で、私が参加したMusculoskeletal (Machine Learning and Artificial Intelligence) のscientific sessionでは、座長から、今年は骨軟部領域だけでも100題を超えるAI関連演題が応募され、このセッションの演題は9題であることから採択は極めて狭き門であったことが報告されました。昨年は単純X線写真の骨折評価やMRIでの靭帯損傷など、AIによる全自動診断を取り入れることで高い診断能が得られることを示した報告がありましたが、今年は病変検出の診断支援に加えて、膝の単純X線写真から将来の変形性膝関節の軟骨障害の予測を行うなど、AIを用いて画像から予後予測を行う主旨の発表がありました。その他、膝MRIを用いた軟骨評価にAIを取り入れ、領域ごとのT2*値やT1ρ値を自動計測した発表や、MRI画像から軟骨のコラーゲンやプロテオグリカンの量を予測した発表など、これまでよりもさらに高度なAIのパフォーマンスが報告されていました。また、一昨年前からtechnical exhibitsに新設された”Machine Learning Showcase”は”AI showcase”と名称を変え、ノースビルディング会場奥の広大なスペースには、昨年の約2倍の企業がブースを出展していました。日本からも複数の新たな企業がブースを設けていましたが、中国企業や韓国のベンチャー企業の躍進ぶりは目を見張るものがあります。この展示場の中にあるAI theater では、各企業が短時間で展示内容のプレゼンテーションを行っており、骨軟部領域のMRIでは、膝関節の半月板/軟骨損傷や、脊椎の脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアについて精度の高い自動診断ソフトが開発されていることなどが発表されていました。
ビックデータ、AIと画像診断分野のパラダイムシフトが進む中で、その動向に注目しながら、今取り組むべきは何かを考えねばならないことを実感した今年のRSNAでした。


ノースビルディング会場奥のAI showcase


マコーミックプレイスのグランドコンコースから見えるシカゴの街

2019/11/07(木)

『JFR 2019に参加して』
大阪大学 放射線科 高橋洋人先生

JFR – Journées Françaises de Radiologieはパリ市内、凱旋門から徒歩約15分の距離にある会場のPalais des Congrèsにて毎年10月上旬に開催される放射線医学全般に関する学会であり、日本のJRC(日本放射線学会総会)に該当するフランス国内最大規模の学会である。今年は2019年10月11日から14日まで開催され、これに参加した。Palais des Congrèsはレストランやショッピング施設も入る巨大複合施設である。アクセスはよく会場近くまで地下鉄が乗り入れており、また凱旋門やシャンゼリゼ通りへも徒歩圏内であるため観光にも便利な場所である。学会はそのうちの3フロアを使用し、科学報告(講演、口語発表)、また電子ポスターによる教育展示や科学報告が行われ、また各フロアを用いて企業展示、機器展示が行われていた。また会場はlevel 1以上の階(日本の2F以上)で行われており、そこへ上がるエスカレーターでバッジのバーコードチェックが入場者全員へ行われており、セキュリティへの配慮が感じられた。
主にフランス語にて報告、講演はなされており、その内容の理解にはフランス語への高い理解力が要求される。スライドのフィギュアなどがある程度助けにはなるが、正直自分を含め非フランス語圏からの参加はやや敷居が高く感じられた。ただし、JRC同様に国際化にも力がいれられており一部招待講演などは英語でも行われ、JRSやRSNAをはじめ他国の放射線学会との連携もなされている。ポスター展示においては日本からの演題発表もいくつか見られ、また日本人演者による講演も行われている。科学報告のセッションは毎日朝8:00代から夕方17:00代、あるいは18:00代までかなり密に組まれており、頭部、骨軟部、胸腹部の領域ごと、またIRやエコーなどのデバイスに焦点をあてたセッションなど放射線医学領域を網羅するかなり多彩な内容であった。内容がフランス語主体であり、すべてを拝聴はできていないが、学会programを参照すると臨床診断に関する実践的な内容や、モダリティに関する基礎的な内容など多彩であり、またセッションごとの組み方がより特定の目的にフォーカスした視点からのものが多く思われた。またやはりAI(人工知能)に関するセッションも多く組まれ、内容はビッグデータの取り扱いやマシンラーニングなど基礎的な内容の講演、画像診断への応用など最新のトピックなものも多くその関心の高さがうかがわれた。1セッションが1時間前後、1演題あたり15分ほどであった。全体的にレベルは高く、私が参加した各講演会場は満席に近いことが多く、参加者の講演に対する関心の高さがうかがえた。私は専門が脳神経領域であるため主にその領域の講演、発表をいくつか拝聴している。パーキンソン病のイメージングに関して神経メラニン画像の有用性や、パーキンソニズム症候群の画像による評価のポイント、またそれに関連する解剖学的な解説、病態メカニズムなど、このセッションは英語での講演もあり、スライド内容などと併せ非常に理解しやすい内容となっていた。また全体的に脳神経領域の講演会場は満席であったり、会場入り口周辺での立ち見も見られ、フランスでの脳神経領域イメージングへの関心の高さを感じた。
同期間中は併せてパリ市内を散策したが、治安は特に問題なく凱旋門やシャンゼリゼ通りを歩くことができた。またセーヌ川沿いやモンマルトル周辺も観光客が多く、普段のパリを取り戻していると感じられた。JFR会期中の10月上旬のパリは涼しく、好天に恵まれることが多いと思う。またサマータイム中でもあり夕刻6:00過ぎでも明るい。街角ごとにあるカフェでは大勢の地元の人、また観光客が遅くまで過ごしており街全体はリラックスした雰囲気を感じることができた。秋のパリもおすすめである。

『JFR2019と日仏交換留学に参加して ~フランスへの誘い~』
順天堂大学放射線診断学講座 佐藤香菜子先生

私は昨年ゲルべジャパンの支援による日仏交換留学にてフランスに留学し、その間の研究内容を今年10月11日から14日にパリで開かれたJournées Francophones de Radiologie (JFR)にて発表した。JFRは毎年10月に凱旋門を少しこえたところにあるPalais des Congrès de Parisで開催され、日本での総会や秋季大会のような位置づけかと思う。会場は1つの建物内にありややこじんまりしているが、ショッピングモールやハイアットホテルと隣接しており便利である。学会初日には授賞式を兼ねたピアノコンサートがあり、お知らせのチラシを会場で竹馬に乗った女性が配っていて、フランスらしく遊び心がある光景だった。講演はほとんどフランス人によるフランス語での発表だが、時にカナダ、アルジェリア、韓国などからの発表や英語の発表もあった。フランスでは研究よりも一般臨床が重視されている傾向があり、大部分が教育講演だった。エコーやIVR、骨軟部については日本より盛んであるため講演が多く、特にエコーはワークショップが多かった。最先端の撮像法に関する発表は日本より少なかったが、最適なMRIの撮像法やAIについてはいくつか講演がみられた。ポスターはeducational部門とscientific部門があり、いずれも電子ポスターでプレゼンなどはない。ポスターも基本的にはフランス語だが英語でも可能であり、私は皮質形成異常の新たな1型について自分の研究結果を含めたeducational posterを英語で投稿した。留学先の先生方の助けもありポスター賞をとることができ、よいおみやげになった。
13日の夜にはエッフェル塔が窓から見えるMusée de l’Hommeでカクテルパーティーがあり、パリの放射線科医達の社交場となっていた。その他、学会中にたまたまモンマルトルで秋のワイン収穫祭がやっており、新鮮なチーズやワインを販売している屋台で食べ歩きをしたり、ワイン畑や昔ながらのシャンソンバーを見学したりできた。フランスでは季節ごとにいろいろなフェスティバルがやっており、参加できると楽しい。
昨年の私のフランス留学は、2017年度から日本医学放射線学会とフランス放射線学会の間で開始された交換留学プログラムによるもので、これまでに日本から8名、フランスから9名の留学者がいる。研修病院や期間は応募者の希望と両学会の調整により決定され、私はパリのSainte-Anne病院に約半年間留学した。私の参加した第1期はSainte-Anne病院へ2名、Bordeaux大学病院へ1名、Institute Gustave Roussyへ1名が留学した。第1期はすべてが手探りの状態で体制も整っておらず、私はビザ取得の遅れにより出発が2018年3月からとなった。しかし、2018年は日仏交流160周年記念の年で、フランスではさまざまなジャポニズムイベントが行われており、かえってふさわしい時期に留学できたと思う。私のいる順天堂大学にはフランスからの放射線科レジデント計4名が留学に来たため、研修のサポートや日仏の情報交換をしたり、お互いの語学や文化を教え合ったりして、友人となることができた。彼女らも今回のJFRでは順天堂大学で行った研究の発表をしており、病院レベルと個人レベルの双方で日仏交流ができていると思う。今後もこのプロジェクトは続く予定であり、興味がある方には参加をお勧めしたい。


夜のカクテルパーティーはパリの放射線科医達の社交場


フランス人交換留学生と


学会場でのピアノコンサート


チラシを竹馬で配る女性

2019/09/30(月)

『ESUR 2019@Dublinに参加して』
札幌医科大学医学部放射線診断学 畠中正光先生

最近、前立腺や子宮疾患の拡散関連パラメータの研究を行っているのでDublinで開催された26th European Symposium on Urogenital Radiologyに初めて参加した。
私の年代の者(昭和60年卒)には北アイルランド紛争は強く記憶に残っている。Brexitになったら国境問題が再燃し、以前のIRAによるテロに似た事件が生じるのではないかとの懸念もあり、Dublinについて機内で多少予習してみた。以前フィンランドに行った際に、シベリウス・フィンランディアを知らず、フィンランド人のある教授(ご両親ともに音楽家であり、自分は音楽の才能がなかったから医師になったと仰っていた)からご教授頂いた痛い過去もある。早速、市内中心部に位置するTrinity College DublinのLong Roomに出かけた。何と16世紀の解剖学者Andreas Vesalius先生による詳細な解剖書が展示されていた(図1)。関ヶ原の戦いの前である。ダ・ヴィンチやミケランジェロも解剖学の研究を行っていたと言うから珍しくはないのかもしれないが。誤解されるといけないので白状しておくが、Andreas Vesalius先生を知ったのは展示本の説明を読んだ時である。
さて、当の学会はというと、各専門領域のグループミーティングの雰囲気は異なるのかもしれないが、新たな研究の発表の場として侃々諤々という感じではなく、最新の知見を共有しましょうといった和やかな雰囲気である。司会者が中央に座り、横で演者がプレゼンを行うというスタイルからも雰囲気が伝わるのではないだろうか(図2)。ESURといえば造影剤のガイドラインが有名なのでESUR Tutorial: Updates on Contrast Mediumに参加した。司会者が最初に特に新しいことはないと言っていたのが印象的ではあったが、実際、特別な知見はない様だった。ただ、適切な診断は重要であり、透析患者であっても、他に方法がないならGd造影剤を使ってMRI検査を行うことを考慮すべきだと発言されていたのが印象に残った。他に適切な検査法がないこと、造影MRIを行えば「適切な」診断が可能であることの蓋然性が高いこと、などの立証は簡単ではないように思われるが。
今回、京都大学の木戸晶先生に大変お世話になった。富樫先生の後任として多くのミーティングに活発に参加し活躍されており、高名な先生方にご紹介いただいた。公式Dinnerの際にご紹介頂いたRomeのGabrielle Masselli先生ご夫妻とホテルの朝食会場で一緒になり、これから私の発表があるからとのことで普段は参加しない最終日のPlacentaセッションに参加したお陰で、こちらも前夜にご紹介頂いたCopenhagenのVibeke Berg Logager先生から声をかけられ前立腺DWIのb-valueに関する議論ができた。と言うのも私の発表は、Prostate V2: Advanced Prostate Imagingの裏に配置されたため、このセッションに参加できずやるせない思いを抱えていたところ、木戸先生に救われたのである。PSMAに脅威を感じていたが、「前立腺は益々拡散強調像の役割が重視されているようですよ」との木戸先生のお言葉にも気をよくしてDublinを後にすることができた。
次回は、2020年9月3~6日、Lisbonでの開催予定であり、メインテーマはUrogenital Radiology and Oncology: Present and Futureである。是非ご参加ください。


図1 解剖学者Andreas Vesalius先生による詳細な解剖書


図2 学会場

2019/05/30(木)

『2019 ISMRMに参加して』
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 放射線診断治療学教室 福倉良彦先生

2019年のISMRMは5月11日から16日にかけて、モントリオールで開催されました。この学会は、教育講演が充実しており、かつ、最新の情報から理解不能な技術的な演題まで、盛りだくさんなので、私は、可能な限りこの学会には参加するようにしています。前回2011年にモントリオールで開催された時には参加できなかったので、初のモントリオールでのISMRMに参加となりました。近年、ISMRMは暖かい開催場所が続いていましたが、生まれも育ちも鹿児島の私にとっては、モントリオールはやはり寒く、コートを持ってきたらよかったと後悔するような気候でした。

今回も、例年同様、行きの機内で抄録で面白そうなセッションに目星をつけて、会場入りしたのですが、結局は会場での多くの時間をPower Pitch Sessionに費やしました。午前中に1回、午後に2回ほど行われるこのセッションは、多くの演題のダイジェスト版といった感じで、それだけで、十分新たな多くの知識を効率よく得られるので、皆さんにもお勧めです。

今年のISMRMの話題といえば、人工知能と定量化(機能画像)であったように思われました。人工知能に関しては、ここ2〜3年の熱狂的雰囲気はやや落ち着いた感があり、実践的な画像のノイズ除去や臓器・病変のセグメンテーションなどの内容に絞られていた様に思われました。機能画像による定量化に関しては、夢のある将来を予感させるMR spectroscopyによる腫瘍のpHやグルタミンの定量、実用化に近づきつつあるMR fingerprinting、既に臨床的に用いられているT1値やT2値、ADCなどのによるマルチパラメトリックイメージングの有用性の演題など多岐にわたっていました。

個人的に専門としている腹部MRIにおいては、呼吸による動きによる制約が1番の問題点であり、他領域で有用な検査が、腹部においては呼吸の動きにより、撮像困難であったり、良好な結果が得られないこともしばしばです。皆、日常の現場でこのような経験をし、悔しい思いをしていると思います。これまでも放射状サンプリングによる動きに強いシーケンスや圧縮センシングによる高速化および両者を組み合わせたGRASP(Golden-angle radial sparse parallel)による自然呼吸下のdynamic撮像が報告され、臨床的に使用可能となっています。今回も呼吸同期で圧縮センシング(ただし、Low-rank matrix変換使用)を用いたsaturation recovery法による膵臓癌のDCE MRIの報告があり、興味をそそられました。また、自然呼吸下のMR fingerprintingの演題も見られ、将来の上腹部MRIの発展を期待させるものでした。

カナダ第2の都市であるモントリオールは北米のパリともいわれており、言語はフランス語で、建物も他の北米の都市と異なり、ヨーロッパの雰囲気が漂っていました。折角なのでと、学会の合間に、ローマ・カトリック教会のノートルダム大聖堂を観光しました。知る人ぞ知るカナダ出身のセリーヌ・ディオンが結婚式を挙げた場所らしく、さすがローマ・カトリック教会!青を基調とした色彩豊かなステンドグラスに幻想的な装飾でした。最終日には、シルク・ドウ・ソレイユの本社がモントリオールにあることもあり、前日にチケットを手配して、行きました。これまで、5カ所のショーを見てきましたが、さすが本場、その名の通り「太陽のサーカス団」という感じで圧倒されました。そこから、大きな観覧車が見えますが、一緒にいた同僚が、観覧車からモントリオールの景色を見たいと恐怖の発言。高所恐怖症の私は、その観覧車を見上げて、ためらうも、比較的早く回転しているので、これ位の時間なら我慢できるかな?と思い同意。しかし、いざ乗車すると、やっと一周回って終わったと思いきや、続けて回転し、4回転もしてからやっと解放され、気分が悪くなりました。

発展の著しいMRIに携わる私たちにとってISMRMは貴重な学会と思います。MRIの発展を日本人が世界の研究者と一緒に先導出来ることを願って、来年開催地シドニーで、また会いましょう。

『ISMRM 2019に参加して』
杏林大学 医学部放射線医学教室 町田治彦先生

この度、5月11~16日にカナダのモントリオールで開催されたISMRM 2019にデジタルポスター発表された同僚の五明美穂先生(発表演題:#2662)、診療放射線技師かつMR専門技術者の高橋沙奈江さん(#2060)、福島啓太さん(#1700)と参加した(写真1)。私は2009年にハワイで開催されたISMRMでポスター発表して以来の2度目の参加であったが、今回はサポート役という立場であった。気候は日本の3月並みで、昼夜の気温差もあったため、上着が手放せなかった。モントリオールはフランスの影響を強く受け、食事が美味しいうえに、フランス語以外に英語も通じ便利であった。

モントリオール発祥の有名なエンタテインメントといえばシルク・ドゥ・ソレイユである。我々は、日本でも移動公演が行われたアレグリアという演目を鑑賞した(写真2)。アクロバティックな曲芸ももちろん盛り込まれていたが、単なるサーカスの域を超え、オペラ、ロック、ミュージカルなどとも融合した芸術作品に感じた。その他、外せない観光スポットとしてノートルダム大聖堂がある。壮大なスケールの外観を想像していたが、実際はダウンタウンのビル群に囲まれて佇んでおり気軽に足を運べる。しかし、中に入ると外の喧騒とは一線を画し、壮麗な装飾や引き込まれるような青を基調とした内壁に目を奪われた。カナダ人歌手のセリーヌ・ディオンが挙式した場所としても有名であり、多くの観光客を魅了しているのも容易に納得できた。

学会は6日間で最初の2日間はEducational Sessionのみ、後の4日間はこれに加えてScientific Session、Power Pitch Session(大きな口演会場でプレゼンが行われ、近い距離で議論が可能)、 Digital Poster Sessionなどが散りばめられた構成であった。全演題数は約5500で下調べしてから参加する必要があるが、部位・トレンド毎にプログラムが絶妙に組まれており、聴講希望が重複することは少なかった。RSNAやJRCと比べるとコンパクトであるが、教育講演はもちろん学術発表も、最新技術を貪欲に吸収したいという雰囲気の熱心な参加者が多かった。特に臨床医より工学系のバックグランドを有する研究者・技術者の参加が目立ち、産医一体を下支えしている印象を受けた。ポスター発表は電子ポスターのみ(今年から紙ポスター廃止)であり、発表者は自分のポスターのそばで1時間待機しなければならない。閲覧者は総じて目的意識が高く、我々のポスター発表に対しても鋭い質問をされ、おかげで議論が盛り上がった。

今大会のトレンドは人工知能(AI)技術であり、全演題の約2割がAIと関連していた。AIの臨床応用は、いまや病変検出やセグメンテーションに留まらず、スループット向上や高分解能化など多岐にわたってきている。これは、多くのプログラミングやシーケンスに適用できる汎用性の高さが最大の理由と思われる。今回の我々の発表も2演題が深層学習を臨床応用していたが、まずノイズ除去アプローチであることを説明する必要があった点はAIの裾野の広さを改めて痛感させられた。

5月13日にはインターコンチネンタル・モントリオールでゲルべ・ジャパンによる『第9回Japanese Meeting in ISMRM』が開催された。ISMRMプログラム委員の本杉宇太郎先生(山梨大学)のご報告によると、ISMRMは公平性にとても配慮している点が大きな特徴とのことである。本部のメンバーや演者の選出では、地域はもちろん人種や性別なども大いに考慮されるそうで、全世界におけるMRIのレベルの標準化を目指す強い意思が感じられた。一般演題の採択率は8割程度とのことであり、肌感覚より高い印象を受けた。採択されるポイントはタイトルや図表とのことである。その他、田岡俊昭先生(名古屋大学)、長尾充展先生(東京女子医科大学)、伊東克能先生(山口大学)の講演では中枢神経、心臓、腹部領域における今大会のトレンドや注目演題などをご紹介頂き、大変有益な時間を過ごすことができた。今大会で発表されたが、山田惠先生(京都府立医科大学)がSenior Fellowを受賞されたことは大変喜ばしいニュースであった。その後の懇親会では、今後日本からもっと受賞者が出るのを見守っていきたいと仰っていた。

今回、ISMRM 2019に参加して最先端の技術やシーケンス、臨床応用にいたるまで世界のMRIのレベルを実感できたのは貴重な機会であり、大きな刺激を受けるとともに来年への活力となった。我々を快く送り出し、大いにサポートもして下さった横山健一教授をはじめとする医局の先生方や中西章仁技師長をはじめとする診療放射線技師の方々など、多くの方に大変お世話になった。この場を借りて深謝したい。

写真1

写真2

『ISMRM 2019 in Montreal』
ゲルべ・ジャパン株式会社 高橋昌哉

隔年で北米とその他の地域で行われるISMRMが、今年はカナダのモントリオールで開催されました。本年度の全採択演題数は5,512、うち日本人 (First Author)からの演題数は197演題 (内訳:臨床/基礎/他科等: 149、企業: 28、海外所属など: 20)でした。パリで行われた昨年2018年のISMRMでは、全体6,006演題、日本人243演題であったので、日本人からの演題は割合としても少々減少している結果となっています。

まず開催形態として今年から大きく変わったことは、traditional posterを廃止し、その代わりに従来からあるe-posterへ移行したことです。これには様々な理由によるものと想像しますが、個人的に見る側としての感想は、先ずは各演題の発表者が立つ時間に居なくては詳細が分かりづらいように思いました。さらに発表時間以外では演題の紹介がディスプレーに数秒づつ次々に表示されていましたが、回転が速いうえに違う領域の演題が混在していたため、気になる演題があってもキャッチし難い状況でした。このためtraditional posterの時のように、空いた時間でじっくりとまとめて領域ごとに内容をフォローするのが難しくなったと感じました。

発表内容の概観ですが、先ずはartificial intelligence (AI)、Big Dataに関しては、当然のことながらますます演題数が増加しておりました。各技術の応用例も、診断支援やノイズ低減などによる画質の向上関連にとどまらず、新たな画像再構成法、またMR Fingerprintingにも絡みvirtualによる各MRパラメータのmappingなど更に多様化した印象がありました。またこれらの技術による撮像時間の短縮により、MRIの最も基本的かつ重要なパラメータでありながらこれまで時間的に正確な定量が困難であったT1値が、各領域で組織診断・鑑別により重要であるという報告が増加傾向だと思います。更にT1値のみならず、MRIにより測定される様々なパラメータをより正確に定量化しようとする動きが促進し、他の画像装置によるパラメータに加え、生理的なパラメータ、あるいは遺伝子情報をも含めて、多変量解析により各患者の診断を行う”Radiomics”の報告も増加傾向にありました。

個人的な専門である分子イメージングに関しは、CEST (chemical exchange saturation transfer)/MTC (magnetization transfer imaging)のセッションが定着したように思います。CESTに関しては、これまでのAPT (amide proton transfer) imagingよりも、amine (-NH2)のプロトンを使ったglutamateのCESTがよりpH sensitiveであるという報告や、creatine・creatinineのCEST、hydrogen (-OH)をターゲットとしたglucose やglycogenのCESTに興味が移ってきているようでした。またCEST/MTのパラメータのみではなくT1, T2, ADC (apparent diffusion coefficient)や還流、造影T1など他の情報との組み合わせの報告が増加しています。これは、CEST/MTがより一般化したパラメータとして広く使用され始めた結果ではないかと想像します。

もう一つ個人的に挙げたいのは、glymphatic systemによる脳の水動態の研究の拡大です。我々放射線科の分野では、Gdの脳への残留・沈着の原因の解明という意味合いが強いと思っていましたが、従来より外科や内科による水頭症、あるいはアルツハイマー病の病態解明のキーとして研究されており、遅ればせながらいかに重要な研究分野であるかを改めて認識した次第です。水を観察するMRIでこそ出来る貢献があるはずであると、研究のアイディアを巡らせる良いきっかけとさせて頂きました。

最後になりますが、ケベック州モントリオールはフランス圏だけあり、同じ北米といえどもヨーロッパ調の外観で雰囲気があり、演題の内容だけでなく食事が非常に美味しかったと思いました。来年のシドニーでは、どのように本会が発展していくのか楽しみにしています。

 

2019/05/21(火)

『GEST2019印象記』
神戸大学医学部附属病院放射線診断・IVR科 山口雅人先生

2019年5月9日~12日、ニューヨークにてGlobal Embolization Oncology Symposium and Technologies (GEST2019)が開催されました。今回、私はfacultyとして招待されたため、折角の機会なので神戸大学の後輩を連れて参加させて頂きました。日本からは私以外に、荒井保明先生・曽根美雪先生(国立がん研究センター)、宮山士朗先生(福井県済生会病院)、清末一路先生(大分大学)、田中利洋先生(奈良医大)、奥野祐次先生(オクノクリニック)がfacultyとして参加されており、みなさまいずれ劣らぬ素晴らしい講演を披露されていました。特に荒井先生はGESTの中心メンバーとして変わらず元気に存在感を示されていましたし、奥野先生は骨軟部セッションで重要な役割を果たしておられ、この領域での世界的第一人者として認知されているのは言うまでもありませんでした。

以前の他先生方からの報告にもある通り、GESTでは悪性腫瘍に限らずあらゆる領域の塞栓術がプログラムに組み込まれています。内容も疾患概念・適応、塞栓物質の選択や手技、エビデンスや他療法との比較など幅広い観点から構成されており、その完成度に感心させられます。初心者からエキスパートまで塞栓手技に関わる者であれば全て、4日間のプログラムを楽しめることができるでしょう。

幾つかの関心事を挙げたいと思います。前立腺肥大に対するPAEは手技や成績が確立されてきて、良好な臨床効果を得るためや合併症を起こさないための塞栓方法の最適化が議論の中心となっていました。術前・術中の画像診断で塞栓効果や合併症のリスクを如何に予防するかといった放射線科医らしいアプローチが議論となっているのが印象的でした。またビーズの逆流による誤塞栓のリスクについては、流体力学を利用する新しいコンセプトのマイクロカテーテルが注目を集めていましたし、マイクロカテーテルで使用できるプラグなど、国内未承認のデバイスや塞栓物質を実際にハンズオンで触れる機会もありました。リンパ管のセッションでは、よく話を聞いていたItkin先生らが、リンパ管イメージング・塞栓術の研究を熱心に講演されていました。今年6月の穿刺ドレナージ研究会(大阪)ではItkin先生を招聘してのリンパ管のプログラムも予定されていますので、興味ある方は是非参加されたらと思います。

私はGESTには、2010年第4回(サンフランシスコ)にIVR学会国際交流促進制度の補助を得て初めて参加する機会を頂き、学会誌に印象記を投稿しました(日本IVR会誌25,2010.373)。記憶に刻まれている学会で、自分もいつか声がかかるように頑張ろうと思わせられました。その後2016年に東京で開催されたGEST Asiaで、初めて招待講演を経験させてもらいました。複数の講演をこなすのは大変でしたが、達成感が強く、自分の中で何か感覚的に突き抜けるようなものがあり、随分と自信になりました。このような経緯からGESTへの思い入れもありましたし、今回、準備はもちろんしっかりした上で、肝も据わった感じで臨むことはできたように思います。

昔、クイズの勝ち抜きをしながらアメリカ大陸を横断し決勝の地ニューヨークを目指す「アメリカ横断ウルトラクイズ」という壮大な番組があり、子供心に興奮してテレビの前にかじりついて見ていたものです。以来、ニューヨークは憧れの地となり、これまでも幾度か人生の節目で訪れる機会がありました。少しずつ積み重ねてきた実績や信頼関係を自信にして、今、最大限できることを発揮する、そんな仕事の原点を思い起こさせてくれるexcitingな街、それが自分にとっての「アナザスカイ・ニューヨーク」です。GESTは来年もこの季節の良い5月にニューヨークで開催されます。会場もマンハッタンのMidtown Westにあるシェラトンホテルで、セントラルパークやタイムズスクエアにも近く、滞在を存分に楽しめます。毎年5月にニューヨークでのGESTが恒例になればいいなと期待しつつ、是非、若い先生達も積極的に参加してもらえればと思います。

 

Plenary Session会場 かっこいい背景でした

中心メンバーの一人 Dr. Sapovalとfaculty dinnerにて

2020年IVR総会(神戸)に招聘予定です。

2019/03/07(木)

『第14回APSCVIR2019レポート』
東海大学医学部専門診療学系画像診断学/付属八王子病院 画像診断科 長谷部光泉先生

第14回アジアパシフィック心臓血管IVR学会(APSCVIR)は2019年2月21日〜24日に、インドネシア(Bali)にて行われた。本学会は、アジア、オセアニア地区の16のIVR学会から構成されており、参加者は年々増加しており、2000名を越える参加者が集う学会である。アジア発のカッティングエッジな学術的な発表から教育講演、電子ポスターなどで構成され、温暖なリゾート地にもかかわらず、非常に活発な議論がなされていた。
その中で、2月22日の午前に行われたAPSCVIR MEETS SIR(Moderator: Prof. Andrew Holden, Prof. Brian Stainken)のセッション中でProf. Ziv Haskal (JVIR Editor/USA)が“Future IR”と題した講演を行った。世界的なKey Opinion Leaderの一人であるZivが行ったIVR領域の未来についての講演を興味深く拝聴した。彼の講演においては、IVR領域の新しい手技は、過去では、1)必要に応じたイノベーション、2)確定された病理所見に基づく治療、3)外科手術を置き換える低侵襲手技に応じて生まれてきたが、未来においては、”Directed innovation”が新しい手技を生むという考え方を示した。Directed Innovationとは、「方向付けられた進化」のことであり、従来のイノベーションの生まれ方とは一線を画している。すなわち、ニーズを待って新しい手技を生み出すのではなく、疾患を新しく再定義し、それを改善するために方向性を持ってテクノロジーの力を借りて新しいIVR手技を積極的に生み出すことが必要であろうという内容であった。新しい分野としては、全身状態をモニターするセンシング技術やニューロモデュレーション(neuromodulation)と呼ばれる埋設型の小型の神経刺激デバイス(例えば、脳深部刺激や脊髄硬膜外刺激など、その他全身について)の進化が近い将来には一般的になってくるだろうと予測されており、これらの開発や埋め込み手技などについても我々のIVR手技として対応していくべきだろうと述べた。また、日常臨床においても、いわゆる「確定した病理診断」がなくともIVRが対応すべき疾患概念は存在するという考え方である。その一例として、良性疾患である変形性膝関節症の痛みに対する塞栓術(Okuno JVIR 2013)を例に挙げ、関節痛がなぜ痛むのかという根本的なメカニズムはわかっておらず、こういった慢性的な病気に対する認識を変えていく必要があると述べた。その他、いままで病態がよく理解されていないリンパ系の病気についてもMR lymphographyなどで評価し、リンパ系の塞栓術の有効性などについても触れていた。その他、新しい血管造影装置のためのソフトウェアとして、Angiographic perfusion imageなどは、現在その有用性が検討されており、重症虚血肢の治療のエンドポイントの選択や、EVAR後の腎のパーフュージョンや、頭蓋内のパーフィージョン、その他、肝を含むInterventional Oncologyの分野での応用が期待されていることを紹介した。
ヘルスケアの未来予測として、「Healthcare 2030」、つまり、10年後の未来予想は、様々な人口統計、疾病構造、技術革新に基づき予測がでている。そして、その技術革新は、放射線医学、病理学からおこると言われている。さらに、P4 Medicine(Predictive(予防医学)、Personalized(個別医学)、Preemptive(収集したデータから先制して介入する)、Participatory(患者が理解してこうしたサービスに参加型))が一般的になってくるとされている。これらの革新は、いわゆる基礎研究と臨床研究をつなぐTranslational Researchからイノベーションが生まれることは多くの予測から知られているところである。また、2030年にはロボット手術や、遠隔患者ケアなども一般的となってくると予想されている。画像下治療:IVRについても、そのイノベーションの波は既にやってきており、急激に変化していくものと考えられる。今までの常識的な考え方、古い考え方ではその波についていくことはできず、我々のIVRの分野においても我々の専門性が大きく変革していくことを楽しみながら準備する必要があるだろうと講演を締めくくった。私個人としても、こういった考え方には大いに賛同することろであり、今までの古典的なIVR診療のみにフォーカスをおいているだけでは、革新のスピードについて行けないと考えている。そのためにもIVRに関するTranslational Researchを積極的に進め、イノベーションを生み出す側の新しいIVRistsを育成していきたいと強く感じた。