2022/05/20(金)

『ISMRM 2022 肝胆膵MRIのトピックス』

山口大学大学院医学系研究科 放射線医学講座 伊東 克能先生

2022 ISMRMはロンドンにてハイブリッド形式で開催されましたが、今回はweb参加しました。肝胆膵領域の教育的講演では、AI関連、スクリーニングと定量化、Flow & perfusionのほか、 Hot Topics in Body MRIでは、時節を反映した話題としてWhat’s New in COVID-19-Related Imagingとして、1) Post-Vaccine COVID-19 Adenopathy: Multidisciplinary Recommendations、2) Multi-Organ Involvement of COVID-19 & Vaccine-Related Conditionsの2講演がありました。腹部領域におけるCOVID-19関連病変についてインパクトのある画像が提示されましたが、MRI検査まで実施される症例はそれほど多くない印象です。今後は、COVID-19後遺症関連のイメージングに関する新たな知見も出てくるかもしれません。

研究発表に関して、いくつか興味深い演題を挙げると、まずMicrostructure imagingと称される新たなパラメータに基づくliver imagingが発表されています。Probing Liver Microstructure in-vivo Using Diffusion-Relaxation Correlation Spectroscopic Imaging (DR-CSI) (3369)では、6 b-valuesと5 echo timesから15の組み合わせを選択して、18分の撮像で、肝内正常構造をcomponent.1-5として画像化するもので(comp.1=肝細胞, comp.2=胆管, comp.3=結合織, comp.4,5=血管)、正常肝とB型肝炎でcomp.1,2,4の比率に違いがあることが示されています。また肝嚢胞がcomp.6として描出されたことが示されています。これらの結果については、どのような生理的組織学的変化に対応するのか、今後の検討が必要と考えられます。またHistological correlates of DR-HIGADOS microstructural metrics in the mouse and human liver (0602)は、Diffusion-Relaxation Hepatic Imaging via Generalised Assessment of DiffusiOn Simulations (DR-HIGADOS)という手法によるliver tumor microstructure imagingに関する発表で、6 b-values, 5 echo timesの組み合わせで17分の撮像を行い、intra-cellular, extra-cellular and vascular-like waterに基づいたintra-cellular signal fraction/diffusivity, cell size, cellularityを画像化するもので、動物実験では、患者腫瘍組織移植モデルにおいて、cell size低下とcellularity上昇が認められています。臨床例では卵巣癌肝転移、悪性黒色腫肝転移でintra-cellular signal fractionが肝細胞癌より高い(線維化を反映)こと、肝細胞癌ではcell sizeがより不均一であることが示されています。臨床例は3例のみの検討であり、今後、腫瘍の組織構築や生物学的悪性度についてさらなる評価検討が必要ですが、新たな指標として興味深い検討といえます。

Advanced Liver Imaging Techniques (Digital poster)では、13C MRSに関する発表がいくつか見られました。Development of 13C MRS measurements of hepatic glutathione production: monitoring oxidative stress in vivoでは、13Cグリシンおよび13Cグルタチオン濃度を測定することで、肝グリシン-グルタチオン合成の定量化の可能性を示しています。グルタチオンは肝臓の内因性抗酸化物質であり、その代謝を定量化することで、酸化ストレスに起因する急性および慢性肝障害の病態解明に役立つものと考えられます。またSimultaneous Assessment of Complementary Metabolic Pathways in Liver Using Co-polarized Hyperpolarized 13C pyruvate and 13C dihydroxyacetone (2293) では、超偏極13Cピルビン酸と13Cジヒドロキシアセトンの同時偏極によりラット肝臓内で両薬剤の代謝物が同時に観測可能であることが示されました。この手法により急性肝障害や糖新生の状態、糖尿病やNAFLDなどの代謝性疾患を非侵襲的に評価できることが期待されます。これらの肝機能とくに代謝に関するMRS評価も今後、慢性肝疾患の病態解明、早期診断や治療方針の決定など臨床的に重要な役割を担ってくるものと思われます。

スタンフォードブリッジ:プレミアリーグ、チェルシーFCのホームスタジアム

タワーブリッジ:テムズ川に架かる跳開橋で、船舶航行時には開閉のため通行止めとなる

『ISMRM 2022での新たな体験』

千葉大学大学院医学研究院画像診断・放射線腫瘍学 横田 元先生

今年のISMRMはLondon開催であった。引き続きCOVID-19やウクライナ情勢が不透明であり、日本、中国、韓国といったアジアからの参加者は多くがweb参加であったようだ。我々の施設からの採択演題も、当初は現地でのセッションが割り当てられていたが、後日webでのプレゼンに変更可能となった。ISMRMのvirtual meeting siteは充実しており、セッションをリアルタイム視聴できるのはもちろん、教育講演などはvideoとして自由な時間に視聴が可能である。Londonは時差が8時間であり、セッションは日本時間16時から25時程度に開催されるため、日常臨床をしながらも比較的参加しやすかった。あえて問題をいうならば、non-memberでweb参加は1,660米ドルであり、学会開催時の為替レートで216,630円と高額であった。1年前から20%近く円安が進んでいることが大きく影響した。物価上昇が大きな話題になっているが、研究活動にもインフレの波が押し寄せているようだ。賃金は上がっていないので、スタグフレーションと言うのだろうか…。

世界経済を肌に感じつつ、筆者はOnline Gather Town Pitchesというセッションでweb発表を行った。このセッションは、学会会場を模したwebスペースにログインし、アバターを操作しつつカメラとマイクを使用してコミュニケーションを行うというものだ。アバターが隣同士になると会話が可能となる。特定のスペースに行くと、そのスペース内でグループでの会話が可能となる。「これがメタバースというやつか」と筆者は思ったのだが、オンラインゲームなどをやりなれた方には当たり前のことなのかもしれない。一つ残念だったのは、オリエンテーションが不十分であり、細かい機能が分かりづらいことだ。折角の座長からの質問に、どこにアバターを移動させれば会話ができるか分からず、気まずい無言状態が続くような場面が見受けられた。ただ、筆者個人は現地でのポスター発表と同様の感覚を得ることができ、新しい学会の形を感じさせるものであったため、今後の発展を期待したい。

添付した画像はQ and Aセッションの画面で、座長が事前に登録したビデオを流し、質疑口頭を行う。その後、右端に映っているような各演題に割り当てられたブースに移動し、来訪者とディスカッションを行う。筆者のセッションでは、三重大学の佐久間教授が座長を務めて下さったのだが、佐久間教授が各演題に質問をし、その後に各ブースにも廻り、セッションを大いに盛り上げて下さった。筆者は、Time estimation from stroke onset with diffusion-relaxation matrix-based T2 and ADC simultaneous mapping [program number: 4177]という演題を発表した。diffusion-relaxation matrix(DRM)はmulti-echoの拡散強調像で、ADC mapとT2 mapを同時に得ることができるシークエンスである。脳梗塞の発症後経過時間は治療方針決定に必要不可欠な情報であるが、起床時発症の場合や、バイスタンダーがいない場合は発症時間が分からない。通常の拡散強調像では、ADC値から梗塞が急性期か亜急性期かの判断は可能であるが、発症早期の経過時間は判断困難である。一方、T2値は発症後に時間と共に上昇するとされている。DRMは、通常の拡散強調像と同様に梗塞の有無を診断でき、DRMから得られたT2値は発症後経過時間と強く相関していた。また、4.5時間、6時間、16時間といった血栓溶解療法、血栓回収療法の適応時間内かどうかを、高い精度で判別することが可能であった。DRMは1つのシークエンスで梗塞の診断と経過時間推定が可能で、日常臨床に手軽に導入できると思われる。当施設からは、inhomogeneous magnetization transfer(ihMT)を利用したミエリン画像を脊髄、腕神経叢で試みた研究[program number: 2973, 4530, 4538]、MRIにaudiovisual systemが患者の不安感、造影剤副作用を減少することを示した研究[program number: 4736, 5075]の発表を行った。ihMTは多発性硬化症の脊髄病変を通常のT2強調像よりも高いコントラストで描出することが可能で、再髄鞘化が起きT2強調像では不明瞭化した病変も描出することができ、臨床現場からも高い評価を得ている。

文面の都合上、当施設からの発表を紹介するに留まってしまったが、様々な刺激的な発表がなされていた。参加登録した会のproceedingは未来永劫参照できるという大きなメリットがあり、教育講演の充実化も進んでいる。年々参加したい会に進化していると感じる。

 

『ISMRM 2022 脳神経領域のトピックス』

順天堂大学放射線科 鎌形 康司先生

ISMRM 2022はハイブリッド開催で、筆者はWEB参加のみであったが、参加した同僚に聞くとオンサイトも盛況であったとのことである。本会では、WEB参加の発表者のために新たに作られたOnline Gather.town Pitchesという形式での発表が新鮮であった。まるでロールプレイングゲームのように、自身のアバター(8ビット?のキャラクター)を操り仮想の学会場を歩き回り、他の参加者に近付くと自動的にビデオ通話が開始され実際に討論ができるといった具合である。自らの発表ブースも用意され、興味を持った参加者複数人での討論が可能であり、非常に興味深い発表形式であった。こうなると現地に行かなくては良いのでは?と思うこともあるが、やはりWEB参加だと日常業務との並行作業になる点が難しい点である。

今回のISMRMでは、我が順天堂大学放射線科のビッグボスである青木茂樹教授が栄誉あるFellowに選出された。拡散MRIの臨床応用や拡散テンソルの可視化ソフトの開発など、神経放射線医学における先駆的な貢献を評価されてのことである。加えて、昨年度まで順天堂大学で研修をしていた藤田翔平先生(現東京大学放射線科)がJunior Fellowに選出されると共にSumma Cum Laude Merit Awardを二つ受賞した(私は彼ほど優秀な後輩を知らない)。どちらも学会のポータルサイト(https://www.ismrm.org/22m/)から確認できるので、是非ご覧いただきたい。

さて、脳神経領域ではNeurofluidsというキーワードを冠したセッションが数多くみられ、近年のトピックスの一つと思われる(Neurofluids: From Macro to Micro、Quantitative Neuroimaging & Neurofluids I〜Ⅳ、Gray Matter & Neurofluids I/Ⅱ、New Look of Neurofluids Physiology I/Ⅱなど)。その中でも特にNeurofluids: From Macro to Microのセッションの演題番号0326が印象的であった。本演題では7T-MRIを用いてintravoxel incoherent motion (IVIM)により拡大血管周囲腔内の流れを評価しようという試みを行っている。IVIMで評価される従来の2成分(microvascularとparenchymal)の間に中間成分(fint)が同定され、間質液(ISF)の増加を反映すると考えられている(Wong et al., 2020)が、本演題では拡大血管周囲腔内のfintおよび中間成分の拡散率を示すDintが血管周囲腔の周りの脳実質に比べて上昇することが示されている。血管周囲腔内の拡散を評価しうる手法として興味深く、今後の疾患病態評価への期待が高まる。

かくいう私もQuantitative Neuroimaging & Neurofluids Ⅱのセッションで、アルツハイマー病を対象に血管周囲腔体積、血管周囲腔周囲の拡散率(ALPS index (Taoka et al., 2017))、脳間質の自由水(free water corrected DTI(Pasternak et al., 2009)によって算出)の変化を測定し、これらの指標と脳脊髄液アミロイドベータや認知機能スコアとの相関関係を評価した演題を発表した(演題番号3589)。Online Gather.town Pitchesでの発表であったが、興味を持った研究者が何人か質問に来てくれたのが嬉しかった。

最後にもう一つ興味深い演題を紹介したいと思う。拡散MRIを用いた振動器を必要としないvirtual MR elastographyによって乳児の脳深部灰白質を評価したという演題である(演題番号3595)。彼らは拡散MRIに基づいた仮想せん断剛性を算出し、脳乳児においては深部灰白質の中でも淡蒼球が最も硬い領域であることを報告している。脳の硬さは種々の認知症や脱髄疾患において変化していることが知られているが(Murphy et al., 2019)、MRI elastographyには専用の振動器が必要である点が普及を妨げていた。振動器なしに脳の硬さを推定することができれば非常に興味深い。

今年のISMRMを振り返るとやはりオンサイト参加が懐かしく感じた。オンサイト参加の記憶を呼び起こすため見つけたISMRM2016(シンガポール開催)の写真(1、2)を最後にお示しして、筆を置く。

写真1 ISMRM2016にて、筆者(左)と量子医科学研究所・主幹研究員の立花泰彦先生(右)。

写真2 シンガポールの夜景(マリーナベイサンズ)

 

参考文献

Murphy, M.C., Huston, J., 3rd, Ehman, R.L., 2019. MR elastography of the brain and its application in neurological diseases. NeuroImage 187, 176-183.

Pasternak, O., Sochen, N., Gur, Y., Intrator, N., Assaf, Y., 2009. Free water elimination and mapping from diffusion MRI. Magnetic resonance in medicine 62, 717-730.

Taoka, T., Masutani, Y., Kawai, H., Nakane, T., Matsuoka, K., Yasuno, F., Kishimoto, T., Naganawa, S., 2017. Evaluation of glymphatic system activity with the diffusion MR technique: diffusion tensor image analysis along the perivascular space (DTI-ALPS) in Alzheimer’s disease cases. Japanese journal of radiology 35, 172-178.

Wong, S.M., Backes, W.H., Drenthen, G.S., Zhang, C.E., Voorter, P.H.M., Staals, J., van Oostenbrugge, R.J., Jansen, J.F.A., 2020. Spectral Diffusion Analysis of Intravoxel Incoherent Motion MRI in Cerebral Small Vessel Disease. Journal of magnetic resonance imaging : JMRI 51, 1170-1180.

2021/12/13(月)

『現地の様子、お伝えします その1』

社会医療法人愛仁会 高槻病院 イメージングリサーチセンター 高橋 哲先生

2019年以来の2年ぶりのシカゴです。
昨年行けなかった理由は説明するまでもありませんが、今年来ている理由は説明する必要があるかもしれません。理由は”とあるCT”が発表されるのでどうしても見たかったこと、そして家族、病院、市役所、厚生労働省、外務省そして航空会社もふくめ水際対策に携わっておられる全ての方々の、多大なご協力をいただけたこと、です。
「ワクチン接種者のビジネス往来は帰国後3日間の待機へ」という文言が報道で流れた時には、Educational Exhibitとはいえ一応演題を出している私は、もしかして学会に行けるのか?と一瞬思いました。しかしその手続きの説明をHPで読んで、読むのを途中で辞めてしまいました。非常に厳密であり、このような手続きを病院にお願いするのはさすがに、と思ったからです。しかし、病院長と別件でお話をした時ダメ元で「2週間休んだら、ダメですよね」と伺うと、「3日間になったし、今、実際に○○先生イタリアに行っているよ」と意外なコメントをいただいたのです。「しまった!そんなことなら、諦めずにもっと早く相談しておけば良かった」と思ったのですが、やれるだけやってみようと、それから書類を一気に作成し、PCR検査とか、待機の態勢の準備を行いました。当院の事務部管理科の方が○○先生で一度経験済みであったことも、そして監督官庁である厚労省のご担当の方も大変協力的に様々なアドバイスや指導をしてくださったお陰で、何とか出発可能となりました。関係各位に感謝しかございません。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。どのような手続きが必要で、何に気をつけなければならないか、いつか共有したいとも思います。
RSNA側の受入体制ですが、これも色々考えられていました。”Safe Expo”というサイトへ、まずワクチン接種証明書の画像キャプチャを送り、承認されるとワクチン接種済みで会場に入っても良いという証明が来ます。これがないと名札がもらえません。私は、試しにいわゆる英文併記のワクチンパスポートでなく、病院からいただいた日本語のワクチン接種証明書を送ってみましたが、これでも承認されました。
とりあえず土曜日朝に到着したため、早速、名札を受けとりに行ってみました。シャトルバスで会場に向かいますが、これまでと異なりバス停が統合化され、6コースでそれぞれほぼ2カ所しか停まらなくなっています。「ここからバスに乗れたはず」と適当に歩いてもバス停が見つからず、随分と探しました。バスに乗る時にはワクチン接種証明など一切求められず、マスク着用のみ求められます。会場に到着すると、Registrationエリアに入るためには、Safe Expoから受け取った「ワクチン接種済証明」を提示する必要がありました。あとは通常の手順で登録済みのバーコードとパスポートを見せて、名札を受け取れました。例年よりかなり手前の場所、展示や学会会場へ入るエスカレーターの手前で名札の有無のチェックが行われ、このチェックは例年以上に厳密でしたが、名札さえ入手あれば自由に動き回れます。
会場内の外れの1室には、COVID19検査室が設けられています。帰国時のCOVID19陰性確認に使えるもので、Safe Expoサイトでパスポート番号などを登録すると、COVID19 TESTINGという2次元バーコードが送られてきます。これを示せば何度でも有料で(LAMP検査1回150ドル、抗原テスト1回50ドル)で受けられます。LAMP検査は日本帰国時72時間以内の陰性証明として使えるため、ここでの検査を予約しておきました。
このように、新型コロナの中、何とかこの巨大学会を運営しようという様々な工夫がなされていました。今回の米国入国に際しては、日本出発時にワクチンパスポートとPCR陰性証明が求められ、航空会社のチェックインの際で提示と確認がなされました。またCDCに対する宣誓書の提出も、国際線搭乗手続き時に求められました。しかし、ここで出発時の手続きとして完了してしまうと、米国入国に際しては、出国時に確認されているからと一切確認はなく、パスポートコントロールの待ち時間0分で、1分後には手荷物受けとりに向かい、5分後にはタクシー乗り場に着いていました。学会会場でもSafe Expoでのワクチンパスポート登録があり、一度チェック済みとなれば、後は普段通り、例年通りの名札チェックが少し手前で行われただけでした。街中も、日中は多くの方がマスクをして歩いていましたが、夜は6割程度に減り、あとの方はマスクもなく、飲食店も(外から見る限り)だれもマスクなしで楽しげに飲み食い騒いでいました。日本よりはるかに感染者も死者も多い国での風景です。
翻って、米国への到着当日にこの文章を書いている私は、日本に帰ってからの厳重な手続きと時間に、今から戦々恐々としています。考え方、国民性の違いでしょうが、これが国の勢い・活気につながっている気がしてなりません。

 

 

『現地の様子、お伝えします その2』

社会医療法人愛仁会 高槻病院 イメージングリサーチセンター 高橋 哲先生

物事が動くときは、落ち着いてから記録に残した方が良い場合と、リアルタイムに記録を残した方が良い場合とがあると思います。折角ですので、リアルタイムだった記録を、後から見ていただければ、と思います。
本日11月30日、オミクロン株に対する水際対策強化のため外国人の日本入国が停止された、と発表されました。これは意外なインパクトで、学会会場で友人に会うたびに「日本は国境閉じたらしいね?帰れるの?」と質問されました。「その1」でご紹介した「ワクチン接種者のビジネス往来では帰国後3日間の待機」や待機期間の14日間から10日間への短縮、も全て停止となり、他の方への迷惑を最小限にする目論みはすべて吹っ飛んでしまいました。
厚労省が発表する「水際対策強化に係る新たな措置(20)」(11月30日更新)は、緩和措置である「水際対策強化に係る新たな措置(18)(19)を停止する形で、「水際対策強化に係る新たな措置(17)」に戻ることを意味します。発令形式上やむを得ないのですが複雑で、結局何をしていいのか、いけないのか、検疫が用意する施設に入る必要があるのかないのか、一読では理解できません。その上、オミクロン株が検出された国が次々と追加されていくため、まさに日々刻々と状況が変わり空港のチェックイン担当者も困惑、という状況でした。
このような中であえて物理的に参加した学会です。ヴァーチャルでは分からない「実感」を紹介します。
会場参加登録されている人数は例年の4割強との噂でしたが、実感として、機器展示会場はもう少し例年に近い感じでした。定期的に参加されておられた先生でしたら、2019年までで既にお感じになられていると思いますが、機器展示の規模が少しずつ小さくなっています。例年、主要機器メーカーは各モダリティで多くのモックアップ機器を展示しますが、今回はその展示機器数がさらに少なくなっている印象でした。その一方で、セッション会場、教育展示会場はガラガラで、例年の1割くらいの感覚です。Scientific, Educational contentsはバーチャルやオンデマンドなどでよい、学会の目的は機器展示、という明瞭な参加者の感性を感じました。
さて新製品ですが、個別メーカー、個別機種のコメント最小限としますが、あきらかなブレークススルー製品は、SIEMENSのフォトンカウンティングCTであるNAEOTOM Alphaぐらいだったと思います。それ以外はCT、MRIについては、広い意味での普及機を発表したメーカーが多かったと感じました。単純な廉価版ではなく、例えばヘリウムの使用量が少ないとか、不慣れな技師でも正しくポジショニングできるようカメラで誘導する、撮像の細かなパラメータの入力なしに、ほぼワンボタンで撮像が開始できる、といった機器が各社から出ていたことに興味深く感じました。CTやMRIは成熟し、いかに簡単に、誰でも、どこでも一定の質の検査を行うことができるか、標準化・底上げに重きがおかれるようになっています。
一方で様々な技術が進歩し、ベンチャーから大企業まで勢いを感じたのが、AI showcaseのエリアです。このご時世ですので、胸部レントゲン写真、胸部CTそして乳腺が主要なターゲットでした。個人的にはCT画像のDICOM データからサイノグラムをつくり、ノイズ除去をするAIは、ベンダーに依存せずあらゆるCT機器メーカーの画像ノイズ除去を行い、低被ばく画像を謳っていました。最近やっとAI画像再構成ができるCT機器が導入された施設の私としては、大変興味深く感じました。かつてCTでもMRIでも、自社の機器上で、自社のワークステーション上でしか処理できない様々な画像解析・処理がありましたが、多くはDICOM画像を処理する汎用型ワークステーションに置き換わっていきました。低線量画像でのノイズ除去がCT機器上でできれば、もちろん簡単で理想的ですが、最新鋭でない機器を有効利用するという点でとても興味深く感じました。
個別の項目は、バーチャル機器展示の方でも経験できるので、最後に会場を見渡しての感想です。
日本の影がまた薄くなりました。
何よりも、これまで展示会場で最も大きなスペースを占めていた企業の一つである日本企業がありませんでした。AI showcaseのエリアでも、日系企業を見つけることができませんでした。本当はあったのかもしれませんが、人だかりのある企業は、上述のCT画像のノイズ除去を行う会社も韓国ベンチャーであり、ほぼ韓国と中国のベンチャーばかりでした。会場でも若い東アジア人は多くいました。でも聞こえる(聞きとれる)のは韓国語と中国語(っぽい言語)のみで、日本語は企業の方以外、全く聞こえませんでした。帰国の前日に会場で、韓国の著明な先生にばったりお会いし、「日本人を見たの初めてだよ」と言われました。例年の1割程度とのことですが韓国からは約20名の放射線科医が来ているとのこと。
もっとも海外渡航したために、当初の4日目(翌月曜日)からの特定行動による読影勤務から、一気に2週間自宅待機になったため、周囲に膨大なご迷惑をかけ、明らかに「行かないのが正解」だったと思いますが、日本の影の薄さを感じ寂しい気持ちで帰国の途につくことになりました。2週間の待機を考えて憂鬱なせいでしょうが・・・


教育展示会場はまばら(でも比較的多いかも)


フォトンカウンティングCT発表の瞬間


フォトンカウンティングCTは人だかり

『RSNA 2021 ONLINE & ON-DEMANDでの腹部領域のトピックス』

岐阜大学 放射線科 野田佳史先生

現地シカゴでのRSNA参加は2019年が最後であり、ここ2年はオンライン参加となっている。2019年当時はボストンのMassachusetts General Hospital (MGH)に留学中であり、ボストン-シカゴ間のわずか1時間の時差に、例年の狂いに狂った体内時計とは全く異なる快適さを覚えていた。また、半年以上振りに会う日本の仲間との再会を楽しみに、普段とは違う高揚感を抱いていたことを覚えている。
COVID-19の感染状況であるが、RSNAの演題採択通知を受け取った初夏の時点で少し下火であったため、これならば…、とも思ったが帰国後の隔離期間短縮が期待できなかったため現地参加を断念した。夏場の感染爆発を経て、現在(2021年12月3日)の日本は季節性感冒患者より圧倒的にCOVID-19感染者が少ないのではとも思わせる状況である。しかしお隣韓国やヨーロッパ諸国では過去最高の感染者数を記録し、新たな変異株も確認されるなど、世界の情勢は日本と全く異なる。そんな中、RSNAの2週間前には、WhatsApp(日本でいうLINE)に1通の通知が来た。留学当時一緒に研究をしていたドイツ人のResearch FellowがRSNA後、ボストンに寄るとのことで(おいおい、、今のドイツから行くのはやめておいた方がいいのでは。。)、Dinnerのお誘いである。まだボストンにいるFellow達は当然参加の意思を表明するが、私は行けないのでそのやりとりを恨めしそうに眺めるだけであった。直接会うことは叶わなくとも、学会のプログラムから彼らの名前を見つけると、みんな頑張っているなと刺激を受ける。現地参加をしているボスや仲間達の勇姿も、暗くそして小さい画面ながらも確認でき、懐かしく思う。彼らの研究成果も含め、腹部領域、とりわけ肝胆膵領域のOral sessionを中心に確認したが、筆者自身の研究内容や関心から報告する内容に偏りがあることを予めご了承いただきたい。
やはりと言うべきか、AI、Deep Learning、Radiomicsといった昨今の放射線学会でよく目にする単語を含む演題が目立つ。数年前のRSNAでは主流とも思えたQuantitative ImagingやTexture Analysisはほとんど見られず、Gastrointestinal (Quantitative Imaging Techniques) (Session ID: SSGI11)のセッションは組まれているものの、5演題中4演題に前述の3つのキーワードのいずれかを含んでいる。Texture Analysisは今やほとんどがRadiomicsに置き換わっており、今後しばらくはこの傾向が続くのだろう。ただし、我々の病院も含め一介の医師が高度なAIやDeep Learningを簡単に使いこなすことは難しく、実臨床画像から得られる新たな知見にまだ目が向いてしまう。同じDeep Learningでも画像再構成ソフトとして市販されている技術を臨床導入し、その有用性を検証した演題も比較的多く見られ、実際に日々これを使用している筆者としても興味が湧いた(Session ID: SPR-GI-22A, SPR-GI-40A, SPR-GI-23A他)。その他、定量指標としてDual-energy CTデータから簡便に得られるヨード密度値(iodine concentration; IC)にも注目したい。Radiomicsに関する研究でも大いに言えることだが、得られた結果が他の患者群でも使用できるか、いわゆる”Validation”が定量指標においては重要である。我々も過去に膵癌のヨード密度値と化学療法治療効果との関連について報告したことがあるが、この研究のLimitationの1つに、異なるDual-energy CT装置で検討を行っていないことが挙げられる。Dual-energy技術には大きく分けて3つの手法が知られているが、この3つのCT装置全てでDual-energy撮影をされている“同一患者”を収集すること自体が極めて困難である。しかし、合計23台のCT装置を有するMGHではなんとこれができてしまう。門脈相像において肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓、大動脈、門脈といった腹部臓器や大血管のヨード密度値を計測すると、腎臓と大動脈以外でCT装置間に有意差を認めた。しかし、これらの計測部位の総ヨード密度値で標準化したNICALLでは肝臓では誤差が残存するものの、膵臓も含め全体として誤差が改善した (Session ID: SSGI12-5)。この非常に有益な情報をもたらしてくれる本研究は、あのボストンに寄るというドイツ人Fellowによるものである。
以上、本稿では誌面に限りがあるためほんの一部分しか紹介できていない。実際、これからオンデマンドでチェックする予定の演題がまだたくさん残っている。会期が終了した後も自分のペースで演題を確認できるのはWebならではであり、今後もWebもしくはHybrid開催のリクエストは多いだろう。ただし、現地参加してこそ得られるものも数多いと感じるため、個人的には現地に足を運びたい。WhatsAppのグループトーク内で“I’m in!!”とDinnerに行く意思表示ができる日を心待ちにしている。

写真:Refresher Course (Pancreatic Tumor Imaging)の一コマ。PresenterはMGH留学中のボス。私の書いた論文を紹介してくれている。

写真: Research Fellow達とのDinner。COVID-19感染が増えつつあり、帰国前に集まれるのはこれが最後かもねと言っていた頃。ちなみに左の前から2番目が文中に登場するドイツ人の仲間。

『RSNA2021 on Web レポート』

山形大学医学部放射線医学講座 鹿戸将史先生

11月の終わりから12月の初めにかけては、例年次年度の人事に向けて、いろいろと考えなくてはならないことがとても多く、とても気忙しい。例年の北米放射線学会(以下、RSNA)はそんな医局運営のイヤなソワソワ感の中、開催されている感じがする。そして、この時期は身体が寒さにまだ慣れておらず、体調も崩しがち。一昨年は、RSNAに参加直前で体調を崩し、あえなく断念。昨年は、ご存知の通り、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により完全オンライン開催。そして、今年のRSNAは2年ぶりの現地開催となったものの、ハイブリット開催。私はやはり欧米のコロナ感染の動向が気掛かりで、行きたい気持ちはあったのだが、オンライン参加を選択せざるを得なかった。
RSNAでリリースされる新技術や機器が多いので、どうしても注目せざるを得ない。昨年同様に、主なトピックはAIとコロナといった様相。それもそのはず、AIはもはや様々な分野で導入されており、医療だけの話ではない。新たなモダリティと言えなくもない。また、コロナも発生からほぼ2年が経とうとしている。これを執筆している2021年12月初めは、国内のコロナ感染も下火になったものの、3、4ヶ月前を遡れば、オリンピック下で大流行しており医療従事者は毎日緊迫した状況下にあった。新たな変異株(オミクロン株)が南アフリカで発見され、連日トップで報道されている。そして、いつ新たな感染の波が押し寄せるか世界は戦々恐々としている。これらを考えれば、当分の間はコロナが話題の中心になることは致し方ない。そんな今年のRSNAで聴いたセッションのうち、いくつかを紹介する。
1.  Cardiovascular Imaging Manifestations of COVID-19: What the Radiologist Needs to Know
COVID-19は肺炎だけでなく、微小血栓を形成しさまざまな合併症を引き起こす。本講演はCOVID-19に起因する血管病変について、脳血管障害、肺動脈血栓塞栓症、冠動脈疾患、心筋炎などについて放射線科医が知っておくべき知見や超音波、CTおよびMRIの画像所見について解説された。
2. Imaging Gliomas: The Good, Bad and Ugly
脳腫瘍の画像診断に関する教育講演。病理組織、診断におけるキー所見、画像フォロー、Radiomicsなどについて詳説された。中でも2021年に改訂された脳腫瘍のWHO分類におけるグリオーマの分類の変更点について簡潔かつ分かりやすく解説されている。
3. PET/MR Update 2021 
最新のPET/MRに関するセッション。残念ながら私が所属する施設にはPET/MRはないので、実際の画像を見てみたいのと同時に、臨床にどれほど寄与できるか興味があった。中枢神経系や頭頸部領域では、詳細な形態と代謝の情報がOne stopで得られる利点があるのは、そうだなと思っていたが、肺癌などのステージングなどかなり正確に行えるのは興味深かった。問題はウチのような施設に導入した時の、検査スループットが問題かなと感じた。
4. Physical Characteristics Of A New Photon-counting Detector CT: Comparison Of The Spatial Resolution With That On Conventional Energy-integrated Detector CT Scans
話題のPhoton-counting CT(PCT)の演題。日本からの報告。PCTは被曝低減を図りながら、従来よりかなり高分解能な画像が取得出来ることが期待されている。実際の画像を見てみたくて期待していた。0.3mmのファントムが非常に明瞭に描出されていた。その他、臨床使用した画像に関する報告もいくつかあったが、提示されている画像はまだ少なめといった感じ。問題は価格だと思う。Dual-energy CTの時もそうだったように、価格が落ち着くまで時間を要するかもしれない。
オンラインの学会参加は長距離の移動の手間もなく、非常に便利なものである。コロナが生み出した、怪我の功名のようなものかもしれない。この方法は今後定着するだろう。一方、日本時間では夜遅くや早朝のセッションがほとんどのため、オンデマンド配信されていないセッションは仕事の都合や起きられなかったりして(後者がほとんどだが)、聞き逃したものもある。現地参加だと当地の時間で参加できるので、聴きたいものを聴き逃さないという点では現地参加の方が良いのかもしれない。開催前は国内のコロナの状況が落ち着いて、シカゴに行ってもよかったかなと思ったが、開催中に新型株・オミクロン株が発生し、外国人の入国が規制された。そして、国内でもオミクロン株が発見された。海外学会に安心して現地に赴くことができるようになるのもまだ先なのかなと思うのだった。

 

 

『RSNA2021のvirtual参加記』

埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科 馬場康貴先生

最初に
本年も昨年に引き続き世界的なCoronavirus感染拡大の折に開かれたRSNA2021であったが、直近の本邦及び米国では
感染者数の軽減もあり現地開催であった。しかしながら、直前のOmicron株の広がりで再度出入国が危ぶまれる状況であり混沌とした状況に変わりはなかった(2021年12月初旬時点)。以前の盛り上がりを伴った来年度開催を祈念してvirtual参加であるが本年度の発表から個人的に興味のあるテーマにて報告させていただく。
Interventional Radiology
Interventional Pre-recorded Scientific Paper: Development Of A Computed Tomography-based Radiomics Nomogram For Prediction Of Transarterial Chemoembolization Refractoriness In Hepatocellular Carcinoma
Session ID: SPR-IR-5A
Speaker(s):Xiangke Niu, MD,MS
目的:TACE不応の治療前予測のために、コンピューター断層撮影(CT)ベースのラジオミクスノモグラムを開発および検証を行う。
方法と材料:この後ろ向き研究は、2009年3月から2016年3月までTACEを繰り返し受けた臨床的/病理学的にHCCが確認された患者のトレーニングデータセット(n = 137)と外部検証データセット(n = 81)で構成された。動脈相の術前CT画像から遡及的に抽出。前処理ラジオミクスシグネチャは、最小絶対収縮および選択演算子Cox回帰分析を使用して生成された。臨床的危険因子とラジオミクスシグネチャを組み込んだCTベースのラジオミクスノモグラムが作成され、検量線と決定曲線分析によって検証された。 CTベースのラジオミクスノモグラムの有用性は、カプランマイヤー曲線分析によって評価された。一致指数を使用して、ラジオミクスノモグラムと他の4つのモデルとの直接比較を行った。すべての分析は、個々の予後または診断ステートメントの多変数予測モデルの透過的なレポートに従って実施された。
結果:TACEセッション数の中央値は両方で4(範囲、3〜7)であった。ラジオミクスシグネチャを構築するために、869の候補特徴量から8つのラジオミクス特徴量が選択された。 CTベースのラジオミクスノモグラムには、ラジオミクススコア(ハザード比= 3.9、95%信頼区間:3.1-8.8、P <0.001)と4つの臨床的要因が含まれ、患者を高リスク(スコア> 3.5)と低リスク(スコア≤3.5)において予後が著しく異なった(全生存期間:12.3カ月対23.6カ月、P <0.001)。ノモグラムの精度は、他の4つのモデルよりもかなり高かった。検量線と決定曲線の分析により、臨床診療におけるCTベースのラジオミクスノモグラムの有用性が実証された。
結論:新しく構築されたCTベースのラジオミクスノモグラムは、TACE不応性の治療前予測に使用でき、さらなるTACE治療に関する意思決定のためのより良い指針を提供する可能性がある。
臨床的関連性:この研究の主な知見は、コンピューター断層撮影(CT)ベースのラジオミクスノモグラムを使用して、TACEの最初のセッションの前に患者の不応期を個別に予測できることである。CTベースのラジオミクスノモグラムは、TACEによって繰り返し治療される患者の臨床的意思決定を改善し、最終的にはこれらの患者の全生存期間を改善する機会を提供する可能性がある。
コメント:個人的にTACE不能の定義があまり明確でない現在の状況において、一度開始したTACEを繰り返すことが予後改善に意味があるのかの臨床的疑問を人工知能に検証させた点が非常に興味深い。我々も過去に再起型ニューラルネットワークを用いた予後予測の発表を行ったが、特徴量は画像を用いずに一回目のTACEの効果判定を含めたTab dataのみであった。本発表のTACEを行う前に予後予測可能な点は少し違和感を覚えるが、再度画像的特徴量を盛り込んだ検証を行いたいと考えた。

Machine Learning-based Radiomic Features On Pre-ablation MRI As Predictors Of Pathologic Response In Patients With Hepatocellular Carcinoma (HCC) Who Underwent Hepatic Transplant
Session ID: SDP-IR-21
Speakers(s): Azadeh Tabari
目的:この研究の目的は、アブレーション前のMRIラジオミクスを使用して、HCC患者のアブレーション療法に対する反応を予測する機械学習モデルを開発することである。
方法と材料:後ろ向き研究はIRBによって承認された。 2005年から2015年にかけて、肝移植を受けたHCC患者97人が特定された。アブレーション前の3か月以内に実行された造影MRIを使用して、合計112の放射線学的特徴(形状、一次、およびテクスチャ)が各腫瘍から抽出された。病理学的反応は肝移植標本で決定された。データセットは、20%のホールドアウト検証に基づいて、トレーニングコホートとテストコホートにランダムに分割された。カーネルナイーブベイズモデルは、特徴選択に最小冗長最大関連性(mRMR)を使用して開発した。最終モデルには、mRMRに基づく上位46の機能が含まれ、パフォーマンスは20%ホールドアウト検証コホートでテストされた。単変量ロジスティック回帰(UVR)およびROC分析を使用して、治療反応を予測する際の統計的に有意な特徴を決定した。
結果:97人の患者(117の腫瘍、31(32%)のマイクロ波焼灼、66(68%)の高周波焼灼)が含まれていた。末期肝疾患(MELD)スコアの平均モデルは10.5±3だった。平均追跡期間は336.2±179日だった。患者の38%は、移植時の病理学レビューで完全な病理学的反応(CR)を示さなかった。 2つの一次および2つのGLRM機能は、UVR分析での不完全な病理学的反応と関連していた(P <0.05)。上位46の機械学習機能を含む最終的な機械学習モデルは、不完全な病理学的応答を予測し、最高のAUCは0.77、感度は100%、特異度は69%であった。
結論:機械学習でMRIラジオミクスを使用すると、肝移植を受けたHCC患者のアブレーション療法に対する病理学的反応を予測する能力が向上する可能性がある。
臨床的関連性:機械学習ベースのラジオミクス機能分析は、予測モデルを提供し、肝移植にリストされたHCC患者のアブレーション前のMRI画像と病理学的反応との関連を非侵襲的に調査できる。これにより、患者の治療をパーソナライズし、アブレーション療法の恩恵を受ける人を予測することができる。
コメント:前記と同様に個別化治療の流れはテクニックだけに陥りがちなInterventional Radiologyにおいても主流となりつつあることを感じた。Texture解析の多数の特徴量を次元削減することでなく本当に意味のある特徴量のみの抽出に
Minimum-Redundancy-Maximum-Relevance (mRMR)という方法を用いる点が興味深く、早速実装してみたいと思われた。

 

『RSNA2021 Topics:心臓領域』

長崎大学病院 放射線科 末吉英純先生

2021 RSNAは昨年に続き、新型コロナウイルスの影響により、webにての参加となりました。今回は、”(Session ID: SSCA04)Cardiac Imaging in the COVID Pandemic/Artificial Intelligence in Coronary CT Imaging”からの演題をいくつか紹介したいと思います。このセッションでは新型コロナウイルスとCoronary CT ImagingにおけるAIに関する演題を扱っており、今、非常にHotなテーマと思います。演題の要旨を記載しますが、詳しくは原文の抄録を参照ください。
まずはCOVID-19関連の演題を2題紹介します。
Session ID: SSCA04-1. Cardiac MRI In Patients With Prolonged Cardiorespiratory Symptoms After Uncomplicated COVID-19 Infection.
要旨: COVID-19感染後に慢性COVID-19症候群(CCS)を発症し,疲労感や労作性呼吸困難などの症状を呈する症例が増えている。本研究の目的は、これまで健康であった人がこのような不定愁訴を起こす根本的な原因として、CCSと心筋の損傷および炎症との関係を心臓MRIで探ることである。結論としてCOVID-19感染後にCCS症状が持続している者において、心臓MRIでactiveな心筋炎の兆候は認められなかった。それ故、心臓MRIをCCSのスクリーニングツールとして使用すべきとは考えられない。
Session ID: SSCA04-4. Evaluation For Potential Cardiac Involvement In Athletes Recovering From COVID-19 Infection With Cardiac Magnetic Resonance Imaging- Should Cardiac Magnetic Resonance Imaging Be Used As A Screening Tool?
要旨:心筋炎はスポーツ選手の心臓突然死の原因として知られており、COVID-19感染から回復した大学スポーツ選手には、心臓MRIで検出可能な心血管系の病変がある可能性が示されている。しかし,COVID-19感染から回復した健康なアスリートが,競技に復帰する前に心臓MRIでスクリーニングを行うことの有用性については,まだコンセンサスが得られていない.この研究の目的は、COVID-19感染から回復した大学選手の集団における心臓病変の心臓MRI所見の有病率を説明することである。結論としてCOVID-19感染から回復した学生アスリートにおいて、急性心筋炎(1.8%)および急性心膜炎(0.9%)の有病率は低かった。 それ故、COVID-19に感染した学生スポーツ選手に心臓MRIをスクリーニングツールとして定期的に使用することは、この集団における有病率が低いことから、議論の余地があると考えられる。
コメント:いずれの演題も心臓MRIで心筋評価することに関しては否定的な結論ではありました。しかし心臓MRI にてCOVID-19に感染した患者の心筋損傷と心筋炎が最近の論文で報告されていることは認識しておくべきと思われます。

次は冠動脈CTAのAIに関する報告です。
Session ID: SSCA10-3. Feasibility And Diagnostic Performance Of A New CCTA-derived And AI-based Fully Automated System For Detection Of Coronary Artery Disease
要旨:Coronary Artery Disease Reporting & Data System (CAD-RADS)を用いた冠動脈の自動セグメント化と狭窄度評価のための、冠動脈CTA(CCTA)の完全に自動化された人工知能(AI)ベースの新規ソフトウェアを評価する。2人の読影医が、18冠動脈セグメントモデルを用いてセグメントごとに冠動脈の狭窄度を評価し、SCCTのガイドラインに沿ってCAD-RADS分類を行った。シーメンス社が開発したAIベースの完全自動化ソフトウェアプロトタイプを、CCTAデータセットでテストし、人間による読影と比較した。読影者間の一致は、Cohen’s kappaを用いて評価した。
CAD-RADSの専門家間の一致率は0.83、病変部の同定は0.89であった。プロトタイプのソフトウェアは,病変部の検出において,感度97.6%(92.8-100),陰性予測値96.9%(90.8-100)を示した.ソフトウェアプロトタイプの平均計算時間は、1症例につき240秒であった。AIベースの完全自動化された研究用ソフトウェアプロトタイプは、CCTAで冠動脈狭窄を有する患者を高い診断精度で迅速かつ確実に識別することができた。AIを用いた完全自動の冠動脈セグメンテーションと狭窄検出は、より時間的に効率の良い方法で診断精度を向上させるために有用であると考えられる。
コメント: 特にAIはこのような単純な冠動脈の自動セグメント化と狭窄度評価は得意分野かもしれません。しかも高速で可能であり、読影支援システムとして非常に有用と思われ、発売されれば是非使ってみたいと思うソフトです。このようにAI領域は放射線科医をうまくサポートしてくれる方向にさらに進んでいって欲しいものです。
最後に:今回もシカゴに行くことはできなかったが、やはり現地で参加することによって得られる情報量との差は非常に大きく、来年こそは現地で参加したいと思います。

写真1. シカゴ市のミレニアムパークのクリスマスツリー。RSNA期間に見ることができる。

写真2. 以前のRSNA会場写真

 

『コロナ禍におけるRSNA2021 レポート~胸部領域を中心に~』

広島大学 放射線診断学 福本 航先生

RSNAは私にとって、最も刺激的な学会のひとつであり、これが終わることによって1年の締め括りを迎えることが恒例であった。しかし、このコロナ禍において、昨年のRSNAはオンライン開催となり、現地での参加はできず、少々寂しい気持ちで年末を迎えることになった。
今年もCOVID-19の終息には至らず、現地とオンラインのハイブリッド開催である。演題登録時点では、感染状況の先行きは不透明であり、オンライン参加を余儀なくされた。
オンライン参加では、自分の好きな時間に、好きなセッションを、自由に視聴できる点が最大のメリットである。また、分かりにくかった点などを繰り返し視聴することも可能であり、理解を深めることができる。本報告では、私が興味を持った研究や発表について、胸部領域を中心に紹介する。
まずは、世界で猛威を振るっているCOVID-19に関する研究について報告する。COVID-19のセッションでは、CTを用いたCOVID-19患者に対するリスク評価や予後予測に関する研究が発表されていた。CTによるCOVID-19肺炎の広がりや陰影性状の評価と血漿中サイトカイン値を組み合わせることにより、COVID-19肺炎の重症度や予後予測に有用であったと報告されていた。また、CTでの脂肪肝やサルコペニアの評価や肺動脈幹径の測定もCOVID-19肺炎の重症度や死亡率に関連があったと発表されていた。これまでもCTを用いたCOVID-19患者に対するリスク評価や予後予測について多くの研究が発表されているが、各々がバラバラのデータや方法によって行われており、統一した評価方法が存在しない点が最大の問題点であると私は感じている。今後のCOVID-19の感染状況については、予測困難ではあるが、統一されたCTによるCOVID-19患者の重症度分類や予後予測の確立が今後の課題であると思われる。
続いて、次世代のCTとして期待が寄せられているフォトンカウンティングCTに関する研究について、MAYO ClinicのInoue先生より大変興味深い発表があったので報告したい。間質性肺疾患が疑われる患者30名に対して、フォトンカウンティングCTと従来CTの2回撮影を行い、放射線診断科医による読影実験を行った。フォトンカウンティングCTでは、網状影やGGO、モザイクパターンに対する診断的信頼度が向上し、通常型間質性肺炎の診断能向上に寄与する可能性があると報告されていた。提示されたフォトンカウンティングCT画像は空間分解能が非常に高く、良好な画質であると感じた。今後の研究の発展や日常臨床への応用が期待される。このような世界の最先端の研究発表が聞けるのもRSNAの醍醐味である。
ポスターセッションでは、私の研究課題のひとつである胸部CTにおけるDeep learning Image Reconstruction(DLIR)の画質評価について着目した。韓国からの報告では、超低線量CT(0.22-0.49mSv)と低線量CT(3mSv)をDLIRで再構成し、主観的、客観的画質評価および結節の検出率について比較した。SNRには有意差はみられず、結節の検出能については超低線量CTの方が僅かに低かったものの、結節のサイズ測定の差は許容範囲であったと報告されていた。特に、頻回の経過観察が必要な場合には、超低線量CTでの経過観察が考慮されると結論付けていた。提示されていた画像を見る限り、超低線量CT画像は、放射線被曝が胸部単純X線写真と同等もしくはそれ以下であることを考慮すると、比較的良好な画質であると感じた。CTの線量をどの程度まで低減するべきかについては、今後議論するべき必要はあるが、超低線量CTの将来性を感じる研究であった。
RSNAへのオンライン参加は、移動がなく、低コストで参加でき、好きなセッションを自由に落ち着いて、繰り返し視聴できるため、研究や発表について内容を深く理解する点においては、現地参加よりメリットがあると感じた。しかし、RSNA特有の臨場感に乏しい点が唯一のデメリットかもしれない。私が初めてRSNAに参加した際は、世界中からの大人数の参加や巨大な会場に圧倒され、発表する際も非常に緊張したが、振り返ってみると大変良い経験となった。また、最先端の研究を肌身で感じることができ、モチベーションの向上にも繋がった。このような貴重な体験は現地参加でしか味わえないものと思われる。来年こそは、コロナが終息し、現地参加できることを期待したい。

RSNA2019に参加した際に行ったNBA観戦時の写真である。本場のバスケットボールを体感することができた。現地参加された際には是非お勧めしたい。

 

2021/06/01(火)

『ISMRM 2021 Congress Cardiovascular Topics』

東京女子医科大学 画像診断・核医学講座 長尾充展先生

はじめに
東京女子医科大学は、世界でもトップレベルの心臓病治療施設として、広く患者が集まる施設であり、わが国における循環器臨床のパイオニアとして先導的役割を担ってきた。心臓MRIは、血流量や心筋マッピングという独自の評価を含めた包括的画像診断として臨床的ニーズがあり、年間約300件の心臓MRIを実施している。臨床とともに革新的研究を牽引するために、医師と診療放射線技師、装置メーカーで定期的なリサーチミーティングを実施し、最新技術の提案を受けている。診療放射線技師にとって、ISMRMに参加することが大きなモチベーションとなり、それをサポートすることが最終的に撮影技術向上に結びつき臨床にも生かされていると実感している。ISMRM 2021ではCardiovascular部門を中心に合計11演題が採択され、国内での採択演題数はトップクラスである。

Cardiovascular Topics
ISMRM 2021ではCardiovascular部門として、MR angiography, Flow, Machine learning, & Tissue characterizationと4つの分野に分けられそれぞれ約50演題が登録されている。T1, T2, T2* mappingは、多様な心筋内因性の情報を提供し、心筋線維化はもとより炎症や代謝などの病態解明に重要な役割を果たしている。ISMRM 2021では、creatine chemical exchange saturation transfer (CEST) imaging, T1 rho mapping, & Intravoxel Incoherent Motion (IVIM) Diffusion-weighted MR Imagingなど従来心拍動や呼吸性移動で不可能とされてきたシークエンスが、Tissue characterizationのアプローチとして報告されている。IVIMでは、真の拡散係数Dと灌流を反映するD*算出のため複数のb値設定が必要とされ、DとD* の精度に影響する。心筋肥大があり、心筋の関心領域設定に再現性が高い心臓アミロイドーシスでの有用性が複数報告されている。さらに心筋T1, T2 mappingへのFinger printing技術の応用が試みられ今後大いに期待される。
4D flow MRIは血管内に置いた仮想粒子とその軌跡=流線により、血流動態を3次元+時間軸=4次元で観察可能である。複数の色の仮想粒子を設定することにより、血管内で渦巻くVortex flowが視覚化され、従来の位相コントラスト法にはないフローエナジーやwall shear stressが算出可能となる。この数年ISMRMの演題数および国際ジャーナル掲載数が増加しているトピックである。昨年までは、血流量の多い大動脈・肺動脈の大血管が解析対象であったが、今年は心室、心房、弁機能を対象とする演題も増加している。流速が低下し、大血管や心構造が重なる心腔内フローはVENCを低く設定し、血流シグナルの増加とノイズ低減を低減させる必要がある。これらを可能とするMulti-VENC設定やFree-breathを含めた高速撮影法の進歩や4Dフローソフトウエアの開発も数多く報告されている。我々は、末梢循環に関して、脈波同期と関節用コイルを使って手足末梢の動静脈フローイメージングにも着手し、本学会において報告した (図1)。撮影時間は3分程度。腎不全患者に多い下肢動脈閉塞患者において、非造影である本法は治療方針の決定に有用な情報と期待される。

おわりに
2021年マスターズゴルフ王者の松山英樹選手が現在アメリカ東海岸で全米プロゴルフ選手権を戦っている。同郷で彼の熱烈なファンである私は、深夜からテレビ観戦しており、画面では観衆のほとんどはマスク無し、ビール片手に”Go Hideki!” と歓声を上げている。バンクーバーで開催予定であったISMRM 2021は、早々にonline変更となったが、今後早期に国際学会も従来通りの参加を期待させるアメリカの現状である(図2)。


図1:Non-contrast high-resolution 4D-peripheral MRA using retrospective echo planar imaging


図2: ISMRM 2018 Paris. ルーブル美術館屋上から著者本人

 

『“ISMRM 2021 -an Online Experience-”に参加して』

九州大学大学院医学研究院分子イメージング・診断学講座 栂尾 理先生

2021年のISMRMはバンクーバーで行われる予定でしたが、COVID-19のため昨年に引き続きWeb開催となりました。この学会は世界のいろいろな都市で開催される点が大きな魅力で、私も2008年のトロントでの初参加からほぼ毎年この学会に参加しており、各都市の良い思い出がありますので、現地に行けないのは大変残念でした。Web学会のメリット・デメリットはほぼ皆さんが思っておられる通りだと思いますが、最大のデメリットは“学会に行ってきます!”とは言えず、仕事が休めないことでしょう。読影の合間に見ても頭に入りませんし(見落としが危険です)、夜遅く疲れて帰ってきてからでは参加できる時間は限られていますのでやはり現地で没頭したいです。当然メリットもあり、今回のISMRMの学会ではHPから自分用のAgendaを作成できたり、録画やAbstractを効率よく見たりすることができました。
今年のISMRMのライブセッションでは最初の1時間は事前に録画してあるoralの発表をZoom Webinarで流し、その後の1時間はoralおよび電子ポスター発表者が5人ずつの小グループに分かれてZoom Meetingに入り”face to face”で訪れてきた参加者からの質問に答える形式でした。昨年私はoral発表でしたがlive sessionはなく動画も流されず、Zoomに大人数の発表者が集められて1人1-2分間ずつ座長からの質問に答えるだけという簡略化されたものでしたのでしたので、今年は環境が改善されていると感じました。今年私は電子ポスターの発表でしたが小グループのZoomに入るとなんと他の4人の発表者は誰もおらず、わざわざ彼らへの質問まで考えていた私はいったい‥とダメージをうけました。やはり時差の問題やWeb開催のためモチベーションが下がっている面もあるのでしょう。 Gamificationとして、録画を見たりZoomグループ会議に参加したりするごとにポイントが貰えて、例えばランキング1位の方は来年の参加費がタダになる、などという参加を促す試みも行われていました。
さて、今回のISMRM全体を通して目立ったのは”Contrast Mechanism”というカテゴリーでした。ISMRMではNeuro、Body、Cardiacなどカテゴリー分けしてプログラムが構成されます。その中の1つが”Contrast Mechanism”なのですが、昨年は3枠しかこのカテゴリーがプログラムに入っていなかったのに対して、今年は13枠あり、加えてプレナリーセッションでも紹介されていました。CEST、MT、T1rho、T1、T2など、より分子レベルの物理現象に関連したコントラストメカニズムがフォーカスされていました。プレナリーでは九大からのCESTの研究も紹介されており、感慨深いものがありました。
それ以外にはやはりCOVID-19とAI関係の演題、セッションが目立ちました。“MRI in COVID-19”というセッションの教育講演(E5964)ではCOVIDの色々なパターンの脳のMRI所見についてわかりやすくまとめてあり、断片的にしかかじったことのない私は大変勉強になりました。Advance imagingを用いてCOVID-19患者の脳における変化を評価した研究も目立ち、ASL(0217)、QSM(0218), MRS(1744)で検討した研究、さらにはDTI, SWI, QSM, rsfMRI, MT、ASLなどあらゆる手法を駆使して評価した研究(1742)などがありました。
新しい高速化の動向としてはPhilipsシンポジウムで高速化技術のさらなる改良に関する紹介がありました。現状の高速化技術Compressed-SENSEの折返し展開ループの中にAIを組み込むことで、展開精度やノイズ低減効果を高め、さらなる高速化を実現するという内容です。Parallel Imagingなどの画像再構成が終了した後に、後処理としてノイズ軽減やアーチファクト抑制のためにAIを活用するという試みとは異なり、現在の高速化のフレームの中にAIを組み込んでさらなる高速化を実現する方向性がユニークな点となります。また、AIだけではなく、Compressed-SENSEをCartesianだけではなくRadialなどのNon-Cartesian Samplingにも拡張する試みも紹介されました。Radial系のサンプリング技術は動きの影響を軽減するという長所がある一方、k空間のサンプリング数が多くなり撮像時間が延長するという弱点があります。そのようなRadial系のサンプリングにCompressed-SENSEが応用できることで、短い撮像時間で高画質かつ動きに強い検査を実現することが可能になるとの紹介で、将来のルーチン検査のスキャンテクニックが変わっていく、例えばMultiVaneなど動き補正を用いたルーチン検査が、状態の悪い患者様限定ではなくルーチンとして使用されていく可能性を感じました。
個人的に興味のあるASLの動向ですが、プログラムの中で“Tutorial”というカテゴリーがあり、その中のセッションの1つに” Hands-On Analysis of Physiological MRI: ASL MRI I”というものがありました。定員に達して参加はできなかったのですが概要説明プレゼンでは、ASLのフリー解析ソフト“Quantiphyse”の紹介がありました。後処理も含めたASLの標準化を進めていこうというスタディグループの意向がでたものと理解しました。その処理ソフトでは、現在九州大学でも取り組んでいるダイナミックASLの解析がスタンダートとして入っており、今後のASLの標準化の1つのテーマがダイナミック情報の取得であると感じました。その他の教育セッションや一般セッションでもASLによるダイナミック情報の取得をテーマにした発表が散見されました。ATTに応じたマルチPLDの最適化(2715)、バスキュラーコンポーネントを含めたモデル式による定量(2718)などがありましたが、ダイナミック情報(ATT)を臨床に関連付けた報告としては、聴講した限りATTをMS患者の診断に用いようとする(MS患者ではラベル到達時間が延長する)教育セッションのプレゼンだけでした。もう1つのASLの方向性として、b=50程度のバイポーラ傾斜磁場を加えて毛細血管レベルの信号を消し、組織に到達したラベルスピンからの信号だけを取り出すことにより、BBBの交換速度を求める(470)、ASLをLong TEで撮像することによって、CSFに漏れ出したラベルスピン信号だけを収集し、血管あるいは組織からCSFへのスピンの漏れ出しの状態を把握する(471)など、ラベルされたスピンがBBBなどを介して血管の外に出る現象を捉えることで機能情報を得ようというものがありました。neurofluidは最近のトピックであり、そこにASLという技術をプローブの1つとして利用していこうというトライが活発になっていると思われます。また、九州大学とPhilipsで開発を行った4D-S-PACKをSuperselective-pCASL Perfusionを組み合わせることで、局所Perfusionとその領域を支配する血管の血流動態を把握しようという試みが、ミュンヘン工科大学から発表されていました。造影Perfusionで血流遅延が認められる領域と、そこを支配する血管の血流動態を視覚化して関連性を把握するなど、今までにない新しい情報提供の可能性が紹介されていました。
最後になりましたが、来年こそはロンドンで開催されるISMRMに現地参加できるよう、COVID-19が一刻でも早く収束することを祈念します。

ISMRM 2017ハワイ・コンベンションセンター

留学時代の友人と再会

 

『Congress Topics Report in ISMRM2021(Liver & COVID-19)』

信州大学医学部画像医学教室 山田 哲先生

2021年の ISMRM は新型コロナウイルスのパンデミックのため、完全オンラインではありながら、毎年恒例のスケジュールでライブ配信が土曜日(5/15)の教育講演を皮切りに5/20までの6日間行われ、6/1までオンデマンド配信が行われている。このレポートではLiver領域のトピックスに加え、特設セッションも設けられ人々の関心の高さが現れていたISMRMならではのCOVID-19関連演題についてもレビューしたい。
Liver 領域おける主なトピックスは、1)新技術を用いた撮像高速化と画質改善、2)multi-parametric MR imagingによる新たな imaging biomarker の探索の2点に大別されるように感じた。 1)の撮像高速化と画質改善については、DWI撮像と深層学習(演題番号:0315)、radialサンプリング(0316, 0318)、CINE画像を用いた同期法(0317)を組み合わせたもの、DCE-MRIとradialサンプリング(0320)および深層学習を組み合わせたもの(0529)、さらには自由呼吸下にfingerprinting(0478)・PDFF(0753)・T1mapping(0754)を得るものなど、より精度の高いmulti-parametric MR imaging の実現に向けて様々な新技術が応用されていることが感じられた。一方、2)の新たなimaging biomarkerの探索については、ASL、 perfusion imagingについての系統的な教育講演(E5824, E5826, E5827)に加え、今後肝代謝解析への応用も期待されるhyperpolarized 13C-pyruvate MR imagingによる血流解析(0319)、肝線維化評価におけるmacromolecular proton fraction(0314)、quantitative susceptibility mapのテクスチャ解析(0535)などの新技術の応用が報告されていた。また肝細胞癌の早期発見(0314)や早期再発予測(0535)に深層学習やradiomics解析を応用した報告があった。しかしながら、やはり現在最も関心の高い対象疾患はNASH/NAFLDであり、肝硬度(stiffness)を用いた免疫療法の治療効果判定(0035)、アルコール性肝疾患の予後予測(0036)、肝硬度の計測におけるPDFFの影響(0034)についての報告があった。さらに、3D-MREやmulti-frequency MREを用いて得られる粘性(viscosity)を用いた線維化診断(0033)や、粘性増加の原因が組織の血管構築の変化によることを明らかにする基礎的検討(0027)、MREで得られる様々なimaging biomarkerについての包括的な教育講演(E5818)など充実した内容であった。一方、PDFFなどMRIが得意とする脂肪定量の分野においても、二型糖尿病患者の脂肪肝評価における有用性が改めて示されたこと(0253)やPDFFとMREおよびT1mappingを組み合わせたNASHスクリーニングの有用性(0311)などが報告されていた。さらに、脂肪定量についての教育講演(E5702)では脂肪肝と腹腔内脂肪量の関係性から虚血性心疾患リスクの推定が可能であること、NAFLDでは筋肉量と筋肉内脂肪含有量のバランスが崩れることなどが解説されており、脂肪定量の対象を単一臓器に限定せず、全身臓器に目を向けることの重要性について改めて認識させられた。
COVID-19関連の報告については、「いかにパンデミックの状況下において必要な患者にMRIを安全に施行するか?」ということが大きな命題として挙げられており、検査時間を短縮したabbreviated MRプロトコールの重要性(E6047)やPoint-of-care MR imagingいわゆるポータブルMRIの有用性についての報告(E6076)がなされており、パンデミック下においても着実にMR技術の進歩がなされていることを心強く感じた。
次回のISMRMは2022年5/7から5/12まで英国ロンドンで開催される予定である。一年後にはパンデミックの終息を願い、往年の対面での熱気溢れる学会開催を期待したい。

写真:ISMRM2017 in Hawaii

 

『ISMRM2021腹部骨盤領域で気になった発表』

川崎医科大学 放射線診断学 山本 亮先生

新型コロナウィルスの猛威は、当初予想していたより激しく、いまだに収束の目途が立っていない状況にあります。さらには複数の変異株の出現により、昨年にも増して予断を許さない状況が続いています。私が住んでいる岡山県にも緊急事態宣言が発令されている状況です。このような状況の中、ISMRM2021は昨年に引き続きweb開催となりました。ISMRM参加による世界各国への海外出張は私の研究のモチベーションの一つでもありますので、一刻も早い終息を願うばかりです。
今回、ゲルベCongress Topics執筆の依頼をいただき、腹部骨盤領域の演題に一通り目を通してみました。改めてMRI技術のむずかしさを痛感しましたが、良い勉強の機会になりました。おおまかな傾向や私個人の印象の紹介となりますが、多数の発表の中には私が理解できる内容のものと、そうでないものがありますので、少し偏った紹介になることをご了承ください。
肝臓では、びまん性肝疾患分野として特にNAFLDにおける脂肪沈着や線維化の定量に関する技術の発表が多数ありました。特に2型糖尿病の有無と絡めた評価が多いように感じました。肝腫瘍性病変に関しては肝細胞癌の微小血管浸潤が予後を左右する病態として注目されており、R2*やIVIM、エラストグラフィーなど様々な撮像で評価した発表が見られていました。現時点ではいずれも決定打に欠ける印象でしたが、肝細胞癌における今後の重要な研究テーマであると感じました。その他では4D flowで門脈血流を評価し、肝硬変や食道静脈瘤との関連性に関する発表も数演題認められていました。膵臓においても脂肪沈着やADC値の変化などの発表がみられましたが、2型糖尿病との関連性の発表が複数ありました。昨年までの発表内容を私が覚えていないだけかもしれませんが、今回のISMRMの発表では、2型糖尿病にかかわる発表が増えているように感じました。腹部以外の領域においても2型糖尿病に関連する発表が数多くみられ、糖尿病関連認知症患者における脳の信号変化に関する発表、糖尿病性神経障害や筋委縮をDTIなどで評価した発表、糖尿病性腎症の早期評価についてT1マッピングやBOLD、IVIMなどで評価した発表などが複数みられました。形態評価の画像診断の時代には、糖尿病、なかでも早期糖尿病といえば画像診断とは縁遠い病気でありましたが、世界的に増加傾向にあり、全身臓器にあらゆる変化をきたしてくる2型糖尿病患者の変化を評価する研究は、MRIの撮影技術の発達とともに、今後も注目され、増えていくような予感がしました。
その他、消化管に対するMRI検査では直腸癌に関する発表が多く、局所深達度の評価に加えて、化学療法の治療効果の予測に関する発表が複数ありました。治療効果の予測に関しては肝細胞癌のTACEに対するものなどもみられてました。治療効果の予測に関する研究は、非常に臨床的でわかりやすく、私個人的にも興味がもてる分野です。今後発展していく新しい画像診断分野として注目していきたいと思いました。その他消化管では食道癌の局所深達度評価や嚥下機能、逆流性食道炎の評価に関する発表があり、新しい分野で興味が持てましたが、呼吸や心拍動によるアーチファクトや空間分解能の問題など、臨床的に定着するにはまだ少しハードルがある印象がありました。その他では画質改善や撮像時間短縮に関する発表や、様々な分野でAIの技術を用いた発表が多数みられましたが、少し苦手な分野でもあり、詳細な内容は割愛させていただきます。
新型コロナが蔓延してから、かれこれ1年半以上飛行機に乗っていませんが、最近では空港の雰囲気を懐かしく感じています。来年こそは世界が新型コロナ(COVID-19)を克服し、Withコロナで得たプラス面を継承しつつ、以前のように海外学会に現地参加できることを願っております。

ISMRM2019モントリオールの街並み

 

『ISMRM & SMRT 2021トピックス』

がん研究会有明病院画像診断部 上田和彦先生

先日開催されたISMRM & SMRT 2021の概要と今後有望と思われる話題―Very- and ultra-low-field MRI―について述べる。
1) Overview
期間は5月15-20日。Onlineのみの開催であった。Day1-Day6まで24時間休みなく開催された(Day 1 UTC 7:00 AM (日本時間16:00) ― Day 6 UTC 24:00 (日本時間9 :00) 。
Demo sessions open-source softwareやHands-on tutorials はTutorialやDemo sessionが全時間帯に万遍なく配置する工夫がなされていた。後者はsmall-group teaching, 様々な時間帯で開催, オンラインサポートを特徴としたISMRM gather.townとして初となるteaching sessionとして今回の目玉とされていた。
それ以外のプログラムは開催後もアクセス可能なものが多く、反復視聴や時間が重なった複数のプログラムの視聴など、オンラインならではの利点が感じられた。
次回2022年はLondonにて5月7-12日の開催が予定されている。

2) Focus: Very- and ultra-low-field MRI
Educational sessionでは8名の演者が登壇し、Ultra-low-field MRI (< 0.01T)、Very-low-field MRI(< 0.1 T) についてのreviewと現況が紹介された。
1. Why MRI Below 100 mT? Low-Cost, Portable & Application-Specific Systems. Andrew Webb (Leiden University)
2. Breaking MRI Out of Radiology: Clinical Experience & Potential for Portable & Point-of-Care Low-Field MRI. Kevin Sheth (Yale University).
3. Contrast, Signal & Noise at Very- & Ultra-Low Versus High Field Strengths. David Lurie (University of Aberdeen).
4. Low-Field Versus High-Field Hardware: Magnets, Coils & Spectrometers. Yasuhiko Terada (筑波大学)
5. Translating Advanced Sequences & Reconstructions from High-Field to Low-Field. Neha Koonjoo (MGH).
6. SAR Is No Object: Alternative Spatial Encoding Strategies for Low-Field MRI. Gigi Galiana (Yale University).
7. More Than Just Open Magnets: Resources & Opportunities for Open-Source Hardware & Software in Low-Field MRI. Lukas Winter (Physikalisch-Technische Bundesanstalt).
8. Coil Demo: What’s Different About Low-Frequency Coils? Charlotte Sappo (Vanderbilt University).
低磁場MRIの利点は高磁場MRIと比べると低コスト、Imaging in high susceptibility、SAR低減、Gradient noiseの削減、TRを小さくできる低磁場ならではの画像コントラスト(Shorter T1、Longer T2 and T2*)で、結果として肺MRI、インプラントによるアーチファクトが小さな画像が取得可能であることの大きな魅力と、ICUでの撮像、診療所での撮像、低経済圏でのMRI普及などAccessibilityの利点がreviewされていた。一方、小さな信号/ノイズ比が低磁場MRIの大きな欠点であり、このことが普及の妨げとなっていた。しかし、高磁場装置の大幅な画質向上を推し進めた、AcquisitionとReconstructionにおける3つの技術革新―1) Precise and strong gradients (synergy with longer T2*)、2) Array receivers、3) Modern reconstructions―が低磁場MRIを“Unlike the original low field scanners”に変貌させていると述べられていた。
Scientific sessionでは1 T未満の装置についての発表が多数みられた。
翻ってすでに64 mTのPortable MRI装置が販売されており、1T未満MRIへのプルバックの予兆も感じられる現在、3つの技術革新の精度がますます向上することが期待できることから、再生された低磁場MRIは新たなモダリティとして我々の身近に登場する可能性があり、注目に値する。
*以下の図は論文より転載

図1) 64-mT MRI 商業機として販売されている。
Sheth, Kevin N et al. “Assessment of Brain Injury Using Portable, Low-Field Magnetic Resonance Imaging at the Bedside of Critically Ill Patients.” JAMA neurology, e203263. 8 Sep. 2020, doi:10.1001/jamaneurol.2020.3263

図2) 6.5mTの実験機. 機械学習を用いたReconstructionにより11分で脳の撮像が可能である。
Sarracanie, Mathieu et al. “High speed 3D overhauser-enhanced MRI using combined b-SSFP and compressed sensing.” Magnetic resonance in medicine vol. 71,2 (2014): 735-45. doi:10.1002/mrm.24705

図3) 車載0.2 T実験機
Nakagomi, Mayu et al. “Development of a small car-mounted magnetic resonance imaging system for human elbows using a 0.2 T permanent magnet.” Journal of magnetic resonance (San Diego, Calif. : 1997) vol. 304 (2019): 1-6. doi:10.1016/j.jmr.2019.04.017

 

『MRI value, CMR and Sustainable Scientific Future』

東北大学大学院医学系研究科 先進MRI共同研究講座 大田英揮先生

コロナ禍の2年目となり、オンラインでの学会構成も、徐々に変化してきているように思います。ISMRMは数年前から、proceedingsが従来のPDFの形式から、ブラウザーでの閲覧に対応した形式を採用するようになっていますが、今回はproceedingsと 動画スライド、デジタルポスター発表のリンクがうまく機能しており、発表にアクセスするのがより簡単になり、 運営側ではかなりの検討をされたようです。一方で、私自身は相変わらず日常業務の傍らでの参加しており、国内での複数の学会との重複もあったために、コロナ禍の学会参加方法には残念ながらあまり進歩がありませんでした。このため、限られた参加のなかでの学会報告となってしまいますが、どうぞよろしくお願いします。

1)MRI Value:Making MRI More Accessible: Speed, Cost & New Developments
ボストンから、神経膠腫再発と放射線壊死の鑑別にMR spectroscopy(MRS)を用いることで、コスト削減効果があるかどうかを検討した報告(Oral 741)。最近になって、米国ではMRSが条件によっては保険償還の対象になったことが背景にある。また、米国ではClinical Decision Supporting Systemが診療に取り入れられ、それぞれの症候に応じた適切な検査・手技を行わないと、保険償還されなくなってきており、無駄な検査を施行できない事情がある。そこで、MRSを再発と放射線壊死の鑑別診断に組み込むモデルを作成し、最終的に不必要な生検の頻度を減らすことによるコスト削減効果を検討した。生涯で見た場合、QALY (quality-adjusted life-years) あたり、4万ドル以上の削減効果が見込まれるという結果だった。これを元に、MRSを神経膠腫治療後の検査法として保険償還されるように訴求したいという結論であった。保険償還について、撮像法毎に細かく決められている米国とは対照的で、日本ではMRI検査の保険点数の枠組みが大雑把であり、検査の適応自体もあまり厳しくない。このような費用対効果を念頭におく検討は、国内においても今後実施していく必要がある。そうすることによって、画像診断の価値を客観的に評価することができ、なおかつ価値のある画像検査を選択して施行していくことが出来るようになると思われる。
Point-of-care MRI: point-of-careとは、ベッドサイド、患者のそばといったニュアンスのこと。MRI装置といえばハイスペックで高価、高磁場なものを連想しがちであるが、その反対方向のモバイルMRIである。大型トラックに通常の臨床機を搭載するようなモバイルではなく、ベッドサイドに持ち込めるようなサイズのものであり、頭部専用装置のようである。これらを(大型トラックではなく) ワゴン車に搭載しpopulation study、 community studyに活用するコンセプト(Oral 745)、磁場シールド外で干渉がつよい環境下での対策 (Oral 749)などが報告されていた。また、脳卒中のリハビリセンターで、まさにベッドサイドで活用するという報告もあった (Poster 3822)。画質はハイスペックのMRIには届かないが、目的を選べば画像診断に耐えうるものかもしれない。大規模病院の外におけるMRIの活用を試みる点で、今後、新たなMRIの価値を訴求できるかもしれない。
2)心臓血管領域:Parametric mappingに関する研究
2013年にNatureでMR fingerprinting (MRF)が発表されてから、多くの領域でその応用可能性について検討されてきた。心臓血管領域では、呼吸変動と心拍変動の課題があるが、それを克服してMRFを適用する試みが行われている。King’s College Londonから、息止め下の16心拍でMRFを撮像し、T1、T2及びT1rhoマップを取得する手法が報告されていた。ボランティア例のみであったが、得られた画像の画質は良好と思われる(Oral 691)。 また、MRFの心臓への臨床応用として、Cleveland Clinic から、心アミロイドーシスを対象とした研究が報告されていた。健常例と心アミロイドーシス群で、T1、T2値の群間比較および、MRFで得られる信号の時間経過 (time course)のパターンを線形判別分析した結果の群間比較を示していた。T1、T2値は何れも疾患群で優位に高値だったが、time courseの線形判別分析の方が、より両群の分別を良好に示していた(Oral 0689)。
Cedars Sinaiから、自由呼吸下で心臓全体を3Dで撮像し、同時にT1、T2、B1マップおよびシネ画像を取得する方法が報告されていた。10分未満の撮像で得られたデータからLow-rank tensor image modelという手法を用いて、T1緩和、T2緩和、心拍動、呼吸変動の関数を求めていた。心電同期は実施しておらず、連続的に取得された信号から心周期を取り出していたようである。画質は従来法とは異なっており、臨床例が撮像されている段階ではないが、さらなる技術の発展に期待したい (Oral 690)。

3) Sustainable Scientific Future in MRI:
日本時間の木曜日夜に行われた、参加者のアンケートを組み込んだとパネルディスカッションで構成されたSecret Session。前半は学会の形式をどの様に継続していくかについてのディスカッションであった。昨年の学会後の参加者アンケートでは、Hybridを望む声が多かった。パンデミックの後のHybridには、個人個人が参加する形態ではなく、サテライトを設置して地域でのin personで参加するような形態も考えられる。一方で、サテライトの形式だと地域毎に分離してしまう問題はある。今後、会の発展に向けて変わるべき部分と、従来通り変わらない部分とがあるが、少なくとも2019年以前の形式に戻ることはない。Hybrid形式は、これまでオンサイトで参加することが難しかった人達に学会参加の機会を与える点でも望ましく、さらなるcommunityの拡大につながると考えられる。
後半は、環境に配慮したsustainableな研究環境とは?というディスカッションであった。Green LabというNPO法人からパネリストが参加していた。ISMRM参加者では、Dry lab、Imaging labで働いている人が多いので、有害な化学薬品などに配慮する機会は少ないかもしれないが、いわゆる省エネを意識した環境構築は必要である。最後に視聴者が「それぞれ何が出来るか」についてリアルタイムに投稿したものを発表して take home messageとしていた。SDGsの取り組みについては、ベンダー等の取り組みに期待することの他、一人一人の心がけの積み重ねが大切であると思われる。

写真は、2018年(パリ)、2019年(モントリオール)のISMRMに参加したときのものです。筆者は時々出張に折りたたみ自転車を携行しますが、パリの街を走るのはとても爽快でした。トロントでは、発表直前の後輩の緊張をほぐすために、カフェに立ち寄ったときの一コマです。早くこのような日が戻ってくることを願います。

 

『ISMRM MR Academy & Fun Run』

東北大学大学院医学系研究科 先進MRI共同研究講座 大田英揮先生

今回の学術集会と密接にリンクしていたわけではありませんが、ISMRMのウェブサイトの中に、“MR Academy”というものが作成されています。こちらの取り組みについて、私見を含めつつ紹介したいと思います。なお、URLはこちらにあり、そのトップに目的も記載されていますので、興味のある方はご覧下さい。https://www.ismrm.org/online-education-program/
このMR Academyを立ち上げるために、昨年の初め頃からEducation committeeが構成され、私も参加する機会をいただくことになりました。今年の学会のPresidentであったDr. Leinerから、私宛にcommittee member に興味があるか?との打診があったのがきっかけで、折角の機会と思いこの活動に参加し始めました。学会活動や論文業績からは、より適任の方が沢山いらっしゃるにも拘わらず私にお鉢が回ってきた理由は、Dr. Leinerとは古くからの知り合いであったことのほか、ISMRMが取り組んでいるD&I (diversity & inclusion)の影響が強いように思います。Committee Memberを見ても、diversityが色濃く反映されているのがよくわかります。
これまで、ISMRMでは毎年初夏に行われる集会の他に、Workshop等を開催してきていました。しかしながら、コロナ禍でオンサイトで集まることが難しくなったことや、オンラインツールの発展に伴い、これまでの形式とは一線を画した形態で、教育を進めて行こうというのが、このcommitteeの目的です。ここでは、”both breadth and depth”と記載されているとおり、入門編からcutting edgeの内容まで様々な教育コンテンツを、“無料で”提供するというサービスを目指しています。現代は、各種の動画配信サイトやスライド紹介サイト、及び網羅的な記事が掲載されているようなサイトがインターネット上にあふれています。しかしながら、一部には玉石混交ともいえる内容が含まれていることがあります。MR Academy内では、実際にISMRMの教育セッション等で発表された良質な動画を厳選し、公開していくことを試みています。トピックは、Body、Cardiovascular、 Cross Cutting & Emerging Technologies、Diffusion/Perfusion/fMRI、Molecular Imaging/Spectroscopy、Musculoskeletal、 Neuroradiology、Physics & Engineeringに分かれており、それぞれで教育講演を掲載していく予定になっています(一部、掲載済み)。また、その他にも、MR Academyからの独自の情報発信として、それぞれのTopic内でいくつかのテーマを決め、独自の解説ビデオも作成中です。
ISMRMがこのような試みを始めた理由について、committee内でのやりとりからいくつか感じたことがあります(私見)。まず、第一には、このパンデミックがより強力なドライビングフォースとなった、「オンライン化」が上げられます。数あるインターネット上の情報の中でも、「MRIに関する情報はここにありき」といえるように、アクセス数を増やしてオンライン教育のイニシアチブを取っていきたいという意図があるように思います。もう一つとして、臨床医の学会参加の減少が懸念されていることがあるようです。臨床的な発表が主体となっているようなMRIの学会は、例えば私の専門領域の心臓血管領域では、SCMRやEuroCMRなどがありますし、RSNAもどちらかというと臨床よりの発表が多いです。そのような中で、基礎・技術的な研究者と臨床家のタイアップ・相互交流をより活発にしたい、それを通じて臨床医のISMRM参加を促したいと考えているようです。
ちなみに、コンテンツのYou tubeを使った無料配信については、様々な考え方があると思います。学習する側にとっては、無料で視聴できるのは歓迎ですし、それが厳選されているのであれば、なおさら素晴らしいと思われるのが大半だと思います。一方で、提供者(講演者・学会)側の立場からすると、自らの専門知識の「安売り」を是とするか非とするかは、意見が分かれるかもしれません。このようなコンテンツはビジネスとして成立しうるものでもありますし、世の中では医療のreference siteの購読料の高額化や、論文出版費・購読料の高額化などが、話題になっています。考え方もdiversityがあってよいですが、私たちの学び、および研究・臨床がsustainableであるようなモデルであって欲しいと願います。
Committee memberの人数はそれなりにいますが、まだ始まったばかりの組織であり発展途中の段階です。サイトの充実度もまだまだではありますが、動画形式での良質な講義は、やはりMRIに興味がある人達にとって貴重な学習材料になると思います。今後のコンテンツ充実にご期待下さい。

今年のISMRMでは、Yoga と Fun runがバーチャルサイトとして開設されており、私は後者に参加しました。こちらは自己申告制でタイムと距離を投稿し、写真も適宜投稿することが推奨されていました。Prizeをとることはできませんでしたが、登録サイトにあった図柄を参考にして、大学周辺で “ISMRM“を描きながら走ってみました。毎年5月に行われる仙台国際ハーフマラソンは、残念ながら2年連続中止となってしまいましたが、代わりに新緑の街中を(GPSログをつかった線引きなので、ルートのミスが起きないように気を使いながら)、気持ちよく走ることが出来ました。こんなことが出来るのも、デジタル化の恩恵です。コロナ禍はまだ継続しますが、皆様も健康に気をつけながら適宜 relax の時間をお楽しみ下さいませ。

写真1.Route ISMRM in Sendai


写真2.仙台の新緑

2021/03/23(火)

『ECR2021オンライン参加報告』

京都大学医学部附属病院放射線診断科 伏見育崇先生

コロナ禍の昨年に引き続き、2回目のオンライン開催のためか、ほとんどストレス無く講演などを見ることができました。時差のため最終日の演題についてはほとんど見ることができなかったのは少々悲しかったですが。Premium Educational Packageに入っておくと会期以降も見ることができるようでした。
講演画面では、クリムトの「接吻」が発表中にピカピカ光るのがおしゃれ?で、ウィーンの人のクリムト愛の深さが伺えました(勝手な憶測ですが)。Embracingが学会のテーマのようでしたが、ソーシャル・ディスタンスをどうしたらいいのかよくわからなかったです。しかし、Web参加であっても、演者の表情が比較的明瞭に見える仕様であったため、臨場感が比較的保たれていたように思いました。開催時期の関係で自分にとってECRはなかなか参加しにくい学会でしたが、非常に好印象を持ちました。学会が多い時期ではありますが、ECRのルーチン参加も考えていきたいと思います(実は今回が初参加でした)。
以下に、ECR2021において私が興味を持ったテーマをいくつかお示しします。
High-field MRとlow-filed MRの講義が個人的には興味深く拝聴しました。High-filedとしては7テスラ、low-filedとしては0.55、0.05テスラの話題で、1.5~3テスラのような中間は無い両極端な構成でも、十分に楽しめました。AI技術がlow-filed MRの画質改善に役立つ可能性もあることから、ICUやMRへのゼロ・アクセスの地域への展開も期待できるということで、楽しみではありますが、本当に実現していくのか先読み能力に乏しい自分としては半信半疑でもありました。
Neurology 2015に発表されたInternational consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disordersに従った臨床例の提示がありました。Circumventricular organs, Area postremaの重要性、shaggy enhancementがMSとの鑑別に有用などを明快に示していただきました。また、まだまだ整理が付きにくいMOG抗体関連疾患についても、両側性、多発性、FLAMES、髄軟膜造影効果、脳神経involvementなどの有用性を示していただきました。鑑別が難しいMOGADとNMOSDですが、皮質、傍皮質病変ならMOGAD、脳室周囲器官病変ならNMOSD、両側視神経病変ならMOGAD、視神経萎縮ならNMOSD、脊髄病変が消退し萎縮を伴わないものはMOGAD、萎縮を伴うものはNMOSDと明快に示していただきました。
COVID19関連では、UK Biobank brain MRI protocolの発表もありました。Capturing MultiORgan Effects of COVID-19 (C-MORE)というトライアルの一部の紹介のようでしたが、30分とやや長めの撮影プロトコルのUK BiobankをCOVID19 survivor用に改変して、17分程度のコンパクトにしたプロトコルでした。コンパクトにするに当たり、全ての撮影を短くするのかと思ったのですが、T1 (MPRAGE)という基幹シークエンスだけは、UK biobankと同一のものを使用するようで、これにより互換性をキープするのかと推察されました。COVID19では、白質のvolume loss、視床のT2*値の上昇?などが見られるようです。今後さらに縦断的にフォローされていくようです。貴重な前向き研究になると思われました。C-MORE自体は脳、心臓、肝臓、肺、腎臓を含めた70分のプロトコルのようです。
ヨーロッパにおける神経放射線医師に与えたCOVID19の影響についてEuropean Society of Neuroradiology (ESNR)による調査の報告もありました。1500人以上のESNRメンバーなどにメールなどでアンケートを行ったようですが、167回答があり、48%でpersonal protection equipmentが十分に手に入り、40%ではその後状況が改善した、検査数はcrisis phaseを過ぎた状況でも減少している、心理面で悪化の傾向がある、などの報告がありました。他人事ではない状況が垣間見えました。
来年こそは現地でのECRをenjoyできるように世界がCOVID19を克服できることを祈念いたします。(以前に撮影したGratzの街の風景と、チューリッヒ中央駅です)

『ECR 2021学会レポート』

弘前大学 放射線診断学講座 掛田伸吾先生

COVID-19禍のなかECR 2021が始まりました。ワクチンの恩恵に淡い期待もありましたが、昨年と同様、ウエブ開催となりました。私は、昨年の参加アカウントに加え、320 EURを支払いPremium Education Packageを取得し、仕事の合間に視聴しています。Opening Ceremonyでは、PresidentであるMichael Fuchsjager先生より、COVID-19禍における放射線診療やウエブを用いた教育、放射線業務従事者へのオンラインによる心身へのサポート(ヨガや合気道教室など)についての学会の取り組みが紹介されていました。Ceremonyの雰囲気は、クラシックから始まり次々に登場する様々なジャンルの音楽が、学会ポスターに象徴される金色の映像美に大変マッチしており、Fuchsjager先生のこだわりが感じられました。また終盤では、Fuchsjager先生が美声を披露されるサプライズもありました。
学会の内容は、今回も参加者を楽しませる企画が満載で、Image Interpretation Quizは、映画スターウォーズ仕立てになっており、演者が映画のキャラクターに扮して映画のパロディを盛り込みながらプレゼンする様子は、ファンならずとも楽しめたのではないかと思います。また「ESR meets the Arabian Peninsula」という企画では、普段は想像することもないUAEやサウジアラビアなどアラビア半島諸国における教育や放射線診療を知る貴重な機会になりました。研究発表を見ますと、やはりartificial intelligence (AI) とCOVID-19が話題でしょうか。RESEARCH PRESENTATION SESSION:COVID-19 findings では、多くの感染者をだした国々より、蓄積した臨床・画像データに基づく、胸部画像所見や予後に関して、まとまった報告がありました。なかでも造影CTを用いた肺病変と肺潅流の研究では、感染3ヶ月以降に胸部症状を有する患者の65.5%に肺潅流異常を認め、その多くが通常の胸部CTでは所見を指摘できないと報告していました。この結果は、COVID-19患者における高い後遺症の頻度を示すものであり、今後も放射線科医が取り組むべき重要なテーマであると感じました。また、AI in the diagnosis and treatment of COVIDでは、胸部単純X線や胸部CT におけるAIを用いた診断サポートシステムの研究が多数報告され、それぞれのシステムの臨床応用における高い完成度を感じました。脳神経領域の実臨床レベルのAIでは、進行性核上性麻痺(PSP)診断におけるdeep-learningベースのアルゴリズムを用いた脳容積解析システムがあり、中脳容積に適用することでPSPとパーキンソン病を高い精度(AUC = 0.915)で鑑別できると報告していました。この結果は、従来用いられてきたmidbrain to pons ratio (MTPR)に適用し診断精度より有意に高くなっており、AIによる絶対的な容積評価が、以前に我々が用いてきた相対的な容積評価より優れていることを示唆するものかもしれません。このシステムの解析時間は4分程度であり、客観的な診断が難しいとされる様々な変性疾患の萎縮の評価への応用が期待されます。
各機器メーカ-からの新製品は学会の目玉ですが、今回はより実用的なAI技術が多く報告されていました。昨年のRSNAと同様にdeep Learningを用いたノイズ除去再構成技術が各メーカ-で製品化されています。またRSNAでは7T MRIの臨床機が登場したことがトピックでしたが、今回の学会では低磁場MRI(0.55T)も話題かもしれません。低磁場のデメリットである低画質をノイズ低減など最新技術でカバーすることで、臨床的な用途に十分対応できるとのコンセプトです。低磁場装置には、磁化率のアーチファクトの軽減などの利点もありますが、最たるものは経済的なメリットでしょうか。MRI装置の保有台数が過剰とも言われる日本では、あまりピントこない話題かもしれませんが、MRIが普及していない国々では魅力的な装置と思われます。
最後に、全体のプログラムを見て感じるのは、座長と演者に占める女性の割合の高さです。不幸にも、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長のドタバタ劇の直後でもあり、より意識したのかもしれません。日本医学放射線学会でもダイバーシティへの意識と取り組みが年々高まっており、ECR2022では、より多くの女性会員の活躍を予感しています。最後に、今回もいずれの発表も大変勉強になり、多くの若い放射線科医には贅沢な学会と思われました。ただ一方で、さすがにウエブ学会がこんなに長く続くと、以前に経験したハプニング的な討論、思わぬ研究者との出会い、立ち話から始まる研究テーマ、など実地開催ならではの収穫が懐かしく思えます。「Can we limit gadolinium use in neuroimaging?」と題したSPECIAL FOCUS SESSIONで、2人の演者が「I don’t need gadolinium」と「I always need gadolinium」との刺激的なタイトルで発表していましたが、やはりウエブでは何か違和感を覚えます。ディベート形式で、さらに会場からの意見もあれば、より面白いのに・・・。スターウォーズの全シリーズを映画館で見てきた私としましては、来年こそはウイーンに行きたいと願っています。

こんな時もありました。

『独断と偏見のECR2021視聴記』

山梨大学医学部放射線医学講座 市川新太郎先生

ECRは私が最も好きな学会のひとつである。その理由としては以下のようなものが挙がる。
1. ウィーンの街並みがきれい
2. Image interpretation sessionやCase of the dayが充実している
3. 学術セッションも教育セッションも充実している
4. 英語を母国語としない参加者が多い
昨年からオンライン開催となっているため、残念ながらウィーンの街並みを楽しむことはできないが、2と3に関してはオンライン開催でも引き継がれている。4に関してもオンライン開催ではあまりメリットとはならないかもしれない。私は以前現地開催だったころ、自分の口頭発表の前に座長に、「英語が得意ではないので、Q&Aの際に助けてください」と申し出たところ、その座長(ドイツの方だったと記憶している)は、「私も英語が苦手だから大丈夫。君の方が上手だよ。」とジョークで返された経験がある。このように、英語を得意としない者に対して寛容な雰囲気がある(と勝手に感じている)ため、現地開催が再開された際にはぜひ英語にあまり自信のない先生方も発表に挑戦してみていただきたい。
2についてだが、私はImage interpretation sessionやCase of the dayに参加することが好きで、学会参加の目的のひとつとなっている。ECRのImage interpretation sessionはエンターテイメント性が強く、今年はスターウォーズをテーマとしたつくりとなっていた。学会のPresidentをはじめ、司会者や発表者が映画のキャラクターに扮して登場し、スライドのデザインも映画をイメージさせるものとなっている。ECRはImage interpretation sessionが2つあり、エキスパートの先生が解答者となる通常のものと、Junior image interpretation quizという若手医師が解答者となるものがある。どちらも非常に勉強になる興味深い症例を堪能することができる。図1はオンデマンド画面のImage interpretation sessionのアイコンをキャプチャしたものであるが、まさにスターウォーズであり、この絵を見ただけではImage interpretation sessionと気づくのは難しい。また、ECRのCase of the dayは非常に参加しやすいのが特徴である。学会開催期間中毎日4~5問出題されるが、いずれも診断名の候補が選択肢として提示されており、その中から正しい診断を選ぶ形式である。診断名を自分で考えて記載する方式だと、見当もつかないような症例に遭遇した時はお手上げになってしまうが、ECRの方式ではそのような心配がない。誰でも参加しやすい方式だと感じている。正答数が上位10名に入るとWinnerとしてホームページに掲載され、賞状がPDFファイルで送られてくる。私は運よく2年連続でWinnerとなることができた(図2)。
次に3に関してだが、セッションの数が非常に多く、12月末までオンデマンドで視聴することができるのが特徴である。その中で私の専門である、肝臓の画像診断に関する学術セッションについてみてみると、今年は3つ設定されており(RPS 101a Advances in liver imaging、RPS 501a Hepatic imaging、RPS 301b Liver and the pancreas)、LI-RADS関連の話題と、MRI撮像技術に関するものが多かった。LI-RADSは米国放射線学会(ACR)が提唱している、肝細胞癌のレポーティングシステムを標準化するためのアルゴリズムだが、ヨーロッパでも関心が高いことが伺える。また、AIに関しては上記とは別にAIのセッションが設定されており(RPS 705 AI in abdominal imaging)、14演題中6演題が肝臓に関するものだった。腹部のAIでは肝臓領域で特に関心が高いようである。
最後にCOVID-19関連の演題について見てみると、昨年から続くコロナ禍を反映してCOVID-19関連の演題が非常に多いのも今回の特徴である。検索タブのトピック欄にある「COVID-19」をチェックすると11ものセッションがヒットし、そのうちの4つが学術セッションで、33演題が含まれている。また、Poster Exhibitionでタイトルあるいは内容に「COVID」を含む演題名を検索すると、79演題がヒットする。現時点での知見を総ざらいするのに十分すぎるボリュームと考える。
以上、ECR2021について概説させていただいた。興味を持っていただいた方は今からでもオンデマンドセッションを視聴するアクセス権を購入することができるようなので、是非視聴してみていただきたい(https://www.myesr.org/premium-education-package)。再び現地でウィーンの街並みを堪能することができる日が来ることを切に願っている。

図1

図2

2020/12/15(火)

『コロナ禍のRSNA2020』
自治医科大学附属さいたま医療センター 真鍋徳子先生

振り返るとはじめてのRSNAは2001年のNY同時多発テロ(9.11)の直後であり、多くのアメリカ国内からの参加がキャンセルとなり、シカゴ自体もテロへの警戒レベルが高く、シカゴのシンボルタワーであるウィリスタワー(当時はシアーズタワーと呼ばれていた)も入場制限があったように覚えている。それから20年にわたり何度も現地で参加してきたが、シカゴでのお楽しみ(写真1)は今後にとっておくことにして、日本の日常業務と併走できる新しいRSNA参加様式を享受しようと思って臨んだ。時差15時間であるため、現地朝8時半のライブセッションを夜11時半の寝る前に、現地午後5時のセッションを朝職場で仕事しながら聴講する一週間となった。とはいえ、そのほかにもたくさんの興味深いセッションがあるので、ライブではなくオンデマンドと組み合わせてなるべく多くのセッションを視聴するようにした。尚、ライブセッションはon-timeで質問を受け付けているので(セッションが終わると同時に質問も受け付け終了)、現地でface to faceで質疑応答するよりは(写真2)、英語も通じやすいし、ぐっとハードルが低く感じた。
尚、参加者は水曜のDaily Bulletinによる発表では26,318人ということで、参加登録は例年より20%増加したそうである。
いくつか興味深かったものを(注:好みには偏りあるが、ご容赦を)紹介させていただく。

・COVID-19関連:驚くべきことにCOVID-19関連は全部で74(!)のセッションがあり(内訳はFeatured education and science sessions9, education exhibits 51, science abstracts14)、すべて見きれていないが、まずは心血管合併症、救急を中心に拝聴した。scientific sessionは米国以外にヨーロッパと中国からの演題で、どこも今年の3-4月にかけて経験された数十例の症例を集めて検討していた。パンデミックが起き、現場が混乱を極める中で6週間程度の短期間にデータを集め、RSNAに演題を出すという丹力に感服したし、実際に遭遇し悩んでいた症例に似た事例をたくさん勉強できた。またHot Topic sessionのImpact of COVID on Workforce Resilienceはコロナ禍の中で放射線科組織をどのようにマネージメントしていくかという示唆に富んだ内容で、多くのことを考えさせられた。
・心臓関連:多くの演題があるが、時間のない方はdigital posterの受賞演題を中心にみることをお勧めしたい。力作揃いであるが、Magna Cum Laude受賞(CA124-ED-X)はまさかの心電図の読み方の発表で、最新の撮影法の演題でなくとも、多くの放射線科医が苦手としているであろう心電図を取り上げた教育的な切り口が評価されるという良い例であったと思う。またECMO下での造影CTの発表(CA144-ED-X)は、独特のアーチファクトを血行動態の解説とともに詳しく説明しており、COVID-19陽性のECMO患者の造影CTを評価するために必要な知識を得ることができ、大変参考になった。

RSNAでは毎年機器展示も目玉であり、心臓領域はPhilips社が満を持してFeature trackingによるストレイン解析と4D-flow MRI解析ソフトをリリースした。Canonのバーチャル機器展示はかなり凝った作りとなっていて、見応えがあった。RSNA会期後もアクセス可能であるそうなので、ご興味のある方はぜひアクセスを(キヤノンメディカルシステムズRSNA特設サイトhttps://www.canonrsna20.com/)。
海外の学会に参加する醍醐味は、現在のRadiologyの潮流を感じ、世界の中での日本そして自分の立ち位置を確認すること、そしてnetworkingにあると思っている。今回はコロナ禍の中であっても、学会を通じて世界中の放射線科医にいままでない親しみを感じた。一方で、シカゴのあの空気感が恋しくもあり、安全に現地参加できる世の中に再び戻ることを願っている。

写真1:今回はシカゴの写真ないので、前回参加時のあるディナーの一枚。1パウンドのステーキのボリューム!


写真2:前回参加時のdigital poster前での質疑応答。マスクのない三密が懐かしい。相手の顔が見える良さはやはり現地ならでは。

 

『RSNA2020のvirtual conferenceでの腹部領域のトピックス』
広島大学 放射線診断学 中村優子先生

2020年11月29日から12月5日まで、第106回北米放射線学会(RSNA2020)が開催された。例年であれば、シカゴ開催であり、まず今年のシカゴの天候について述べたいところであるが、ご存知のごとく、現在も猛威を奮っている新型コロナウイルス感染はついにRSNAにも影響を及ぼし、今年は完全なvirtual開催となった。準備からirregularなことが多く、みなさんもなにかと苦労したのではないだろうか。特にこれまでscientific sessionは口頭発表とポスター発表に分けられていたが、今年は口頭発表がfeatured sessionとon demand sessionに振り分けられ、録音したスライドの事前アップロード、featured sessionは指定された時間にchat boxでの質疑対応が求められた。最近では国内でも新型コロナウイルス感染の対策としてオンラインやwebでの対応が増えていたため、なんとか対応できたものの、やはり新しいシステムはなにかと不安なことが多かった。
さて肝心の腹部領域のトピックスであるが、筆者は肝臓セッションを中心に聴講したため、肝臓に限局した報告となっているが、あらかじめご了承いただきたい。昨年同様、今年のRSNAではArtificial intelligence (AI)を用いた演題が多く、肝臓領域でもAIに特化したセッションが設けられていた。また本年に限ったことではないが、American College of Radiology (ACR)が提唱している肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma: HCC)の診断アルゴリズムであるLiver Imaging Reporting and Data System (LI-RADS)関連の演題が多く見受けられた。そしてHot topic sessionでは、腹部はAbbreviated MRIが取り上げられていた。これらのテーマにつき、私見を述べる。
AI領域では、診断にAIを用いる演題も見受けられたが、個人的には診断は流動的であり、時代にあわせ常に変化すると感じていることから(現にRSNA2020のテーマはHuman insight/Visionary medicineとされている)、補助にはなりえても(スクリーニングなどには有用かもしれない)、主となることはないのではないかと考えている。むしろ画質の改善にAIを使用することはAIの非常によい使い方であり、代表としてCTやMRIで近年開発されたDeep learningを取り入れた画像再構成が挙げられるが、これに関する演題も増えていた。次にLI-RADS関連では、今年はLI-RADSに2017年から採用されているHCCの治療効果判定アルゴリズムを用いた演題が多く見受けられた。LI-RADSは我が国では日常診療で用いている施設は少ないのではないかと思うが、LI-RADSのkey note lectureでは、LI-RADSはあらたなHCCの治療への効果判定や新しい撮像技術、AIも視野にいれ、updateが試みられており、肝画像診断をすべての面から包括できるようになることを目指していると紹介されており、LI-RADSは今後無視できない存在になると感じた。最後にAbbreviated MRIについてであるが、Abbreviated MRIとは、従来の撮像シークエンスを簡略化することで検査時間を短縮したスクリーニング目的のMRI検査である。以前から耳にはしていたが、個人的にはMRIは精査に用いられることが多いことから、すべてのシークエンスを用いて診断を行う必要があり、そのうちすたれるだろうと思っていた。しかしながら、Abbreviated MRIは、HCCのサーベイランスに使用される超音波のHCC検出感度が低いことから、その代打としての有用性が注目されるようになっており、今年のRSNAではhot topicとして紹介され、Abbreviated MRIのscientific sessionまで組まれていた。我が国でも今後精査のみならずスクリーニングにもMRIが用いられる時代が来るのかもしれない(件数が爆発的に増えそうで、その際はぜひAIに活躍してほしい)。
例年のRSNA参加では、研究面や言語面など、あらゆる面でRSNAは私を叱咤激励してくれるため、自分を奮起させるよい機会となっているのだが、今年は自分のデスクから自分のペースで演題を聴講できるものの、国内で従来どおりの業務終了後に演題を聴講しながら、本当に今週はRSNAが開催されているのだろうかと懐疑的になってしまう自分がいた(本執筆がなければ、どこまで演題を真剣に聴講する気になったか甚だ疑問であり、このような執筆機会を頂けたことに感謝したい)。やはりシカゴに行き、RSNAという会場に足を運べることが重要なのだと痛感した。新型コロナウイルス感染が一刻もはやく収束し、また従来どおりRSNAがシカゴで開催される日がくることを期待したい。

写真1 RSNA2019のポスター会場での当科の医局員の風景

写真2 RSNA2019で撮影した翌年のRSNA2020の宣伝ポスター

 

『RSNA 2020 中枢神経系領域について』
京都大学大学院医学研究科 放射線医学講座(画像診断学・核医学) 伏見育崇先生

Web開催されたRSNA 2020に参加しました。時差の関係もあり、オンタイム初めての試みと思われますので、主催者のご苦労は察するに余りありますが、私が参加したセッションなどでは、オンライン開催で時々見られるようなマイクトラブルは見られず、音声も多くが良好に聞き取れました。さすが、RSNA! リアルタイム参加のセッションであっても、巻き戻して再生することができたため、ストレス無く視聴することができました。通常の診療・生活をしながらのWeb参加だったので、RSNA会場で学会の雰囲気を感じるような没入感はあまり無かったですが、会場を移動すること無くセッションに参加でき、開催時間が重なっているセッションであっても後日に再度視聴が可能であったため、現地開催よりも便利な点も多々あることを実感しました。これは不都合な真実のような気がしました。以下、興味深かった演題などをお示しします。
なんと言っても、COVID19関連。中枢神経系領域のCOVID19関連の病態の報告では、患者数の多いアメリカならではの多彩な所見が報告されていました。
Dr. Christopher G. Filippiによると、初期は通常の検査が急に少なくなり、次に、梗塞・出血・大血管閉塞などが見られたそうです。凝固能亢進による血栓性、凝固異常に伴う出血、血管内皮障害(IL-6などによるサイトカインストーム)などが要因としてあるとのことでした。亜急性期・慢性期では、脳症(ICU brain, 低酸素・虚血、PRES)、微小出血、分水嶺梗塞、稀だが脱髄(ADEM, GBS)なども見られるようです。Unpublished dataとのことですが、2ヶ月間で、脳症または精神症状を呈した141例のCOVID19陽性のICU患者に対して脳MRを行って71例に何らかの陽性所見を認めたそうです。Juxtacortical microhemorrhageなどCOVID19に特異的な?所見も集積しつつあるようです。全く新しい疾患であるCOVID19による中枢神経系異常に対して、苦慮されながら対応されてきた過程を経時的に垣間見ることができました。
Dr. Rajan JainもNYUにおけるCOVID19対応、NYU Family Connect Teamの活動、レジデント教育対応, Virus-Associated Necrotizing Disseminated Acute Leukoencephalopathy (VANDAL)などを示していただきました。
Dr. Ajay GuptaからはCOVID19とStrokeの関係、疫学などをreviewを交えてわかり易く示していただきました。既に多数のreview article, systemic reviewなどが行われていることにも驚きました。Nature Medicine 2020 Extrapulmonary manifestations of COVID-19は勉強になりそうです。
脳脊髄液減少症からは、post myelography CTにおけるearly renal pelvic opacificationの紹介がありました。Spinal longitudinal epidural CSF (SLEC)の陽性例では早期腎盂濃度上昇が見られ、SLEC陰性でもCSF-venous fistulaがある例では早期腎盂濃度上昇が見られたとのことでした。CSF spaceと硬膜外静脈との短絡についても、直接的な短絡、meningeal diverticulaの破裂?やクモ膜顆粒による吸収亢進などが挙げられていました。
MRgFUSの実際、Photon-counting CTなど、最先端技術の紹介も非常に興味深いものでした。
COVID19の早期収束、シカゴでの参加の実現を祈念致します。写真は2019年に撮影したシカゴの夜景です。

 

『RSNA2020 virtual conference Neuroradiology / Head & Neckについて』
東邦大学医療センター大森病院放射線科 堀 正明先生

皆様ご存知のとおり、RSNA2020はオンラインのvirtual conferenceとなりました。参加登録をして、口演などを閲覧しようと意気込んでいても、リアルタイムの講演は日本時間で夜中であり、その後のオンデマンドの講演も、視聴のために1時間とか2時間を空けるのがなかなか難しく、結果ポスターを中心に閲覧しているのが、私自身の正直なところです。シカゴまで行ってしまえば、他の業務で煩わされることはないと思いますが、日本にいて「RSNAのこの講演を見たいから2時間、昼間に時間を確保する」というのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
さて、今回のNeuroradiology / Head & Neckのデジタルポスターですが、全体的には前年度同様の内容で、画像と病理の対比がやはり王道であると感じました。実際に受賞しているポスターは、そのようなものが多いです。また、今年のトピックスの1つが、COVID-19に関する発表であるかと思います。Neuroradiology / Head & Neckのデジタルポスターで「COVID」で検索すると、15程認められます。この領域におけるデジタルポスターは全体で310であるので、やや多い感はありますが、ご時世を考えますと当然です。なお、あまり中枢神経に詳しくない方のために簡単に説明しますと、COVID-19感染に伴う中枢神経の病変は多岐にわたることが知られています。いわゆる脳血管障害(血管閉塞、脳梗塞や出血)の他、脳炎、白質脳症、脱髄等の報告があり、画像としては主にMRIによる論文による報告も増えつつあるのが現状です。前者は、血栓形成に伴う変化が理由の1つとしては考えられますが、後者に関してはサイトカインの関与などの推測はされているものの、その機序の詳細は現段階では不明な部分が多いと思います。そのほか、感染後脳症や脊髄炎、末梢神経障害も知られています。これら神経病変の正確な頻度は人種や地域によっても異なり、本邦におけるその頻度はおそらくあまり高くないと予想されますが、RSNAのポスターによくある表現を借りると、「Radiologist Needs to Know」であることは間違いありません。
余談ではありますが、今回のデジタルポスターの1つ、NR202-ED-X(ペンシルベニア大他)のタイトルがなかなか秀逸であったので紹介したいと思います。「Navigating the Uncharted Waters: What the Radiologist Needs to Know About CNS Involvement by this Crazy Odd VIrus of December 2019 (COVID-19)!」。
さて、オンラインの学会参加は、教育的展示などはゆっくり自宅などから閲覧できるという利点はあるものの、学会というよりは出来のよい、up to dateの教育的コンテンツを見ているような気がします。来年こそは、オンサイトでの参加ができるような世界であることを強く望みます。

『RSNA2020Web開催でのトピック、機器展示の印象』
東海大学医学部専門診療学系画像診断学 丹羽 徹先生

今回のRSNAは全面的にWeb開催であった。RSNA特有の雰囲気は味わえないものの、長距離移動や時差ボケがない、広い学会場内の移動をしなくてすむ、スライドがじっくり見られる、多数の講演をオンデマンドでみられるなど利点も多く感じられた。Web上の構成には趣向が凝らされていた。スライドは演題を見るときに全スライドも同時に表示され、現在どこをみているかがわかりやすい構成になっている、1枚のslide中の複数の動画がスムーズに再生され、アニメーションも問題なく表示される、ある演題を閲覧中に関連のありそうな演題がリストアップされるなど、Web学会としてとてもよくできており、本邦の学会も参考にすべき点があるように思われた。
AIは今回もtopicの一つで多くの演題が発表されていた。病変の検出、画像所見からの予後予測、画質改善(ノイズ除去や高分解能化)、病変・関心領域の抽出などは近年の主なテーマになっていると思われる。今回は、AIを用いて、教育用の画像作成や、小児虐待の骨折診断など、さらにその応用は広がっていることを感じた。本邦では一部AIによる診断補助が画像診断装置(PACS viewer)でも使えるようになってきているが、現状ではまだ、限定的である。一方、海外では多くのAI製品が発売されているようである。今回100のAI画像診断製品を検討した演題があり、個人的にはとても多くの製品がすでに発売されていることを知り驚いたが、一方、本演題ではこれらの製品のうち18製品しかlevel3以上の論文として発表されていないと報告されており、多くのAI製品の検証はまだこれからということのようである。
小児や胎児では、十分な撮像時間がかけられない、動きがあるなど、撮像に制限があるが、以前では十分な画質が得られにくかった胎児の領域の画像評価に関する演題もみられた。Quantitative susceptibility mapping(QSM)による先天心疾患胎児における静脈洞内の酸素化評価や、virtual endoscopy(3D)にて胎児の四肢末端の評価を行う演題があり、近年の装置のS/N向上や撮像時間の短縮により、応用が広がったものと考えられる。
機器展示では、まさにvirtual展示を体験できた。Web上ではあるが、展示ブースに足を運んで、担当の方の説明をうけ、機器をみるようなvirtualな環境が再現されており、興味深かった。企業のセミナー、講演もあり、学術のみならず、医療機器に関する検討、今後の展望などを世界の医師、研究者などからの意見を聞けるのも参考になった。今回は、新しいレポーティングシステムの紹介に関する講演があった。我々の読影報告書は従来からあまり変化しておらず、一部キーイメージやリンクの機能がある装置もあるが、多くの施設では基本的には文字(テキスト)を中心としたものであると思われる。RSNAでは、画像、レポート、カルテ内での相互のリンクを強化したものが紹介されていた。すなわち、過去画像をキーイメージとして貼り付けると、自動的に「xx年yy月zz日のMRIと比較」といった文字がレポートに記入される、ハイパーリンク機能でレポートの文字をクリックすると、viewerが起動し、viewer上でその所見や前後の画像が確認できる、といったものであった。本邦でも一部ハイパーリンク機能を有するものがあることは知っていたが、RSANで紹介されていたシステムは、さらに機能を強化したものであった。「百聞は一見に如かず」ではないが、読影報告書で文字を中心に長々と説明するよりは、今後は画像を中心に所見を説明するようなレポートに変わっていくかもしれない。少なくことも個人的にはこのようなことは望ましいと考えており、今後、本邦のPACS・レポーティングベンダーにも機能を拡張していただきたいと思った次第である。
以上、個人的に気になった点をレポートさせていただいたが、学会の全体像は大きく、とてもすべてを網羅できない。ただし、会員/登録の状況によっては、2021年4月30日まで閲覧できるので、これからも少し時間をかけて講演を見ていこうと考えている。

Web開催のRSNA2020 迷子にならないために
筑波大学医学医療系臨床医学域放射線診断IVR学 中島崇仁先生

今年のRSNAはWeb開催で捉えどころが難しく、得るものがいつもより少なかったように思います。今回はWeb上で迷子にならないように、これまでのオンサイトでの参加を思い出してWeb参加をしてみました。来年は新型コロナウイルスが落ち着いてオンサイトで参加できることを希望して、ここでは私なりの例年のシカゴでのRSNA参加の仕方を紹介します。
毎日のリズムを作るために、Case of the dayという症例当てクイズがお薦めです。当日の夜中の12時が〆切りなので、夕食の後にホテルでPCやタブレットで症例を見て回答しておくと、翌日の午前中にメールで症例毎に正解・不正解の結果が届きます。ポスター会場の入り口には症例展示がありますので、午前中会場で特に聞きたいセッションがない場合は、他の人が集まって議論しているのを聞きながら、自分の回答を考えておくのも良いかもしれません。今年も深夜にやってみましたが、意外といつも通りにできました。
今回、RSNAの会員は参加費無料かつWebの閲覧無料という事になっていますが、これまでもVirtual meetingという形で、150ドルのオプションを選択すると、オンラインでリアルタイムもしくはOn-Demandで自分のPCやタブレットからアクセスする事が可能でした。あとで見直す事は少ないのですが、現地で参加するのにとても重要なサービスです。時差の関係で4時か5時には起きてしまうので、PCやタブレットを開いて、On-Demandで自分の気になるセッションを見ます。朝ですととても集中して勉強ができます。私のようなデジタルガジェット好きは、タブレットで閲覧しながら、PCで知らなかったことなどを調べていきます。そして、おなかがすいたら朝ご飯です。今回も日本時間の深夜にあるセッションをリアルタイムで聞かずに、朝ご飯を食べながらOn-Demandになったセッションを聞くのが正解だったように思います。
お昼は会場でご飯を食べながら、同じ大学の先生とは今年はどこが見どころかなどを話したり、友達や知り合いの先生とは久しぶりの再会でいろいろな情報交換をしたりします。今回バーチャルミーティングという機能がありましたが、実際に会わないと話が盛り上がりません。貴重な情報源でもあったので、ここは日本の学会も含めてなんとかしてもらえると良かったです。
午後は余裕があれば、機器展示会場に参加します。企業ブースのレセプション(受付)に行って、ジャパニーズスタッフをお願いします、と言えば、大抵はどなたかが対応してくださると思います。予めメーカーの方とアポイントメントを取っていることも多く、今回のWeb開催では日本人スタッフの方が日本で日本時間で準備していただけており、丁寧にWebで対応していただけたので、新しい技術についてはいつも以上に知ることができたと思います。
シカゴは日本食も含めおいしいお店がありますので、夕食は夜のセミナーなどのビュッフェではなく、ぜひシカゴの街に食べに行くようにしてください。たくさん食べておくと、力がわきます。今の日本でも皆さんと一緒にご飯を食べる機会がないですので、来年こそはシカゴに行けたら力がわいてくると思います。来年はオンサイトでの開催を希望しますが、Web開催になったとしても、バーチャルでこのような感じで参加してみると、Web会場の中を迷子にならなくて済むかと思います。

筑波大学附属病院の読影室にて

2020/08/31(月)

『ISMRM2020 on the WEB: ようやくWEB学会の歩き方がわかってきた
名古屋大学大学院 医学系研究科 革新的生体可視化技術開発産学協同研究講座 
田岡俊昭先生

2020年のISMRMは本来4月にシドニーで行われる予定でした。COVID-19の感染流行により8月へと延期となり、それに伴い、開催予定地もパリに変更になりましたが、感染は収束せず、WEBでの開催へと変更されました。本来なら2度目のシドニー開催のISMRMとなることから、私は1998年のISMRMのバッグ(写真)まで準備して楽しみにしていたのですが、その点では残念な結果となりました。一方、2020年2月以降半年近く、ISMRMのみでなく、日本医学放射線学会をはじめほぼ全ての学会がWEB開催となり、慣れると共にWEB学会の歩き方もわかってきました。前に座っている人の頭や、後ろの人の私語に悩まされない事もさることながら、WEB学会の最大の長所は、自分の都合の良い時間にプレゼンを閲覧することが出来ること、そして、プレゼンを繰り返し閲覧できることかと思います。何ならプレゼンのエッセンスを効率的に飛ばし見する事もできます。リアルの学会では、自分の興味のある演題もそうでない演題も10分なら10分で変わりませんが、WEB学会では演題にかける時間を自分の興味に合わせて可変出来る点はありがたいです。加えて、ISMRMでは抄録が論文並みに充実していることから、抄録とプレゼンを行ったり来たりしながら勉強が出来る点も、リアルの学会では出来ない長所です。また、ISMRMのサイトは(操作性に少し難があるものの)検索機能も充実しているので、通常は自分が訪れないようなセッションに分類された演題もカバーすることが出来ます。リアルの学会では抄録集で面白い演題を見つけたときにはそのセッションが終わっていたということも結構ありましたね。
今回のISMRMでは、あらかじめ録画されたプレゼンテーションは学会のウェブサイトで閲覧し、ライブのッションはZoomのウェビナーで行われました。月曜日のプレナリーセッションもZoomで行われましたが、京都大学の富樫教授がGold Medalを授与され、名古屋大学の長縄教授がFellowに選出されました。このような晴れがましい場で、皆で思いきり拍手できない点がWEB開催の寂しいところですね。口演発表後の質疑応答は、複数の関連したセッションをまとめる形で、やはりZoomのウェビナーで行われました。私はGlymphatic systemに関しての教育講演(Weekday Course/Tuesday Parallel 2)とパワーピッチ(#537)の二つでこのQ&Aセッションに登壇しましたが、時差の関係で夜中の1時迄の議論となり、かなりつらかったです。時差については国際学会をWEB上で行う際の問題の一つとなりそうです。
パワーピッチセッションはユニークな演題を集めたセッションであり、本来のISMRMではプレゼン時間を3分と短くする一方で、face to faceのディスカッションの時間をしっかり確保したセッションです。今年はWEB開催となった結果、プレゼン時間は一般の口演と同じ9分となり、より充実したプレゼンを視聴することが出来た一方、WEB上での質疑は時間が限られてしまいました。「Novel Neuroimaging Techniques」のセッションでは、半数以上の演題がGlymphatic systemやNeurofluidに関する演題であり、この領域が引き続き興味を持たれていることがわかります。このセッションでは拡散強調像で脳脊髄液の動態を評価しようとする演題が2つありました(#534, #537)。この手法はLe Bihan先生の拡散強調像の最初の論文で提唱されていたものの、そのあと長らく行われていませんでしたが、2019年のJJRでの報告(Jpn J Radiol. 2019;37:135-144)以降、興味を持たれているようです。
WEB学会になっても、ISMRMのセッション名は凝っているというかクセが強いというか、こればかりは昔からの伝統ですね。以前ISMRMのAMPCをしていたときにも、一緒に仕事をしていた委員達がなにやらひねったセッション名を相談しているのを「そんなところで努力しなくてもいいのに・・」と思って眺めていたのを覚えています。今回のISMRM on the WEBでの変わったセッション名の一つとして、「Treasure Chest of Neurogems」がありました。「ニューロの宝石箱やぁー」といったところでしょうか。このセッションでは北海道大学から17O標識水の演題(#2042)がありました。17O標識水は脳脊髄液や間質液のトレーサーとしては理想的であり、AQP4ノックアウトマウスでは血管周囲腔に水がたまる傾向が示されていました。

今回、シドニーに持って行くつもりだった1998年シドニー開催時のISMRMバッグ

『ISMRM2020 腹部領域のトピックス』
山口大学大学院 医学系研究科 放射線医学講座 伊東克能先生

新型コロナウィルスによるパンデミックのためweb開催となった今年のISMRMから、腹部領域の話題についてご紹介したいと思います。肝胆膵領域のscientific sessionはpower pitch sessionも含めて3つ、演題数は34です。撮像技術に関連するsessionでは、deep learning, MR elastography, T1, T2* マッピングに関する発表がありましたが、このうち、The thirsty liver: dynamic T1 mapping after fluid intake in healthy volunteers (0311)では、飲水後の肝T1値の変化を経時的に評価し、40分をピークにT1値が上昇カーブを描くことを示しています。1リットルの飲水が必要で、T1値の変化も40ms程度ですが、この結果からは肝臓における代謝や血流のわずかな変化でもT1値を含めた定量値に影響を与えるということを考慮する必要があると言えます。
肝臓領域では、びまん性疾患(脂肪肝と線維化)と代謝に関するsessionが組まれており、Mapping glycogen concentration in vivo based on the nuclear Overhauser enhancement (NOE) with water (glycoNOE) (0316)では、11.7T MR装置を用いた動物実験で、glycoNOE信号が肝臓内のグリコーゲン量と有意に相関しており、定量化の指標となりうることから、肝代謝性疾患の評価に有用となる可能性を示しています。日本においても今後、肝疾患の主体がウィルス性肝炎から脂肪性疾患へと変化していく中で、代謝性疾患における画像診断の役割も増していくことが考えられ、MRSを含めた機能代謝診断の高精度化が必要と考えられます。
Digital poster sessionは、Abdominopelvic MRI (cancer, benign)の2 sessionがあり、演題数はそれぞれ91, 172です。このうち門脈系の診断に関連したものが比較的多く7題あり、これは4D flow MRIやその他の新技術が門脈領域にも適用されるようになったことが要因の1つと思われます。Evaluation of portal system flow in response to a meal challenge with 4D-flow MRI (2632), Flow quantification with navigator-gated 4D flow MRI in portal hypertension (2621)では、食後における門脈・上腸間膜静脈血流増加と脾静脈血流低下のカラーマッピングと肝硬変患者における門脈血流速度の低下が示されています。また門脈圧亢進症の評価として、脾臓のT1ρ値上昇が指標となること (0320)、肝臓のT1値と正の相関があること (0323)、MR elastographyによる脾臓の硬度と相関すること (0329)、Gd-BOPTA造影MRIにおける肝実質の造影効果と負の相関があること (2483)、などが示されています。
それから、cancer-hepatocellular carcinoma (15演題)が1つのsessionとして組まれていたことは驚きでしたが、これはアジアからの発表とくに中国からのものが増加していることによるもので、多くは定量値やradiomicsとの組み合わせにより診断能を向上させる内容ですが、今後はさらにこの傾向が強くなることが予想されます。
Cancer – Liquid biopsyにみられるように、癌も遺伝子情報を加味した細胞レベルでの早期診断が臨床応用される時代に、癌の早期診断に画像診断が果たす役割は何か、Benign – 臓器の機能・状態を正確に評価し、予防医学、アンチエイジングなどに画像診断をどのように役立てていくのか、今後はこのような研究も進んでいくことを期待しています。

画像は、ISMRM 2019 モントリオールより

『心血管トピック~初のweb開催~』
東北大学大学院 医学系研究科 先進MRI共同研究講座 大田英揮先生

多くの学会と同様に,ISMRMも今回の実行委員会は,多大な苦労をされたと存じます.シドニー開催からパリへの開催変更,そして最終的にはWeb開催へ.当初の見込みとは大きくかけ離れてしまいましたが,とにかくin personでの学会開催をなんとか実現するための,パリへの変更だったと関係者からは伺っています.Web開催での利点・欠点は皆様もいろいろと感じていらっしゃることがあると存じます.私個人といたしましては,web開催の学会に積極的に参加していくのは,現時点ではなかなか難しいというのが一番強く感じた感想でした.その理由として,第1に学会期間中の日常業務と学会参加の両立をするための時間確保が困難であることがあります.出張してしまえば臨床業務から離れざるを得ないために学会に集中できますが,自宅や大学でweb視聴を続ける以上,日常業務が舞い込んできますし,夜間に視聴時間を確保した途端,緊急アンギオで呼ばれてしまったこともありました.第2に,時差の問題があります.時差のために夜間に行われるlive sessionには,翌日の業務に支障が出てしまうためになかなか参加できず,発表をじっくり見る機会も確保できませんでした.現地に行けば強制的に現地時間にリセットして活動するので問題ないですが,web参加のために時差をリセットするのは,日常業務との兼ね合いもあり困難でした.これが,シドニー会場のままであったら,日本人にはとてもいい時間設定だったのではないかと思いもしましたが,結局それでも日中は業務のため参加ができないというジレンマに陥っていたかもしれません.第3に,pre-recording とlive discussionの難しさがあります.今回,初めて土日のeducational sessionで講演(Session Title: Cardiovascular MRI: The Vasculature, Talk Title Supra-Aortic Vessels: Clinical Application & Use) する機会を頂きました(シドニーで話せたら,どんなに良かったことか!).通常の発表では,参加者の方々の反応を見ながら適宜ジェスチャーを加えて話すので,多少つまずいたり,英語の言い方を間違えたりしても,場の雰囲気を勝手に味方にしていくことができます.しかし,一人録画となると,休日の誰もいない(雑音の出ない)医局から,まるで宇宙に向かって話しているようで,とても話しにくくなってしまいます(これは日本語の発表でも同様です).さらに録音を確認すると,簡単な英文法の間違いや言葉のつまずきをたくさんしていることがわかり,何度も録音し直すものの,結局途切れ途切れの動画になってしまい,多大な録画時間,準備時間を要してしまいました.また,深夜帯に行われたlive discussionでは,やはりそもそもの音質の問題や顔が見えないことでの聞きにくさ,自分の発言がネットの向こう側に十分な音質で届いているだろうか,自分の発音は理解してもらえているだろうかといった不安感があり,非常に緊張しました.チャットを使える良さはあるのですが,見慣れない単語を見つけて理解するのに時間を要したり,限られた時間でチャットとトークを並行して理解していく必要があるので,より頭が混乱したりと苦労の面の方が大きいと思いました.また,複数の演者の質問がチャットに来るので,対応するのが大変でした.視聴者側からは,チャットの良さを十分に堪能できたのだろうとは思っていますが,座長,パネリストの苦労は,in personの時より大きいだろうと感じました (non-native speakerのハンディキャップも大きいです).しかしながら,今後のあらゆる学会は,web開催あるいは少なくともhybrid形式の開催が主体になっていく可能性が十分にあります.Web会議のスキルを身につけていくのは,ウィズコロナの時代で必須事項であるとの思いも強くしました.
上記の理由のため,網羅的な紹介はできませんが,心血管領域のトピックについていくつか演題を紹介いたします.
0784: Cardiac MR fingerprintingの臨床研究.Motion artifactを軽減するために撮像ウィンドウを150 msまで短縮し,cMRFで,T1, T2 mapを一回の息止め(15心拍)で取得した.通常のmapping撮像法と比較してnative T1, T2は良好に相関していた.
0785: Golden-angle RAdial Sparse Parallel (GRASP)を用いた自由呼吸下,高時間分解能の遅延造影MRI.IRパルスとramp-upパルスの直後から,bSSFP readoutを,golden-angle(32.038º)の角度を変えながら224 rays分取得し,16 time framesに分割して再構成する.最適なコントラストを表現できている time frameの画像を再構成後に選択することが出来るため,TI scoutが不要になる.
0787: 深層学習を用いたデノイズを活用することで,臨床画像として心臓のテンソルMRIを取得する.従来の加算回数8回の30分の撮像時間で得られたテンソル画像と同程度のものが,4回加算(半分の撮像時間)でも得られるようになった.
心臓MRIの強みの一つとして,心筋組織性状の評価が可能であることがあげられます,一方で,心臓MRIに要するスキャン時間は,他の検査を圧迫する要因にもなるため,短時間撮像や,自由呼吸下での撮像は,今後望まれる手法と考えられます.テンソルMRIは,臨床的にも実現可能な撮像時間内に取得出来るようになれば,今後の臨床的意義の探索に向けて活用されていることが期待されます.
0776: マルチベンダーの大血管4D flow MRIから,AIベースの全自動セグメンテーションを行った.マニュアルでのセグメンテーションの結果と比較して,良好な一致が得られた.
0777: アデノシン負荷潅流画像(6スライス,10mm厚)に対して,深層学習とmotion correctionを用いた再構成を行い,自動的に定量測定する.
いずれも,機械学習の応用に関するセッションでの発表でした.心臓MRIの画像解析には,現状ではマニュアル操作が非常に大きく,臨床に必要な時間を費やしてしまう傾向があります.これらの自動化ツールは,今後の放射線科業務改善にもつながりますし,恣意的にもならないと思われますので,データの頑健性にもつながるかもしれません.
写真は,当院の森技師が深夜の0:50開始のlive discussionに参加しているところです.彼も日常業務との掛け持ちで大変な中,頑張って発表してくれました.私も直前に緊急アンギオが終了して,一緒に参加することが出来ました.最後に,平時になかなか戻れない中,web学会を皆様が少しでも楽しみ,ご活用いただけるようになることを祈っております.

『新型コロナウイルス下でのISMRM2020開催』
京都大学大学院 医学研究科 脳機能総合研究センター 岡田知久先生

今年のISMRM大会は、新型コロナウイルス感染に大きく翻弄されました。開催は当初4月予定のシドニーから8月のパリに移動、その後さらに5月と開催にかなり近づいた時点で再度Web開催へと変更されました。最初からWeb開催との声もあったようですが、直前まで現地開催にこだわった背景には、ISMRMの基本的な考え方があると思います。それは、MRの技術開発を診療に活かすために、臨床医と基礎研究者をはじめとする多様なバックグラウンドを持つ研究者同士が対面で直接議論し繋がることをとても重視している点です。これはWeb開催になっても同じで、Entry pageの最初に「Session」などと並んで「Networking」と明示されています。昨年のラグビー・ワールドカップでのOne TeamならぬOne Community for Clinicians and Scientistsという標語はずっと以前より使われており、ISMRMが目指す方向が明示されています。初日の夕方に開催されるNewbie (初回参加者) receptionでは、Web上に例年どおりテーマ別の集合場所が設定され、各分野のエキスパートと自由に話ができる環境が提供されました。今後、ソーシャル・ソフトウエアがより便利になれば、最近増加しているWebinarなども含めてnetworkingの機会がさらに大きく増えると期待しています。

早々とWeb開催に直接移行する国際会議が多い中で、3か月前までじっくりと状況を見極めることができたのは、運営レベルが高く交渉力の強いCentral Officeがあるおかげです。Executive DirectorであるRoberta Kravitz女史が2017年にProfessional Convention Management Association (PCMA) Global Meetings Executive of the Year Awardを受賞したことからもわかるように、ISMRMは財務体質も含めてとても健全に運営されている組織です。今回のWeb開催では参加費は250ドルと大きく下がりましたが、例年は学会正会員でも1,000ドル以上とかなり高額です。その背景には、研究費で参加できる正会員に若い研究者の参加費を一部負担してもらう、という発想があるようです。実際、研修医や大学院生はTrainee stipend awardに応募できます。欧米諸国だけでなく、中国や韓国からも多くの申請があります。これはAwardなので、初期段階での国際的なAward受賞歴を記載する上でも好都合であり、お財布にも経歴にも優しいAwardです。日本人はとかく遠慮しがちですが、何度でも積極的に応募しましょう。「抄録を出すときには、忘れずに。」 指導医の先生方からも応募するように念を押してください。

また、今年は京都大学 画像診断学・核医学講座の富樫かおり前教授がGold Medalを受賞、名古屋大学大学院医学系研究科 の長縄慎二教授がSenior Fellowに選出されたのは、とても喜ばしいことでした。今回、性別は無関係ですが、一般にISMRMは世界のアカデミアを中心としたかなりリベラルな組織です。今年水曜日夜のSecret Sessionでは、MRI: Making Research Inclusiveと題して、Oxford大学のKarla Miller先生が新型コロナウイルスを吹き飛ばすような、強烈なジョーク?を飛ばしていました。”If you are a Gold Medalist, you’re 1.4x more likely to be named Robert or Peter than to be female.” とか、”Distinguished Service Medalists are five times more likely to work in a town named Cambridge than in a non-English speaking country.”とか。性別や地域に関係なく、ISMRMに積極的に参加すれば、門は開かれます。

ISMRMは毎年、魅力的な場所で開催されます。来年は、風光明媚で風が心地よい5月に、カナダ・バンクーバーで開催の予定です。来年こそは、virtualではなく現地での開催を期待しましょう!

ISMRM2017オープニングセレモニー

ISMRM2021バンクーバー会場(予定)周囲の風景

『ISMRM Virtual Meeting』
北海道大学大学院 医学研究院 画像診断学教室 工藤與亮先生

ISMRMは2006年のシアトルが最初の参加で、ちょうど米国留学中であった。その後、2007年のベルリン、2009年のホノルル、2010年のストックホルム、2011年のモントリオール、2012年のメルボルン、2013年のソルトレークシティー(尿管結石により直前にキャンセル)、2014年のミラノ、2015年のトロント、2016年のシンガポール、2017年のホノルル、2019年のモントリオールと参加してきたが、最近は学会期間中に〆切のある仕事が舞い込んでくることが多く、なかなかゆっくりと参加できなかった。今年はシドニーでの開催ということで時差もなく、じっくりと参加できると考えていたが、COVID-19の感染拡大によりVirtual Conferenceとなり、リアルタイムのディスカッションが日本時間だと夜になったため、もっぱらオンデマンドでの視聴となった。また、Virtual Conferenceだと仕事やプライベートの合間の参加になるため、まとまった時間がとりにくく、時差と闘いながらのオンサイトでの参加の方が学会に集中できる気がした。とは言っても、ISMRMは非常にトピックが広く、オンサイトであってもWeb開催であっても、いずれにしても全部を見ることは不可能に近い。
今年のISMRMでの日本人としての大きなトピックは、名古屋大学の長縄慎二先生がSenior Fellows、京都大学の富樫かおり先生がGold Medalを獲得したことと思われる。日本人としてとても誇らしく感じ、特に長縄先生は専門領域が同じニューロであり、とても勇気づけられた。同じく名古屋大学の田岡先生が参加されていた「CSF Flow & Glymphatic Imaging」のQ&Aセッションで田岡先生が「Peri-Perivascular spaceが見たい」と仰っていたのが印象的であった。これは我が意を得たりで、脳内の水動態を考えるにあたり、マクロなCSFのbulk flowや血流、ミクロな脳実質内の拡散をつなぐ、Perivascular space周囲の水の動きを解明することにより、様々な疾患の病態の理解につながる可能性がある。最近のNeuroinflammationのトピックではBlood Brain Barrier(BBB)のleakageの発表も増えてきており、認知症や頭部外傷での血管透過性の亢進を考えるにあたり、BBBをミクロレベルで考える必要があり、それをイメージングとしてどう見ていくかも重要な課題であると感じた。MRIはボクセル内の微小環境を画像化できるたぐいまれなモダリティであり、MicroscopicとMacroscopicの間の概念であるMesoscopicな分子の挙動を探索していくのが期待される。
人工知能(AI)はどうであったか。ISMRMという学会の特性もあるが、Deep Learningを中心としたAI技術は画像再構成やノイズ除去、セグメンテーションなどでは非常に有力なツールとして確立されているのに対して、MSとNMOの鑑別、脳腫瘍の組織系の鑑別、病態や予後の予測などの臨床応用ではまだまだ最適化が必要な印象を受けた。
来年のISMRMがどういう形式になるかは今後の状況次第かもしれないが、多くの学会がWeb開催となり、発表する機会、発表を見る機会が担保されているのに対し、In personでのディスカッション、情報交換、雑談、旧交を温めるなど、やはりオンサイトでの開催には多くのメリットがある。特にISMRMは世界中から基礎系・臨床系の様々な研究者が集まる学会であり、是非、オンサイトでの開催を期待したい。

 

 

2020/08/03(月)

『ECR(European Congress of Radiology) 2020 視聴報告』
大阪大学大学院医学系研究科次世代画像診断学共同研究講座 鍔本美津子先生

ECR(European Congress of Radiology)は毎年ウイーンで開催されるヨーロッパで最大級の放射線科学会です。2020年はCOVID-19のパンデミックに伴い、onlineのみでの開催となり、期日も従来の3月より7月に変更となりました。OnlineではLive-accessはもちろんのこと、年末までの長期間on-demand access ができます。今回私は、live-accessとon-demand accessでCOVID-19に着目して視聴しました。Live-accessでは最終日以外の毎日夕刻のheadline session としてCOVID-19関連の話題が特集されており、on-demand accessではCOVID-19に関してだけでも11個のセッションが設けられ注目度の高いトピックスでした。内容に関しては画像所見や病状のみならず、各国の状況や、検診、がん患者らに対する影響、検査室のマネージメント、AIが寄与する可能性など多岐にわたっていました。

Imaging in COVID-19 complicationsのセッションでは、①ARDS、②肺塞栓、③脳の合併症についてレクチャーがありました。①ARDSに関しては、COVID-19肺炎の予後予測と線維化の危険因子について解説がありました。COVID-19肺炎がARDSに進展するかどうかを初回のCT画像で予測できるかというテーマに対し、異常陰影の全肺野に対する割合で判断し、異常陰影の範囲が25%以下であればリスクは低く、26%以上であればリスクが高いという簡便な指標が報告されていました。ARDSからの生存者における肺の線維化の危険因子は、まだわかっていませんが、線維化があれば死亡率は高いので線維化の有無を判断することは重要と結論されていました。②肺塞栓は、造影CTを施行したCOVID-19患者の4分の1から3分の1に認められる合併症です。凝固系が亢進しているためとされています。segmental ~subsegmental の肺動脈に血栓を認める事が多く、虚血性心疾患、動脈系の塞栓も見受けられるようです。また肺野の血管影が拡張していることもあり、末梢の肺動脈が拡張し、あたかもtree-in-bud のように見える画像の提示もありました。最後に③脳の合併症についてです。SARS-CoV2 virus はACE2受容体を関して細胞内に入りますが、この受容体は肺胞上皮以外に、小腸、血管内皮細胞、免疫細胞、心筋や、中枢神経領域にも認められるそうです。脳の合併症を引き起こすには2つの経路が想定されていて、ひとつは気道や肺から血行性に侵入する経路。もう一つは嗅球を介して直接的に脳へ侵入する経路です。軽症~中等症の神経学的合併症として、嗅覚障害の症例が、嗅球の異常信号を呈するMRI画像とともに呈示されていました。また、重症患者の神経学的合併症として頭蓋内のサイトカインストームと関連づけて、Acute hemorrhagic necrotizing encephalopathy、Cytotoxic lesion of Corpus Callosum(CLOCC)、髄膜炎、梗塞など、いくつかの画像を呈示しながら説明されていました。

コロナ禍でweb開催の学会研究会が続いています。On-demand配信があれば、くまなく視聴したり、何度も聞き直したりできるメリットもありますが、web開催だけでは情報交換の欠如により、感化されたり刺激を受けたりする機会が減少するデメリットもあるでしょう。しかし、一昔前であれば、web開催するということも不可能であった事を思えばありがたい限りです。知恵と知識を蓄え文明を育ませながら、この時代を乗り越えたいと考えます。

大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座放射線医学教室

 

『ECR 2020 Onlineに参加して』
愛知医科大学 放射線科 鈴木耕次郎先生

2020年7月15日~7月19日にweb開催されたECR2020 Onlineに関して、IVR領域を中心に報告したいと思います。ECR2020は本来3月11日から5日間ウィーンで開催される予定でしたが、2月下旬頃にはEUでもCOVID19の感染が増え始め、3月初旬にESRからECRが 6月15日~19日に延期されると連絡がありました。その後もCOVID19の蔓延が悪化し、4月初旬にonlineのみでの開催に変更になる旨通知がありました。COVID19の蔓延状況を勘案すると致し方ないと思いますが、webのみでも開催されることは良かったと思います。
さて、本題のECR2020ですが、webサイトは総じて使い勝手がよく、プログラム確認や検索なども容易に行うことが出来ました。時差の関係や日常業務の兼ね合いもあり、on timeでのlive配信を視聴することは少し難しかったですが、録画されたセッションやposter exhibitionを中心に視聴しました。EPOSは全部で3814題(scientific exhibit:1797題、educational exhibit:1860題、eurosafe imaging:157題)の発表がありました。Non-vascular IVRでは、チェニジアのAbid先生らがCTガイド下膵生検110例の報告をしていました。膵のCT下生検は目新しいIVRではありませんが、本邦では内視鏡的なEUS-FNAが第一選択となっており、110例の報告は症例数が非常に多いと思います。経腹的直接穿刺、経肝的穿刺、経胃的穿刺、経後腹膜穿刺など様々な方向から生検が行われ、重度合併症はなく安全な方法であると結論されていました。この結果を見ると、膵のCT下生検を不安なく行うことが出来ます。Vascular IVRでは、educationでシンガポールのShi先生らが副腎静脈サンプリングで右副腎静脈のover-selectiveによる偽陰性に関して報告していました。これはカテーテル先端が奥に入りすぎて正常副腎部分からの採血になってしまうことで、サンプリング時のカテーテル位置、血管造影所見を詳細に評価する重要性を再認識しました。
IVR領域の受賞では、ポーランドのRago先生らが、”Intraarterial chemioterapy in retinoblastoma treatment – 4 years experience”でCum Laudeを、国立がんセンター中央病院の菅原先生らが”Direct embolization technique via preexisting nonvascular route for major arterial injury: when and how to do it”でCertificate of Meritを受賞されていました。菅原先生らの発表は、穿刺やドレナージなどのトラクト経由で直接動脈損傷部をコイルやゼラチンスポンジで塞栓する方法で、非常に上手く止血が得られた症例を数多く提示していました。これは日常診療においてのトラブルシューティングとして非常に勉強になる内容でした。
最後に、COVID19のパンデミックが早く終焉を迎え、例年通りウィーンでのECRに早く参加できるようになることを祈願してECR2020の報告を終わりたいと思います。


写真1: 愛知医科大学病院


写真2: IVRスタッフ

『ECR 2020 Onlineに参加して』
京都大学医学部附属病院 放射線部 片岡正子先生

今年は、COVID-19感染が日本のみならずヨーロッパ諸国にも広がり、ECRも直前で延期、そしてWeb開催に変更を強いられた。初めてウィーンの学会参加を予定していた人にとっては残念ではあったと思う。しかし、当時の混乱状況を考えると、多くの発表予定であった力作の教育講演、演題が学会お蔵入りにならなかったというだけでもまずは良しとしなければいけないのかもしれない。今後ますます広がるであろう、Web開催の学会の在り方を示す試金石として、注目していた。
発表準備について、大学院生が口演発表となっていたがスライドに音声を入れて動画を作成ということであった。本番に英語を忘れたらどうしよう?というプレッシャーからは開放されるが、リアルタイムの議論の機会がないのはせっかく口演なのに物足りない。質疑応答の機会をどのように提供し活性化させるのかは、今後の課題と思われた。
会期であった7月の15-19日までは、1時間程度を単位として、Liveの口演やシンポジウムが行われた。
シンポジスト3~4名の口演と、座長を交えてのQAセッション。画像の下に、チャットのような質問コーナーがあり、視聴者からの質問も取り上げられる形式となっていた。チャットで書き込めばいいので、非英語圏の人間には実はハードルが低いかもしれないとも思った。
Table Talk というコーナーでは、ECRの会長が、演者を招いて、今注目の話題についてどんどん質問をする、言ってみればWebインタビューコーナーである。いくつかあるトピックのなかでも、ESR iGuide (clinical decision support for referrers)を取り上げたい。臨床医が画像をオーダーする際のサポート機能を担うガイドライン及びそれを使うためのアプリのようである。(詳細:http://www.esriguide.org/)基準となるガイドラインは、アメリカのACR appropriateness criteriaそのままの部分もあれば、European Society 独自のガイドラインを用いているものもある。学会はこれの使用を進めていきたいように思われたが、今後の発展は注目に値する。ヨーロッパ全体が同じ基準でいいのかどうかは疑問ではあるが、少なくとも検査の適正化には役立つようである。E-learningに関する話題も取り上げられていた。
シンポジウムではBreast imaging に関するトピックもMRIやスクリーニングを話題にしたものがみられたが、数はあまり多くなかった。肺がんスクリーニングについてのセッションがあったが、いずれのスクリーニングも紹介する臨床医との協力や、AIの導入による読影の効率化が話題に挙がっていた。他に、COVID-19 関連、AI関連のトピックも目立っていた。
ただ、初めて参加したECR2020 Onlineの5日間で、内容がチェックできていないものが沢山ありそうだ。まず、最初1-2日ほどは、oralの検索の仕方がよくわからず、見たいものを探すのに右往左往した。Liveの口演がどの時間でどのように行われるのかわからずいくつか聞きたかったTalkを逃したようである(毎日メールでお知らせが来たのではあるが)。そして、時差のため夕方~夜半過ぎ(日本時間)に様々なLiveイベントが行われ、毎日寝不足になった。多くのものを見逃したに違いないと落胆していたら、これらのコンテンツはトピック毎に分けて、”Highlight Week” という形で会期後から11月にかけて再放送されるとのことで、ちょっとほっとした。


画像:ECR Online 参加中

2019/12/20(金)

第105回北米放射線学会(RSNA2019)レポート:AIとモバイルCT
富山大学医学部 放射線診断・治療学講座 野口京先生

北米放射線学会(RSNA)は、世界最大の年次医学会の1つであり、11月の最終日曜日から1週間シカゴで開催されている。今年のRSNAのテーマは「See possibilities together」(図1)。毎年5万数千人が参加しており、午前7時頃は閑散としていても、午前10時頃となると通路が参加者で一杯になる(図2,3)。

今回の学会に参加してみると、人工知能(AI)との関係性がさらに密になりつつあると感じた。年々AIに関するトピックスが増加しており、Artificial Intelligence (AI) (人工知能)、Machine Learning (ML)(機械学習)そしてDeep Learning (DL)(深層学習)などのセッションが19と大幅に増加していた(2018年度から8セッション増加)。今年から“AI Showcase”というAI関連企業専用の展示ブースが登場し、そこには130社をこえる出展社が自社のソフトウェアや製品などのデモンストレーションをおこなっていた(図4)。ほとんどはいわゆるスタートアップといわれる小さな企業のようであるが、放射線医学という領域がすでにオープンな市場としてさまざまなスケールの企業が参入を進めており、RSNA自体もそれを受け入れていると感じた。AIやDLは放射線科医の極めて強力なツールとなりうるものの、その仕組を体系的に理解することは容易ではないため、RSNAは“RSNA AI Deep Learning Lab”と称したユニークなセッションを開催していた。このセッションではオープンソースのAI/DLツールを使い、参加者が自身のPCで実際のDLの動作を体験するというものである。カバーする内容もデータをその特長によって「分類」するようなシンプルなタスクを通してAIの基礎を学ぶようなものから、もっと高度な「セグメンテーション」のさせかた、例えばMRI画像をCT画像に変換するような処理を可能とするGANsと呼ばれる高度なDLアルゴリズムの解説など広範囲におよんでおり、放射線科医がAIやDLを単なるブラックボックスとしてその理解を諦めないための試みであると思われる。一方、学会発表に目をやると、ニューロの分野では腫瘍のセグメンテーションやテクスチャ解析、動脈瘤あるいは骨折部位の自動検出などの発表が多かった。

企業展示に目を移すとやはり、AIによる診断支援や撮影支援などのトピックスが多かった。MRIに関してはフィンガープリンティング技術がアプリケーションソフトとして使用できるようになるということであり、今後の盛り上がりが期待される。

私が個人的にこの学会で最も興味深かった装置がシーメンスヘルスケアのブースに展示されていた。それは頭部専用のモバイルCTである(図5)。高さがおよそ1.5メートル、幅は2メートル弱、厚みは80センチにも満たない。患者テーブルはなくガントリーだけが台車に乗ったかのようなコンパクトなCTスキャナである。ポータブルX線装置のようなパワーアシストがついており、重さは900キロほどあるとのことだが、実機を実際に動かしてみるとその取り回しは軽々としていた。このCTはICUなど患者のベッドサイドに直接持ち込んで撮影するというコンセプトになっており、そのため電源は通常のAC100Vで動作するそうである。ガントリー自体が望遠鏡の筒のように患者の頭部を包み込んで撮影をするため、特別なX線遮蔽も必要ないとのことである。仕様的には32スライスのマルチスライスCTで、ガントリー開口は35センチ、頭部撮影にチューニングされたX線管球と低ノイズ型検出器ユニットに加えて、逐次近似再構成アルゴリズムや金属アーチファクト除去アルゴリズムなど頭部撮影に必要なスペックが整っているとのことである。実際に撮影された臨床画像を見せてもらったが、非造影画像もCTA画像も事前の予想に反して頭部診断画像としては極めて良好な画像であり、日頃読影している汎用CTの頭部画像に引けを取らない画質であった。残念ながら筆者が研究しているDual-energyには対応していないということであるが、このサイズのCTスキャナであれば救急車に搭載するなどの応用も効くことから、スピードが命である急性期脳梗塞の診断おいて、地域医療等のみならずストロークユニットなどにおいても重要な役割を担う可能性がある。

 
図1:RSNA2019              図2:火曜日午前7時

 
図3:火曜日午前10時           図4:AI Showcase


図5:モバイルCT

 

『RSNA2019』
産業医科大学放射線学教室 青木隆敏先生

2019年12月1日(日)から12月6日(金)までの6日間、アメリカシカゴのマコーミックプレイスで開催された第105回北米放射線学会(RSNA2019)に参加しました。今年のテーマは“See Possibilities Together”で、オープニングセッションでは紹介医や患者と協調した医療を行うことの重要性が示されました。AI等のIT技術の進歩が医療の変革をもたらしている中で、放射線科医はいかに患者と向き合うかを考えさせる内容でした。
今年のRSNAもメイントピックスは“Artificial Intelligence(AI)”で、私が参加したMusculoskeletal (Machine Learning and Artificial Intelligence) のscientific sessionでは、座長から、今年は骨軟部領域だけでも100題を超えるAI関連演題が応募され、このセッションの演題は9題であることから採択は極めて狭き門であったことが報告されました。昨年は単純X線写真の骨折評価やMRIでの靭帯損傷など、AIによる全自動診断を取り入れることで高い診断能が得られることを示した報告がありましたが、今年は病変検出の診断支援に加えて、膝の単純X線写真から将来の変形性膝関節の軟骨障害の予測を行うなど、AIを用いて画像から予後予測を行う主旨の発表がありました。その他、膝MRIを用いた軟骨評価にAIを取り入れ、領域ごとのT2*値やT1ρ値を自動計測した発表や、MRI画像から軟骨のコラーゲンやプロテオグリカンの量を予測した発表など、これまでよりもさらに高度なAIのパフォーマンスが報告されていました。また、一昨年前からtechnical exhibitsに新設された”Machine Learning Showcase”は”AI showcase”と名称を変え、ノースビルディング会場奥の広大なスペースには、昨年の約2倍の企業がブースを出展していました。日本からも複数の新たな企業がブースを設けていましたが、中国企業や韓国のベンチャー企業の躍進ぶりは目を見張るものがあります。この展示場の中にあるAI theater では、各企業が短時間で展示内容のプレゼンテーションを行っており、骨軟部領域のMRIでは、膝関節の半月板/軟骨損傷や、脊椎の脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアについて精度の高い自動診断ソフトが開発されていることなどが発表されていました。
ビックデータ、AIと画像診断分野のパラダイムシフトが進む中で、その動向に注目しながら、今取り組むべきは何かを考えねばならないことを実感した今年のRSNAでした。


ノースビルディング会場奥のAI showcase


マコーミックプレイスのグランドコンコースから見えるシカゴの街

2019/11/07(木)

『JFR 2019に参加して』
大阪大学 放射線科 高橋洋人先生

JFR – Journées Françaises de Radiologieはパリ市内、凱旋門から徒歩約15分の距離にある会場のPalais des Congrèsにて毎年10月上旬に開催される放射線医学全般に関する学会であり、日本のJRC(日本放射線学会総会)に該当するフランス国内最大規模の学会である。今年は2019年10月11日から14日まで開催され、これに参加した。Palais des Congrèsはレストランやショッピング施設も入る巨大複合施設である。アクセスはよく会場近くまで地下鉄が乗り入れており、また凱旋門やシャンゼリゼ通りへも徒歩圏内であるため観光にも便利な場所である。学会はそのうちの3フロアを使用し、科学報告(講演、口語発表)、また電子ポスターによる教育展示や科学報告が行われ、また各フロアを用いて企業展示、機器展示が行われていた。また会場はlevel 1以上の階(日本の2F以上)で行われており、そこへ上がるエスカレーターでバッジのバーコードチェックが入場者全員へ行われており、セキュリティへの配慮が感じられた。
主にフランス語にて報告、講演はなされており、その内容の理解にはフランス語への高い理解力が要求される。スライドのフィギュアなどがある程度助けにはなるが、正直自分を含め非フランス語圏からの参加はやや敷居が高く感じられた。ただし、JRC同様に国際化にも力がいれられており一部招待講演などは英語でも行われ、JRSやRSNAをはじめ他国の放射線学会との連携もなされている。ポスター展示においては日本からの演題発表もいくつか見られ、また日本人演者による講演も行われている。科学報告のセッションは毎日朝8:00代から夕方17:00代、あるいは18:00代までかなり密に組まれており、頭部、骨軟部、胸腹部の領域ごと、またIRやエコーなどのデバイスに焦点をあてたセッションなど放射線医学領域を網羅するかなり多彩な内容であった。内容がフランス語主体であり、すべてを拝聴はできていないが、学会programを参照すると臨床診断に関する実践的な内容や、モダリティに関する基礎的な内容など多彩であり、またセッションごとの組み方がより特定の目的にフォーカスした視点からのものが多く思われた。またやはりAI(人工知能)に関するセッションも多く組まれ、内容はビッグデータの取り扱いやマシンラーニングなど基礎的な内容の講演、画像診断への応用など最新のトピックなものも多くその関心の高さがうかがわれた。1セッションが1時間前後、1演題あたり15分ほどであった。全体的にレベルは高く、私が参加した各講演会場は満席に近いことが多く、参加者の講演に対する関心の高さがうかがえた。私は専門が脳神経領域であるため主にその領域の講演、発表をいくつか拝聴している。パーキンソン病のイメージングに関して神経メラニン画像の有用性や、パーキンソニズム症候群の画像による評価のポイント、またそれに関連する解剖学的な解説、病態メカニズムなど、このセッションは英語での講演もあり、スライド内容などと併せ非常に理解しやすい内容となっていた。また全体的に脳神経領域の講演会場は満席であったり、会場入り口周辺での立ち見も見られ、フランスでの脳神経領域イメージングへの関心の高さを感じた。
同期間中は併せてパリ市内を散策したが、治安は特に問題なく凱旋門やシャンゼリゼ通りを歩くことができた。またセーヌ川沿いやモンマルトル周辺も観光客が多く、普段のパリを取り戻していると感じられた。JFR会期中の10月上旬のパリは涼しく、好天に恵まれることが多いと思う。またサマータイム中でもあり夕刻6:00過ぎでも明るい。街角ごとにあるカフェでは大勢の地元の人、また観光客が遅くまで過ごしており街全体はリラックスした雰囲気を感じることができた。秋のパリもおすすめである。

『JFR2019と日仏交換留学に参加して ~フランスへの誘い~』
順天堂大学放射線診断学講座 佐藤香菜子先生

私は昨年ゲルべジャパンの支援による日仏交換留学にてフランスに留学し、その間の研究内容を今年10月11日から14日にパリで開かれたJournées Francophones de Radiologie (JFR)にて発表した。JFRは毎年10月に凱旋門を少しこえたところにあるPalais des Congrès de Parisで開催され、日本での総会や秋季大会のような位置づけかと思う。会場は1つの建物内にありややこじんまりしているが、ショッピングモールやハイアットホテルと隣接しており便利である。学会初日には授賞式を兼ねたピアノコンサートがあり、お知らせのチラシを会場で竹馬に乗った女性が配っていて、フランスらしく遊び心がある光景だった。講演はほとんどフランス人によるフランス語での発表だが、時にカナダ、アルジェリア、韓国などからの発表や英語の発表もあった。フランスでは研究よりも一般臨床が重視されている傾向があり、大部分が教育講演だった。エコーやIVR、骨軟部については日本より盛んであるため講演が多く、特にエコーはワークショップが多かった。最先端の撮像法に関する発表は日本より少なかったが、最適なMRIの撮像法やAIについてはいくつか講演がみられた。ポスターはeducational部門とscientific部門があり、いずれも電子ポスターでプレゼンなどはない。ポスターも基本的にはフランス語だが英語でも可能であり、私は皮質形成異常の新たな1型について自分の研究結果を含めたeducational posterを英語で投稿した。留学先の先生方の助けもありポスター賞をとることができ、よいおみやげになった。
13日の夜にはエッフェル塔が窓から見えるMusée de l’Hommeでカクテルパーティーがあり、パリの放射線科医達の社交場となっていた。その他、学会中にたまたまモンマルトルで秋のワイン収穫祭がやっており、新鮮なチーズやワインを販売している屋台で食べ歩きをしたり、ワイン畑や昔ながらのシャンソンバーを見学したりできた。フランスでは季節ごとにいろいろなフェスティバルがやっており、参加できると楽しい。
昨年の私のフランス留学は、2017年度から日本医学放射線学会とフランス放射線学会の間で開始された交換留学プログラムによるもので、これまでに日本から8名、フランスから9名の留学者がいる。研修病院や期間は応募者の希望と両学会の調整により決定され、私はパリのSainte-Anne病院に約半年間留学した。私の参加した第1期はSainte-Anne病院へ2名、Bordeaux大学病院へ1名、Institute Gustave Roussyへ1名が留学した。第1期はすべてが手探りの状態で体制も整っておらず、私はビザ取得の遅れにより出発が2018年3月からとなった。しかし、2018年は日仏交流160周年記念の年で、フランスではさまざまなジャポニズムイベントが行われており、かえってふさわしい時期に留学できたと思う。私のいる順天堂大学にはフランスからの放射線科レジデント計4名が留学に来たため、研修のサポートや日仏の情報交換をしたり、お互いの語学や文化を教え合ったりして、友人となることができた。彼女らも今回のJFRでは順天堂大学で行った研究の発表をしており、病院レベルと個人レベルの双方で日仏交流ができていると思う。今後もこのプロジェクトは続く予定であり、興味がある方には参加をお勧めしたい。


夜のカクテルパーティーはパリの放射線科医達の社交場


フランス人交換留学生と


学会場でのピアノコンサート


チラシを竹馬で配る女性

2019/09/30(月)

『ESUR 2019@Dublinに参加して』
札幌医科大学医学部放射線診断学 畠中正光先生

最近、前立腺や子宮疾患の拡散関連パラメータの研究を行っているのでDublinで開催された26th European Symposium on Urogenital Radiologyに初めて参加した。
私の年代の者(昭和60年卒)には北アイルランド紛争は強く記憶に残っている。Brexitになったら国境問題が再燃し、以前のIRAによるテロに似た事件が生じるのではないかとの懸念もあり、Dublinについて機内で多少予習してみた。以前フィンランドに行った際に、シベリウス・フィンランディアを知らず、フィンランド人のある教授(ご両親ともに音楽家であり、自分は音楽の才能がなかったから医師になったと仰っていた)からご教授頂いた痛い過去もある。早速、市内中心部に位置するTrinity College DublinのLong Roomに出かけた。何と16世紀の解剖学者Andreas Vesalius先生による詳細な解剖書が展示されていた(図1)。関ヶ原の戦いの前である。ダ・ヴィンチやミケランジェロも解剖学の研究を行っていたと言うから珍しくはないのかもしれないが。誤解されるといけないので白状しておくが、Andreas Vesalius先生を知ったのは展示本の説明を読んだ時である。
さて、当の学会はというと、各専門領域のグループミーティングの雰囲気は異なるのかもしれないが、新たな研究の発表の場として侃々諤々という感じではなく、最新の知見を共有しましょうといった和やかな雰囲気である。司会者が中央に座り、横で演者がプレゼンを行うというスタイルからも雰囲気が伝わるのではないだろうか(図2)。ESURといえば造影剤のガイドラインが有名なのでESUR Tutorial: Updates on Contrast Mediumに参加した。司会者が最初に特に新しいことはないと言っていたのが印象的ではあったが、実際、特別な知見はない様だった。ただ、適切な診断は重要であり、透析患者であっても、他に方法がないならGd造影剤を使ってMRI検査を行うことを考慮すべきだと発言されていたのが印象に残った。他に適切な検査法がないこと、造影MRIを行えば「適切な」診断が可能であることの蓋然性が高いこと、などの立証は簡単ではないように思われるが。
今回、京都大学の木戸晶先生に大変お世話になった。富樫先生の後任として多くのミーティングに活発に参加し活躍されており、高名な先生方にご紹介いただいた。公式Dinnerの際にご紹介頂いたRomeのGabrielle Masselli先生ご夫妻とホテルの朝食会場で一緒になり、これから私の発表があるからとのことで普段は参加しない最終日のPlacentaセッションに参加したお陰で、こちらも前夜にご紹介頂いたCopenhagenのVibeke Berg Logager先生から声をかけられ前立腺DWIのb-valueに関する議論ができた。と言うのも私の発表は、Prostate V2: Advanced Prostate Imagingの裏に配置されたため、このセッションに参加できずやるせない思いを抱えていたところ、木戸先生に救われたのである。PSMAに脅威を感じていたが、「前立腺は益々拡散強調像の役割が重視されているようですよ」との木戸先生のお言葉にも気をよくしてDublinを後にすることができた。
次回は、2020年9月3~6日、Lisbonでの開催予定であり、メインテーマはUrogenital Radiology and Oncology: Present and Futureである。是非ご参加ください。


図1 解剖学者Andreas Vesalius先生による詳細な解剖書


図2 学会場