『ISMRM 2023に参加して』
川崎医科大学 放射線診断学 玉田 勉先生
カナダのトロントで開催された2023 ISMRM & ISMRT Annual Meeting & Exhibitionに参加いたしました。2019年にモントリオールで開催されて以来の3年ぶりの現地参加です(virtual meetingもあり)。我々の教室からは7演題をもって7名で参加しました(図1)。トロント市庁舎(図2)の前のホテルに滞在し、歩いておよそ15分のMetro Toronto Convention Centre (MTCC)が学会場でした。着いた日は日本より湿度が高く予想外でありましたが、その後は快適に過ごすことができました。私自身はトロントのISMRMは2008年以来の参加となります。この度の学会は久々の現地開催のためかポスターセッションなどがこれまで以上に活発に討論されていたのが印象的でした。
さて泌尿器領域のトピックスについて触れたいと思います。まず前立腺ですが、令和4年度に保険収載となったMRガイド下生検について、その中のin-bore生検の有用性が報告されていました(0726)。本邦では保険収載となったMR超音波fusion生検が現在急速に普及していますが、臨床的有意癌の検出能だけでなく、局所療法(HIFU、凍結療法、小線源治療など)への応用といった点でどの生検方法が臨床的に最も有益であるのか検証する必要があると感じました。次に定量評価としてT1値、T2値の同時収集における様々な撮像法を用いた臨床研究が報告されていました。それにはMR fingerprinting(2361、2367、2356)、Synthetic MRI(1877、206、2073)およびCalculated DWI(1866)が含まれていました。特に興味深かったのは、拡散強調像の撮像におけるb0画像を複数のTR、TEを用いて撮像し、ADC mapとともに、T1 mapping、T2 mappingを同時収集するCalculated DWI(MRME-DWI acquisition)であり、PI-RADS 3病変における良悪の鑑別にT1値、T2値がADCに比して有用であったと報告されていました。無駄な前立腺生検を抑える臨床効果に期待したいです(1866)。次に拡散強調像において最近話題となっているmicrostructural imagingについては、Hybrid Multidimensional MRI (0316、0725)、Luminal Water Imaging(0314、1641)およびDiffusion-Relaxation Correlation Spectrum Imaging(1227)の演題が登録されていました。これらは、前立腺組織を上皮、管腔および間質成分に分離して測定することが可能であり、MRI invisible tumorを含めた前立腺癌の検出や悪性度の評価において高い精度を示すと期待されています。今後は撮像時間の短縮に向けた取り組みが加速すると予想されます。最後に深層学習を用いた前立腺癌の診断モデルの有用性に関して複数の演題が登録されていました(1864、1878、3776)。様々な領域におけるAIを用いた画像診断モデルの確立は予想外に遅れている印象ですが、系統的な診断が行われる前立腺MRIにおいては臨床応用される可能性を秘めており今後expert radiologistsとの診断能の比較における知見が数多く発表されると思いました。
次に膀胱ですが、筋層浸潤の評価基準であるVI-RADSにおいて中心的な役割を担っている拡散強調像における様々な定量モデルを用いた筋層浸潤および組織グレード分類の診断能の比較が行われていました(0728、0968、1500、1501、1675、5168)。このような研究の発展は膀胱癌においてもバイパラメトリックMRIの臨床応用といった風潮に繋がると予想されました。
最後に腎臓です。humanのchronic kidney diseaseにおける非造影MRIの活用に関する演題を取り上げます(1221、1285、1292、2424、3048、3630、3800、3801、3802、5357)。この中で演題1221は、早期糖尿病性腎症において尿中アルブミンが正常であるにもかかわらず腎機能障害が進行するNADKD(normoalbuminuric diabetic kidney disease)の原因を検索するために、T1 mapping, T2 mapping、BOLD MRI、ASLやSSFPといったマルチパラメトリックMRIを用いて前向きに検討した結果、NADKDはその他の早期糖尿病に比して、腎皮質のT1値が高く、皮髄コントラストが低下するすなわち皮質の線維化がこのような早期の段階のNADKDにおいて生じていることを示唆し、NADKDの病態解明と早期診断における非造影MRIの有用性を報告しました。
ISMRMでは、今回紹介した臨床的な演題ばかりでなく、撮像技術の発展や撮像機器の開発状況などにも触れることができると共に、臨床医ばかりでなく多くの技術者とも交流ができ、MRIの臨床や研究において多くの知見やヒントを得ることができる有意義な学会であるため日本からも多くの若い先生方に参加されてはと思います。
図1 学会場での集合撮影
図2 トロントの市庁舎
『Road to ISMRM in Toronto』
東北大学病院 メディカルITセンター 大田 英揮先生
初めてISMRMに参加したのは2009年のトロント開催でした。当時はシアトルに留学中でしたが、ミシガンに留学先が変更になり、シアトルからミシガンまで、約5000kmを10日かけて自家用車でアメリカを横断してきた直後のことでした。西部劇さながらの広大な景色の中を走り続け、タイヤのパンクや車の故障に見舞われ、毎晩知らない町のモーテルに泊まりながら、スリリングで充実した日々を経験しました。到着間もないタイミングで行われたISMRMにも車と電車で向かったため、トロントはさながら横断旅行の最終地点のようになりました。自分の発表はなく参加するだけでしたが、RSNAとは異なりISMRMのカジュアルでかつ、MRI技術の専門性の高い発表に驚いた記憶があります。私は会場に通い詰め、シアトルから帯同してきた小児科医の妻はSick Kidsの見学をし、2人とも時差ボケのない充実したトロントでの一週間を過ごしました。
その後は可能な限りISMRMには参加してきましたが、2015年も含め、今回は3回目のトロント訪問となりました。AMPC (Annual Meeting Program Committee)の方々とも知り合えたお陰で、初めてEducational Course のmoderatorに指名していただき、日曜朝に務めることとなりました。その日はちょうど、恒例のFun Runの開催日でもありました。留学中に始めたランニングは今も継続しており、各学会でのFun Runも楽しみにしているのですが、汗をかいた直後のmoderatorはさすがに厳しいと思い断念しました。ビブをつけたTシャツとショートパンツで談笑しながら、Fun Run後ホテルに戻る人達を横目に、スーツ姿で会場に向かいました。
Educational Courseのセッション開始前には、知り合いがすでに何人か来ており、久しぶりに挨拶と世間話ができました。一緒にmoderatorを担当したDr. Maki(コロラド大)も旧知の仲であったこともあり、リラックスして務めることができました。私が担当したのは心血管領域のVascular Imaging: Viewing Structure and Functionというセッションでしたが、基礎から最近のトレンドまで網羅的に講演を聴くことができ、知識のリフレッシュとしてはちょうど良かったと思います。ちなみに、宣伝となりますが、この秋に仙台で、UCSDの宮崎美津恵先生と私がlocal co-organizerを務めるSociety for Magnetic Resonance Angiography (SMRA) という学会が開催されます(ホームページリンクSMRA2023)。ISMRMの心血管領域を切り取ったような会で、この領域の著名人も多数来仙していただく予定です。今回は日本の先生方からも多数の演題を提出していただきました。ご興味のある方は、是非ご参加いただければ幸いです。なお、ゲルベ様には例年SMRAにもサポートをして頂いており、この場を借りて御礼申し上げます。
昨年のロンドン(英国)は、educational talkを依頼されたこともあり頑張って現地参加しましたが、帰国前PCRが必須だった状況下で、コロナを恐れて殆ど人と話をすることが出来ませんでした。今回はコロナ前と同じような雰囲気の中で会話をすることができて、ようやくnetworkingを重視するISMRMらしさが戻ってきたように感じました。学会の参加者は5000人以上ですが、オンライン参加は500人程度であったそうです。現地がコロナ前と同様になっていることもあり、セッションの進行中もオンラインチャットを気にかけることは難しく、フロアでのディスカッションに終始する状況でした。そうなるとオンタイムでの参加のメリットは少ないようにも思われ、私見ですが今後はオンサイト+オンデマンドが中心になっていくのかもしれません。日本からの正確な参加人数は把握していませんが、コロナ前よりは若干少なめの印象はありました。旅費が高いことも参加のハードルをあげていたのかもしれません。
ISMRMにはEducational Committeeがあり、私はメンバーとして参加しています。AMPCに次ぐ規模のcommitteeであることを、今回初めてオンサイトミーティングに参加して知りました。ミッションは良質な教育コンテンツを教育講演からキュレートすること、Youtubeなどを用いた教育コンテンツの作成、 web検索上でのプレゼンスをあげること(MRIの情報=ISMRM参照とできること)などです。誰でもアクセス出来るコンテンツは、MRIを広く知ってもらうためには重要ですが、member’s benefitとの兼ね合いがあり、どこで線引きをするかが課題として議論されていました。また、国内からの発表に限って言えば、個人情報保護法に抵触しないプロセスを踏む必要性があるように思います。今後の議論を注視していきたいと思います。
Scientific Sessionは、いかにも技術寄りのISMRMらしいと言うべきなのかもしれませんが、今回は臓器を跨がってセッションが組まれているものがいくつかありました。私が発表したPower pitchのセッションは”Pitch: Ask Not What You Can Do for Your AI; Ask What Your AI Can Do for You: Razor’s Edge in Neurovascular & Cardiovascular MRI”で、心臓、血管、脳の領域がまとまっていました。同僚の発表したセッションも同様でした。また、Machine Learning (ML)で括られたセッションもありましたが、それ以外のセッションでもAI/MLが含まれている演題はほぼ必ずと言って良いほど含まれていたと思います。AIの技術は、detectionやsegmentationの他にも、workflowの改善などにも多く活用されてきていますし、今後はAI/MLとして切り分けたセッションの枠組みは変わってくるかもしれません。
学会を通して、多くの中国人研究者が渡航ビザを取得できずに現地参加できなかったことは残念でした。他の国でも同様の事は生じていたようですが、やはり中国からの発表が近年非常に多いことを踏まえると、全体的に大きな影響があったと思います。スライドさえ提出していないのは論外ですが、代理人が現地にいないとビデオスライドを流すことも許されなかったのは、学術集会としては勿体ないと思いました。リベラルなISMRMとしては、もう少し寛容であってほしいと思いました。
写真1は、同僚の発表が終わった夕方に、会場隣にある地上447mのCNタワー展望台から撮影したトロントの街並みです。地上からでも前日までと空の見え方が違うことを感じていましたが、天気の割に視界が不良だったのは、ケベック州で発生していた森林火災が原因だったようです。通常は条件が良ければナイアガラの滝も見えるそうです。写真2ですが、参加できなかったFun Runの代わりに、時差ボケで目覚めた早朝にソロランをしたときの記録です。トロント大学構内や公園内を走って一筆書きをしてみました。トロントのロードに描いたISMRM、読めますでしょうか?
最後に、多忙な院内業務・そして腹部放射線学会を主催している中、長期の国外出張に送り出してくださいました、高瀬教授をはじめ東北大学の医局の先生方には深く感謝しております。どうもありがとうございました。
写真1
写真2
『ISMRM2023 現地レポート』
東邦大学医療センター大森病院 放射線科 堀 正明先生
2023年6月3日から8日にかけて、トロントで開かれたISMRM2023に現地参加をした。今回東京(成田)からシカゴ経由で、トロント入りしたが、まずシカゴ行きのフライトが遅延し、オヘア空港での乗り継ぎがギリギリで、トロントに到着したのは4日深夜であった。荷物は当然のように、翌日午後まで到着しなかった。なので、いろいろと予定を変更せざるを得ない状況でのスタートであった。なお、土曜以降のフライトは、私以外でも5時間以上遅延した、あるいは乗り継ぎが間に合わなくなりシカゴで1泊したなどの話をたくさん聞いている。
5日月曜、自分のデジタルポスターの発表「Anisotropic and Isotropic Kurtosis Estimation of Spinal Cord Microstructure in Multiple Sclerosis and Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder」があったので、指定されたPCの前で1時間立っていたところ、共同演者でもある、Julien Cohen-Adad先生(モントリオール工科大学)がふらっと立ち寄ってくれたので、数年ぶりに直接会話、議論ができたのは私にとっては大変良かった。事前に準備した話の内容ではなく、「そういえばこの前論文を出していたけれど、あの中で…」のような、思い付きかつ論文に記載するほどでもない細かいことが聞けるのは、貴重である。ところで、このデジタルポスター発表用のPCが配置されている場所の写真を示すが、かなり広く感じる(あるいは閑散として見える、図1)。これは、プログラム(https://www.ismrm.org/23/23program.htm#paagtop)を参照すると理解できるが、同時に9つのセッションが平行して行われているからである。なお、隣り合わせのPCはそれぞれ反対を向いている。この写真は月曜に撮影したので、閑散として見えるが、火曜や水曜にはかなり賑わっており、PC前での議論も多数行われていた。
なお、今年は紙のポスター掲示(Traditional Posters)もあり、教育展示や各チャプター(支部)の展示があった。ただ、指定された大きさは36 x 36インチ(約92㎝四方)というサイズであり、周囲に十分な空間があるのになぜこのような小さなサイズ指定であるのか、理解できなかった(図2)。
また、6日火曜午後のPower Pitch Session「Neurodegeneration in Human & Animal Models」、その後のScientific Sessions(口演)「Brain Microstructure: Restriction & Exchange」、8日木曜午後のScientific Sessions(口演)「Aging Brain」でmoderatorをする機会を頂いた。特にScientific Sessions(口演)は、2時間ずっとmoderatorをし続けるので、なかなかの労働である。通常moderatorは2人1組であるが、今回、「Aging Brain」のセッションではもう1人のmoderatorが、何の連絡もなく現れなかった。口演のmoderatorは、タイムキーパーも行わなければならないので、1人で2時間行うのは非常に難しい。たまたま会場にいた、順天堂大学の菊田潤子先生に急に壇上に上がって頂き、2時間タイムキーパーを務めて頂きました。本当にありがとうございました。
さて、肝心の内容であるが、私が火曜に座長をしたセッションのタイトル「Brain Microstructure: Restriction & Exchange」は、拡散MRIの現状かつ最先端を示していると思う。拡散テンソルを主とした脳の解析では、灰白質はあまり対象にならなかった。その後、拡散テンソル以外の解析手法や、MPG多軸や多数のb値、高い空間分解の撮像が、ハードやソフトの進化で可能となり、灰白質もその対象となった場合に問題となるのは、水の交換(exchange)である。他、脳の病的状態においても当然細胞内外の水の交換が促進しているような病態も考えられる。逆に、極論すれば今まで白質の評価は制限拡散(restriction)だけを考えた解析でもある程度成り立っていたと思う。さらに、soma(グリア細胞等)を考慮した拡散MRIの撮像、解析手法においては、白質においても当然水の交換の影響は解析上も無視できない要素である。なお、このセッションは世界でも著名な拡散MRIの研究者らの発表が多く、大変勉強になるものであった(図3)。
最後に、今年のFellowにQSTの青木伊知男先生、名古屋大学の田岡俊昭先生、Junior Fellowに以前フィリップスエレクトロニクスジャパンで現オックスフォード大学の鈴木由里子先生が選出されました。おめでとうございます。(Fellow、Junior Fellowはそれぞれ18人ずつ選出されます)。
図1 デジタルポスターセッションの場所
図2 紙ポスターコーナー
図3 「Brain Microstructure: Restriction & Exchange」で座長を務める筆者。横にいるのはもう1人の座長Ante Zhu先生(GE Globalのサイエンティスト)、発表者はDmitry S Novikov先生(NYU)
『ISMRM2023に参加して』
岐阜大学大学院医学系研究科 放射線医学分野 松尾 政之先生
2023年6月3日から6月8日にかけて、カナダのオンタリオ州トロントで行われたInternational Society of Magnetic Resonance in Medicine (ISMRM)に参加しました。
日本でも新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」となって以降初めてのISMRMであり、久しぶりにオンサイトで参加できたことで楽しめました。現地ではノーマスクが基本で、大変多くの参加者で賑わっており、アフターコロナへ向けて着実に歩み始めたことを実感することができました。
国際学会へ演題を通し、現地で発表をするということは研究活動への1つのモチベーションになると思いますので、このままコロナ禍前のように、特に若手放射線科医が国際学会へ積極的に参加できるようになることを期待致します。
Oral発表の質疑やDigital poster session, power pitch sessionでは非常に活発な討論が行われており、Web開催では実現しがたい本来あるべき学術集会の姿を見ることができました。また、多数のハイレベルなeducational sessionと最先端のscientific sessionが用意されており、いずれのキャリアの参加者も退屈させない構成は依然と変わりありませんでした。
Metro Toronto Convention Center
数ある演題の中でも、私が興味を持った臨床・基礎それぞれをご紹介します。
臨床では、Magnetic resonance signature matching (MRSIGMA)について紹介したいと思います(#1023, #E8341)。
MRSIGMAとは、real time MRIガイド下のadaptive radiation therapyを可能にすることが期待される技術の一つであり、その概念は2020年に発表されました。MRSIGMA はNon-real-timeのMotion learning stepと、real-timeのSignature matching stepの2 stepから構成されます。
motion learning stepでは、複数の呼吸サイクル中にXD-GRASPを基本とした方法で撮影を継続し、4D motion dictionaryを作成します。Signature matching stepでは、1回250ms以下の撮像時間でsignatureのみを取得し、25ms以下の時間で4D motion dictionary の最も一致する位置とmatchingを行います。すなわち、理論上275ms以下の時間での超短時間での画像化が可能となります。このMRSIGMAがいよいよ高磁場MRI一体型放射線治療装置であるElekta Unityの研究機に搭載されたという報告があり、装置上においても300ms以下の遅延で高解像度な画像化が可能であったとのことで、MRI撮像は時間がかかるという概念が覆され驚きを隠し得ませんでした。real time MRIガイド下のadaptive radiation therapyが普及すれば病変への効果的な照射とリスク臓器の被爆量低減が可能となるため、今後の更なる発展に期待したいと思います。
基礎研究分野では、本年度は低磁場(Low filed)MRIに関連する演題が多く発表されていたのが印象的でした。大会初日にはPrimer to Low filed MRIと題して、低磁場MRI(一般的には数mTから0.5 Tぐらいまでの磁場を示します)に関する教育セミナーがあり、低磁場MRIの利点として、主に永久磁石方式を採用するため液体ヘリウムが不要であること、RFシールドが不要であること、軽量化により様々な施設への設置や移設が容易であること、電源等が比較的安価なもので代用できるため低価格で開発できること、という利点が強調されていました。
低磁場MRIは特に50-100mTの範囲での装置開発が盛んで、マサチューセッツ総合病院/ハーバード大学医学部の研究グループは、頭部計測用Halbach方式の永久磁石マグネット(80mT、49×57×27cm、112Kg)のPortable MRI scannerの開発を行い、診断画像としてはまだ改善の余地があるものの、出血や梗塞、腫瘤病変などの診断に適用可能な画像が描出されていました。また、米国で初めて低磁場MRIでFDA認可を取得したメーカーのブースは連日盛況で、ブラジルなど米国外からも注目を浴びていました。
同メーカーのMRIは65mTの磁場強度を集中治療室などのベットサイドに設置可能な搬送型MRI(頭部用)として製品化していました(国内未承認)。本製品はiPadでの簡便な操作で通常のT1、T2画像やFLAIR、拡散協調等のスキャンに対応し、数分かけて画像を取得した後にさらに2分程度かけてAIアルゴリズムによる画像再構成で画質向上を行い、65mTという低磁場とは思えないような画像を実現していました(展示は会場近くの病院から1時間かけて搬入した実物)。
超偏極MRIを利用した13C分子による代謝イメージングでは、臨床用超核偏極装置(SPINlab)を用いた研究で有名なカリフォルニア大(UCSF)のグループ(27演題)を始め、60以上の演題がありました。
あるメーカーの超偏極担当マネージャーのお話では、これまでに世界各国で延べ1000回以上の超偏極13C分子による臨床研究実績が蓄積され、現在も世界15施設でSPINlabを用いた臨床研究を実施されているようです。また、新しい代謝標的として、Glioblastomaで高発現しているテロメアーゼサブユニットの逆転写酵素であるTERT発現によるペントースリン酸回路のフラックス変動を13C Gluconolactoneを用いて超偏極MRIで検出するという研究が報告されており、IDH1変異の検出を含めて超偏極MRI技術の独自性や有用性を高める臨床応用へ向けた研究展開が着実に進んでいることを実感しました。