2019/05/30(木)

『2019 ISMRMに参加して』
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 放射線診断治療学教室 福倉良彦先生

2019年のISMRMは5月11日から16日にかけて、モントリオールで開催されました。この学会は、教育講演が充実しており、かつ、最新の情報から理解不能な技術的な演題まで、盛りだくさんなので、私は、可能な限りこの学会には参加するようにしています。前回2011年にモントリオールで開催された時には参加できなかったので、初のモントリオールでのISMRMに参加となりました。近年、ISMRMは暖かい開催場所が続いていましたが、生まれも育ちも鹿児島の私にとっては、モントリオールはやはり寒く、コートを持ってきたらよかったと後悔するような気候でした。

今回も、例年同様、行きの機内で抄録で面白そうなセッションに目星をつけて、会場入りしたのですが、結局は会場での多くの時間をPower Pitch Sessionに費やしました。午前中に1回、午後に2回ほど行われるこのセッションは、多くの演題のダイジェスト版といった感じで、それだけで、十分新たな多くの知識を効率よく得られるので、皆さんにもお勧めです。

今年のISMRMの話題といえば、人工知能と定量化(機能画像)であったように思われました。人工知能に関しては、ここ2〜3年の熱狂的雰囲気はやや落ち着いた感があり、実践的な画像のノイズ除去や臓器・病変のセグメンテーションなどの内容に絞られていた様に思われました。機能画像による定量化に関しては、夢のある将来を予感させるMR spectroscopyによる腫瘍のpHやグルタミンの定量、実用化に近づきつつあるMR fingerprinting、既に臨床的に用いられているT1値やT2値、ADCなどのによるマルチパラメトリックイメージングの有用性の演題など多岐にわたっていました。

個人的に専門としている腹部MRIにおいては、呼吸による動きによる制約が1番の問題点であり、他領域で有用な検査が、腹部においては呼吸の動きにより、撮像困難であったり、良好な結果が得られないこともしばしばです。皆、日常の現場でこのような経験をし、悔しい思いをしていると思います。これまでも放射状サンプリングによる動きに強いシーケンスや圧縮センシングによる高速化および両者を組み合わせたGRASP(Golden-angle radial sparse parallel)による自然呼吸下のdynamic撮像が報告され、臨床的に使用可能となっています。今回も呼吸同期で圧縮センシング(ただし、Low-rank matrix変換使用)を用いたsaturation recovery法による膵臓癌のDCE MRIの報告があり、興味をそそられました。また、自然呼吸下のMR fingerprintingの演題も見られ、将来の上腹部MRIの発展を期待させるものでした。

カナダ第2の都市であるモントリオールは北米のパリともいわれており、言語はフランス語で、建物も他の北米の都市と異なり、ヨーロッパの雰囲気が漂っていました。折角なのでと、学会の合間に、ローマ・カトリック教会のノートルダム大聖堂を観光しました。知る人ぞ知るカナダ出身のセリーヌ・ディオンが結婚式を挙げた場所らしく、さすがローマ・カトリック教会!青を基調とした色彩豊かなステンドグラスに幻想的な装飾でした。最終日には、シルク・ドウ・ソレイユの本社がモントリオールにあることもあり、前日にチケットを手配して、行きました。これまで、5カ所のショーを見てきましたが、さすが本場、その名の通り「太陽のサーカス団」という感じで圧倒されました。そこから、大きな観覧車が見えますが、一緒にいた同僚が、観覧車からモントリオールの景色を見たいと恐怖の発言。高所恐怖症の私は、その観覧車を見上げて、ためらうも、比較的早く回転しているので、これ位の時間なら我慢できるかな?と思い同意。しかし、いざ乗車すると、やっと一周回って終わったと思いきや、続けて回転し、4回転もしてからやっと解放され、気分が悪くなりました。

発展の著しいMRIに携わる私たちにとってISMRMは貴重な学会と思います。MRIの発展を日本人が世界の研究者と一緒に先導出来ることを願って、来年開催地シドニーで、また会いましょう。

『ISMRM 2019に参加して』
杏林大学 医学部放射線医学教室 町田治彦先生

この度、5月11~16日にカナダのモントリオールで開催されたISMRM 2019にデジタルポスター発表された同僚の五明美穂先生(発表演題:#2662)、診療放射線技師かつMR専門技術者の高橋沙奈江さん(#2060)、福島啓太さん(#1700)と参加した(写真1)。私は2009年にハワイで開催されたISMRMでポスター発表して以来の2度目の参加であったが、今回はサポート役という立場であった。気候は日本の3月並みで、昼夜の気温差もあったため、上着が手放せなかった。モントリオールはフランスの影響を強く受け、食事が美味しいうえに、フランス語以外に英語も通じ便利であった。

モントリオール発祥の有名なエンタテインメントといえばシルク・ドゥ・ソレイユである。我々は、日本でも移動公演が行われたアレグリアという演目を鑑賞した(写真2)。アクロバティックな曲芸ももちろん盛り込まれていたが、単なるサーカスの域を超え、オペラ、ロック、ミュージカルなどとも融合した芸術作品に感じた。その他、外せない観光スポットとしてノートルダム大聖堂がある。壮大なスケールの外観を想像していたが、実際はダウンタウンのビル群に囲まれて佇んでおり気軽に足を運べる。しかし、中に入ると外の喧騒とは一線を画し、壮麗な装飾や引き込まれるような青を基調とした内壁に目を奪われた。カナダ人歌手のセリーヌ・ディオンが挙式した場所としても有名であり、多くの観光客を魅了しているのも容易に納得できた。

学会は6日間で最初の2日間はEducational Sessionのみ、後の4日間はこれに加えてScientific Session、Power Pitch Session(大きな口演会場でプレゼンが行われ、近い距離で議論が可能)、 Digital Poster Sessionなどが散りばめられた構成であった。全演題数は約5500で下調べしてから参加する必要があるが、部位・トレンド毎にプログラムが絶妙に組まれており、聴講希望が重複することは少なかった。RSNAやJRCと比べるとコンパクトであるが、教育講演はもちろん学術発表も、最新技術を貪欲に吸収したいという雰囲気の熱心な参加者が多かった。特に臨床医より工学系のバックグランドを有する研究者・技術者の参加が目立ち、産医一体を下支えしている印象を受けた。ポスター発表は電子ポスターのみ(今年から紙ポスター廃止)であり、発表者は自分のポスターのそばで1時間待機しなければならない。閲覧者は総じて目的意識が高く、我々のポスター発表に対しても鋭い質問をされ、おかげで議論が盛り上がった。

今大会のトレンドは人工知能(AI)技術であり、全演題の約2割がAIと関連していた。AIの臨床応用は、いまや病変検出やセグメンテーションに留まらず、スループット向上や高分解能化など多岐にわたってきている。これは、多くのプログラミングやシーケンスに適用できる汎用性の高さが最大の理由と思われる。今回の我々の発表も2演題が深層学習を臨床応用していたが、まずノイズ除去アプローチであることを説明する必要があった点はAIの裾野の広さを改めて痛感させられた。

5月13日にはインターコンチネンタル・モントリオールでゲルべ・ジャパンによる『第9回Japanese Meeting in ISMRM』が開催された。ISMRMプログラム委員の本杉宇太郎先生(山梨大学)のご報告によると、ISMRMは公平性にとても配慮している点が大きな特徴とのことである。本部のメンバーや演者の選出では、地域はもちろん人種や性別なども大いに考慮されるそうで、全世界におけるMRIのレベルの標準化を目指す強い意思が感じられた。一般演題の採択率は8割程度とのことであり、肌感覚より高い印象を受けた。採択されるポイントはタイトルや図表とのことである。その他、田岡俊昭先生(名古屋大学)、長尾充展先生(東京女子医科大学)、伊東克能先生(山口大学)の講演では中枢神経、心臓、腹部領域における今大会のトレンドや注目演題などをご紹介頂き、大変有益な時間を過ごすことができた。今大会で発表されたが、山田惠先生(京都府立医科大学)がSenior Fellowを受賞されたことは大変喜ばしいニュースであった。その後の懇親会では、今後日本からもっと受賞者が出るのを見守っていきたいと仰っていた。

今回、ISMRM 2019に参加して最先端の技術やシーケンス、臨床応用にいたるまで世界のMRIのレベルを実感できたのは貴重な機会であり、大きな刺激を受けるとともに来年への活力となった。我々を快く送り出し、大いにサポートもして下さった横山健一教授をはじめとする医局の先生方や中西章仁技師長をはじめとする診療放射線技師の方々など、多くの方に大変お世話になった。この場を借りて深謝したい。

写真1

写真2

『ISMRM 2019 in Montreal』
ゲルべ・ジャパン株式会社 高橋昌哉

隔年で北米とその他の地域で行われるISMRMが、今年はカナダのモントリオールで開催されました。本年度の全採択演題数は5,512、うち日本人 (First Author)からの演題数は197演題 (内訳:臨床/基礎/他科等: 149、企業: 28、海外所属など: 20)でした。パリで行われた昨年2018年のISMRMでは、全体6,006演題、日本人243演題であったので、日本人からの演題は割合としても少々減少している結果となっています。

まず開催形態として今年から大きく変わったことは、traditional posterを廃止し、その代わりに従来からあるe-posterへ移行したことです。これには様々な理由によるものと想像しますが、個人的に見る側としての感想は、先ずは各演題の発表者が立つ時間に居なくては詳細が分かりづらいように思いました。さらに発表時間以外では演題の紹介がディスプレーに数秒づつ次々に表示されていましたが、回転が速いうえに違う領域の演題が混在していたため、気になる演題があってもキャッチし難い状況でした。このためtraditional posterの時のように、空いた時間でじっくりとまとめて領域ごとに内容をフォローするのが難しくなったと感じました。

発表内容の概観ですが、先ずはartificial intelligence (AI)、Big Dataに関しては、当然のことながらますます演題数が増加しておりました。各技術の応用例も、診断支援やノイズ低減などによる画質の向上関連にとどまらず、新たな画像再構成法、またMR Fingerprintingにも絡みvirtualによる各MRパラメータのmappingなど更に多様化した印象がありました。またこれらの技術による撮像時間の短縮により、MRIの最も基本的かつ重要なパラメータでありながらこれまで時間的に正確な定量が困難であったT1値が、各領域で組織診断・鑑別により重要であるという報告が増加傾向だと思います。更にT1値のみならず、MRIにより測定される様々なパラメータをより正確に定量化しようとする動きが促進し、他の画像装置によるパラメータに加え、生理的なパラメータ、あるいは遺伝子情報をも含めて、多変量解析により各患者の診断を行う”Radiomics”の報告も増加傾向にありました。

個人的な専門である分子イメージングに関しは、CEST (chemical exchange saturation transfer)/MTC (magnetization transfer imaging)のセッションが定着したように思います。CESTに関しては、これまでのAPT (amide proton transfer) imagingよりも、amine (-NH2)のプロトンを使ったglutamateのCESTがよりpH sensitiveであるという報告や、creatine・creatinineのCEST、hydrogen (-OH)をターゲットとしたglucose やglycogenのCESTに興味が移ってきているようでした。またCEST/MTのパラメータのみではなくT1, T2, ADC (apparent diffusion coefficient)や還流、造影T1など他の情報との組み合わせの報告が増加しています。これは、CEST/MTがより一般化したパラメータとして広く使用され始めた結果ではないかと想像します。

もう一つ個人的に挙げたいのは、glymphatic systemによる脳の水動態の研究の拡大です。我々放射線科の分野では、Gdの脳への残留・沈着の原因の解明という意味合いが強いと思っていましたが、従来より外科や内科による水頭症、あるいはアルツハイマー病の病態解明のキーとして研究されており、遅ればせながらいかに重要な研究分野であるかを改めて認識した次第です。水を観察するMRIでこそ出来る貢献があるはずであると、研究のアイディアを巡らせる良いきっかけとさせて頂きました。

最後になりますが、ケベック州モントリオールはフランス圏だけあり、同じ北米といえどもヨーロッパ調の外観で雰囲気があり、演題の内容だけでなく食事が非常に美味しかったと思いました。来年のシドニーでは、どのように本会が発展していくのか楽しみにしています。

 

2019/05/21(火)

『GEST2019印象記』
神戸大学医学部附属病院放射線診断・IVR科 山口雅人先生

2019年5月9日~12日、ニューヨークにてGlobal Embolization Oncology Symposium and Technologies (GEST2019)が開催されました。今回、私はfacultyとして招待されたため、折角の機会なので神戸大学の後輩を連れて参加させて頂きました。日本からは私以外に、荒井保明先生・曽根美雪先生(国立がん研究センター)、宮山士朗先生(福井県済生会病院)、清末一路先生(大分大学)、田中利洋先生(奈良医大)、奥野祐次先生(オクノクリニック)がfacultyとして参加されており、みなさまいずれ劣らぬ素晴らしい講演を披露されていました。特に荒井先生はGESTの中心メンバーとして変わらず元気に存在感を示されていましたし、奥野先生は骨軟部セッションで重要な役割を果たしておられ、この領域での世界的第一人者として認知されているのは言うまでもありませんでした。

以前の他先生方からの報告にもある通り、GESTでは悪性腫瘍に限らずあらゆる領域の塞栓術がプログラムに組み込まれています。内容も疾患概念・適応、塞栓物質の選択や手技、エビデンスや他療法との比較など幅広い観点から構成されており、その完成度に感心させられます。初心者からエキスパートまで塞栓手技に関わる者であれば全て、4日間のプログラムを楽しめることができるでしょう。

幾つかの関心事を挙げたいと思います。前立腺肥大に対するPAEは手技や成績が確立されてきて、良好な臨床効果を得るためや合併症を起こさないための塞栓方法の最適化が議論の中心となっていました。術前・術中の画像診断で塞栓効果や合併症のリスクを如何に予防するかといった放射線科医らしいアプローチが議論となっているのが印象的でした。またビーズの逆流による誤塞栓のリスクについては、流体力学を利用する新しいコンセプトのマイクロカテーテルが注目を集めていましたし、マイクロカテーテルで使用できるプラグなど、国内未承認のデバイスや塞栓物質を実際にハンズオンで触れる機会もありました。リンパ管のセッションでは、よく話を聞いていたItkin先生らが、リンパ管イメージング・塞栓術の研究を熱心に講演されていました。今年6月の穿刺ドレナージ研究会(大阪)ではItkin先生を招聘してのリンパ管のプログラムも予定されていますので、興味ある方は是非参加されたらと思います。

私はGESTには、2010年第4回(サンフランシスコ)にIVR学会国際交流促進制度の補助を得て初めて参加する機会を頂き、学会誌に印象記を投稿しました(日本IVR会誌25,2010.373)。記憶に刻まれている学会で、自分もいつか声がかかるように頑張ろうと思わせられました。その後2016年に東京で開催されたGEST Asiaで、初めて招待講演を経験させてもらいました。複数の講演をこなすのは大変でしたが、達成感が強く、自分の中で何か感覚的に突き抜けるようなものがあり、随分と自信になりました。このような経緯からGESTへの思い入れもありましたし、今回、準備はもちろんしっかりした上で、肝も据わった感じで臨むことはできたように思います。

昔、クイズの勝ち抜きをしながらアメリカ大陸を横断し決勝の地ニューヨークを目指す「アメリカ横断ウルトラクイズ」という壮大な番組があり、子供心に興奮してテレビの前にかじりついて見ていたものです。以来、ニューヨークは憧れの地となり、これまでも幾度か人生の節目で訪れる機会がありました。少しずつ積み重ねてきた実績や信頼関係を自信にして、今、最大限できることを発揮する、そんな仕事の原点を思い起こさせてくれるexcitingな街、それが自分にとっての「アナザスカイ・ニューヨーク」です。GESTは来年もこの季節の良い5月にニューヨークで開催されます。会場もマンハッタンのMidtown Westにあるシェラトンホテルで、セントラルパークやタイムズスクエアにも近く、滞在を存分に楽しめます。毎年5月にニューヨークでのGESTが恒例になればいいなと期待しつつ、是非、若い先生達も積極的に参加してもらえればと思います。

 

Plenary Session会場 かっこいい背景でした

中心メンバーの一人 Dr. Sapovalとfaculty dinnerにて

2020年IVR総会(神戸)に招聘予定です。

2019/03/07(木)

『第14回APSCVIR2019レポート』
東海大学医学部専門診療学系画像診断学/付属八王子病院 画像診断科 長谷部光泉先生

第14回アジアパシフィック心臓血管IVR学会(APSCVIR)は2019年2月21日〜24日に、インドネシア(Bali)にて行われた。本学会は、アジア、オセアニア地区の16のIVR学会から構成されており、参加者は年々増加しており、2000名を越える参加者が集う学会である。アジア発のカッティングエッジな学術的な発表から教育講演、電子ポスターなどで構成され、温暖なリゾート地にもかかわらず、非常に活発な議論がなされていた。
その中で、2月22日の午前に行われたAPSCVIR MEETS SIR(Moderator: Prof. Andrew Holden, Prof. Brian Stainken)のセッション中でProf. Ziv Haskal (JVIR Editor/USA)が“Future IR”と題した講演を行った。世界的なKey Opinion Leaderの一人であるZivが行ったIVR領域の未来についての講演を興味深く拝聴した。彼の講演においては、IVR領域の新しい手技は、過去では、1)必要に応じたイノベーション、2)確定された病理所見に基づく治療、3)外科手術を置き換える低侵襲手技に応じて生まれてきたが、未来においては、”Directed innovation”が新しい手技を生むという考え方を示した。Directed Innovationとは、「方向付けられた進化」のことであり、従来のイノベーションの生まれ方とは一線を画している。すなわち、ニーズを待って新しい手技を生み出すのではなく、疾患を新しく再定義し、それを改善するために方向性を持ってテクノロジーの力を借りて新しいIVR手技を積極的に生み出すことが必要であろうという内容であった。新しい分野としては、全身状態をモニターするセンシング技術やニューロモデュレーション(neuromodulation)と呼ばれる埋設型の小型の神経刺激デバイス(例えば、脳深部刺激や脊髄硬膜外刺激など、その他全身について)の進化が近い将来には一般的になってくるだろうと予測されており、これらの開発や埋め込み手技などについても我々のIVR手技として対応していくべきだろうと述べた。また、日常臨床においても、いわゆる「確定した病理診断」がなくともIVRが対応すべき疾患概念は存在するという考え方である。その一例として、良性疾患である変形性膝関節症の痛みに対する塞栓術(Okuno JVIR 2013)を例に挙げ、関節痛がなぜ痛むのかという根本的なメカニズムはわかっておらず、こういった慢性的な病気に対する認識を変えていく必要があると述べた。その他、いままで病態がよく理解されていないリンパ系の病気についてもMR lymphographyなどで評価し、リンパ系の塞栓術の有効性などについても触れていた。その他、新しい血管造影装置のためのソフトウェアとして、Angiographic perfusion imageなどは、現在その有用性が検討されており、重症虚血肢の治療のエンドポイントの選択や、EVAR後の腎のパーフュージョンや、頭蓋内のパーフィージョン、その他、肝を含むInterventional Oncologyの分野での応用が期待されていることを紹介した。
ヘルスケアの未来予測として、「Healthcare 2030」、つまり、10年後の未来予想は、様々な人口統計、疾病構造、技術革新に基づき予測がでている。そして、その技術革新は、放射線医学、病理学からおこると言われている。さらに、P4 Medicine(Predictive(予防医学)、Personalized(個別医学)、Preemptive(収集したデータから先制して介入する)、Participatory(患者が理解してこうしたサービスに参加型))が一般的になってくるとされている。これらの革新は、いわゆる基礎研究と臨床研究をつなぐTranslational Researchからイノベーションが生まれることは多くの予測から知られているところである。また、2030年にはロボット手術や、遠隔患者ケアなども一般的となってくると予想されている。画像下治療:IVRについても、そのイノベーションの波は既にやってきており、急激に変化していくものと考えられる。今までの常識的な考え方、古い考え方ではその波についていくことはできず、我々のIVRの分野においても我々の専門性が大きく変革していくことを楽しみながら準備する必要があるだろうと講演を締めくくった。私個人としても、こういった考え方には大いに賛同することろであり、今までの古典的なIVR診療のみにフォーカスをおいているだけでは、革新のスピードについて行けないと考えている。そのためにもIVRに関するTranslational Researchを積極的に進め、イノベーションを生み出す側の新しいIVRistsを育成していきたいと強く感じた。

2019/02/25(月)

『SCMR 2019 in Seattle』
浜松医科大学 循環器科 諏訪賢一郎先生

今年のSCMRはワシントン州のシアトル郊外にありますBellevue(ベルビュー)という街で開催されました。シアトルといえばイチロー選手の所属するマリナーズや、郊外にあるボーイング社の飛行機工場などで有名です。またベルビューにはMicrosoft本社があったりと有名企業も存在し、こじんまりとしていますが活気溢れる街であります。今回のSCMR2019の会場はハイアットリージェンシーベルビューで開かれましたが、この中心部であるベルビュースクエアの隣り合わせの好立地で、学会から夜の交流の時間まで大変盛り上がっていました。気候はというと、ガイドブックでは緯度の割に比較的温暖と記されていたのですが、記録的な寒波が到来し雪模様の期間となりました。
さて今回のSCMRですが、水曜日から木曜日の午前までにプレカンファレンスとしてワークショップ他が開催され、木曜日午後から土曜日まで本会のスケジュールが組まれました。今回のプログラム内容を見ると、例年にも増してmachine learningに関する演題が多かった様に感じます。人工知能を有効利用しようという流れは医療に限らず様々な分野で見られておりますが、心臓MRIの領域でも同様で、撮影から解析、診断へと様々な段階でmachine learningが導入されていくことが期待されます。
さて私は、以前より行なっている4D flow MRIを用いた臨床研究の一部を発表致しました。閉塞性肥大型心筋症の臨床に4D flow MRIを利用した症例を提示し、4D flow MRIの実臨床での有用性をご紹介させていただきました。4D flow MRIの他演題については、以前より研究が進んでいる二尖大動脈弁についての発表等に加え、私の元上司であるNorthwestern大学のMarkl先生からは左房内血流と心房細動との研究報告もなされ、応用される領域が広がりつつあることを実感しました。
興味深いトピックスとして、Diffusion tensor imagingを用いた研究が口語・ポスターに限らず散見されました。その中でも今回興味深い発表の一つとして、アミロイドーシスと肥大型心筋症の鑑別において有用であるという発表がなされました。心筋症の診療は、まず診断に苦慮することが多く依然臨床医の課題が多く残された分野と考えています。ここ最近の話題でもあるT1/T2 mappingの有用性に加えて、今後心筋症の診断に臨床利用されることを期待したいと思いました。
SCMRという学会は、基礎技術に関する演題と臨床に関する演題がバランスよく並んでおり、この学会の魅力の一つと思います。Clinicalもphysicsもお互い学ぶことができる場であります。臨床に関しては、今回caseを多く取り入れられているなと感じました。実臨床の中に最新の心臓MRIの技術を取り入れて診断・考察されている演題を見ると、臨床研究を行う身としては勇気づけられます。また、若手の医師には発表にチャレンジしやすいかもしれません。
海外学会のオフタイムの楽しみといえば、やはり観光でしょう。今回シアトルを訪れるのは初めてでしたので、生憎の大雪に行く手を阻まれましたが、シアトルの港町を観光し、食事を楽しむことができました。スターバックスの一号店を見たり、オフシーズンではありましたがシアトルマリナーズの本拠地であるスタジアムを見たりすることが出来ました。また、日本から参加されている他施設の先生方との交流や、かつての留学先の仲間との再会と近況報告も楽しい時間でした。
来年はフロリダ州オーランドでの開催を予定されているとのことでした。まだ訪れたことのない街になります。次回も是非参加したいと、今から思っております。

ロゴが映し出されたSCMR2019会場

静岡こども病院の先生とシアトル市内での夕食(筆者中央)

『SCMR 2019』
川口市立医療センター 國本聡先生

米国シアトル近郊のベルビューで開催された第22回SCMR(Society of Cardiovascular Magnetic Resonance)に参加してきました。会期は2019年2月6日から9日でしたが、大雪警報(Winter Storm Warning)が期間中発令されるという現地としては珍しく雪の舞う中での開催となりました。
今回のSCMRは“Global CMR: Innovation and Clinical Outcomes”がテーマであり、BasicからClinicalまで多くの演題発表があり、主に4会場で同時進行するため全ての演題を網羅できない状況は、初めて参加した2008年第11回SCMRでは1つの会場で行われていたことを考えると隔絶の感がありました。さらに会期を通して小児科領域のセッションが設けられており、日本に比較してCMRを用いた小児循環器診療が行われている海外の状況を伺い知ることが出来ました。
Opening Plenary Session前の半日ではPhysician Pre-conference Courseとしてレクチャーがあり、会場をほぼ埋め尽くす多くの参加者が聴講しており、撮像基礎理論から臨床各論まで心臓MRI(CMR)の今を俯瞰するには最適の機会でした。
Clinical trialのセッションでは、安定狭心症と中等度から高度冠動脈疾患リスクの症例の方針決定において用いる指標としてMR perfusion imagingとFFRを比較したMR-INFROM、AMI急性期にalteplase投与の有効性をCMRでのmicrovascular obstruction(MVO)について検討したT-TIME、2750例のHCM症例をprospectiveに検討したHCMR、左室EF 36~50%の症例へのICD植込みの適応においてCMRによる線維化等の所見を用いる有効性を検討したCMR-GUIDEなどがInvited Lectureとして報告されました。
T1 mapping、T2 mappingなどのParametric Mappingは依然として注目されていますが、多くの施設で多くの疾患に対して施行した報告が出る中、機種や磁場強度による値の差異が問題となっており、標準化が課題となっている現状を見ることが出来ました。
また、注目されている領域として前回2018年から設定されたCardio-Oncology imagingのセッションには多くの参加があり、抗がん剤治療後の心筋障害が問題となる中CMRによる壁運動低下の早期検出に加えてParametric Mappingの可能性が報告されており、非造影でのスクリーニングの有用性の検討が必要であるとの印象を持ちました。
そしてClosing Plenaryでは「The SCMR Chase」という若手医師とベテラン医師が制限時間中に読影する症例数を競い合うイベントが用意されており、会場全体が大盛り上がりの中で学会が終了しました。
最期に、SCMRは心臓MRIについて勉強する機会であることはもちろんですが、会期中に日本からの参加者が集まるJapanese Seminar in SCMRが開催され、日本の学会の発表会場でお目にかかることはあるもののゆっくりと話す機会が少ないCMRに携わる方々との親睦を深める良い機会となっています。
以上SCMR2019の様子をご報告させていただきました。今回のSCMRで話題となっている分野のみで無く、CMRを日本でも活用していくことへのモチベーションを高める良い機会となりました。

<Japanese Seminar in SCMR2019にて>