『2019 ISMRMに参加して』
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 放射線診断治療学教室 福倉良彦先生

2019年のISMRMは5月11日から16日にかけて、モントリオールで開催されました。この学会は、教育講演が充実しており、かつ、最新の情報から理解不能な技術的な演題まで、盛りだくさんなので、私は、可能な限りこの学会には参加するようにしています。前回2011年にモントリオールで開催された時には参加できなかったので、初のモントリオールでのISMRMに参加となりました。近年、ISMRMは暖かい開催場所が続いていましたが、生まれも育ちも鹿児島の私にとっては、モントリオールはやはり寒く、コートを持ってきたらよかったと後悔するような気候でした。

今回も、例年同様、行きの機内で抄録で面白そうなセッションに目星をつけて、会場入りしたのですが、結局は会場での多くの時間をPower Pitch Sessionに費やしました。午前中に1回、午後に2回ほど行われるこのセッションは、多くの演題のダイジェスト版といった感じで、それだけで、十分新たな多くの知識を効率よく得られるので、皆さんにもお勧めです。

今年のISMRMの話題といえば、人工知能と定量化(機能画像)であったように思われました。人工知能に関しては、ここ2〜3年の熱狂的雰囲気はやや落ち着いた感があり、実践的な画像のノイズ除去や臓器・病変のセグメンテーションなどの内容に絞られていた様に思われました。機能画像による定量化に関しては、夢のある将来を予感させるMR spectroscopyによる腫瘍のpHやグルタミンの定量、実用化に近づきつつあるMR fingerprinting、既に臨床的に用いられているT1値やT2値、ADCなどのによるマルチパラメトリックイメージングの有用性の演題など多岐にわたっていました。

個人的に専門としている腹部MRIにおいては、呼吸による動きによる制約が1番の問題点であり、他領域で有用な検査が、腹部においては呼吸の動きにより、撮像困難であったり、良好な結果が得られないこともしばしばです。皆、日常の現場でこのような経験をし、悔しい思いをしていると思います。これまでも放射状サンプリングによる動きに強いシーケンスや圧縮センシングによる高速化および両者を組み合わせたGRASP(Golden-angle radial sparse parallel)による自然呼吸下のdynamic撮像が報告され、臨床的に使用可能となっています。今回も呼吸同期で圧縮センシング(ただし、Low-rank matrix変換使用)を用いたsaturation recovery法による膵臓癌のDCE MRIの報告があり、興味をそそられました。また、自然呼吸下のMR fingerprintingの演題も見られ、将来の上腹部MRIの発展を期待させるものでした。

カナダ第2の都市であるモントリオールは北米のパリともいわれており、言語はフランス語で、建物も他の北米の都市と異なり、ヨーロッパの雰囲気が漂っていました。折角なのでと、学会の合間に、ローマ・カトリック教会のノートルダム大聖堂を観光しました。知る人ぞ知るカナダ出身のセリーヌ・ディオンが結婚式を挙げた場所らしく、さすがローマ・カトリック教会!青を基調とした色彩豊かなステンドグラスに幻想的な装飾でした。最終日には、シルク・ドウ・ソレイユの本社がモントリオールにあることもあり、前日にチケットを手配して、行きました。これまで、5カ所のショーを見てきましたが、さすが本場、その名の通り「太陽のサーカス団」という感じで圧倒されました。そこから、大きな観覧車が見えますが、一緒にいた同僚が、観覧車からモントリオールの景色を見たいと恐怖の発言。高所恐怖症の私は、その観覧車を見上げて、ためらうも、比較的早く回転しているので、これ位の時間なら我慢できるかな?と思い同意。しかし、いざ乗車すると、やっと一周回って終わったと思いきや、続けて回転し、4回転もしてからやっと解放され、気分が悪くなりました。

発展の著しいMRIに携わる私たちにとってISMRMは貴重な学会と思います。MRIの発展を日本人が世界の研究者と一緒に先導出来ることを願って、来年開催地シドニーで、また会いましょう。

『ISMRM 2019に参加して』
杏林大学 医学部放射線医学教室 町田治彦先生

この度、5月11~16日にカナダのモントリオールで開催されたISMRM 2019にデジタルポスター発表された同僚の五明美穂先生(発表演題:#2662)、診療放射線技師かつMR専門技術者の高橋沙奈江さん(#2060)、福島啓太さん(#1700)と参加した(写真1)。私は2009年にハワイで開催されたISMRMでポスター発表して以来の2度目の参加であったが、今回はサポート役という立場であった。気候は日本の3月並みで、昼夜の気温差もあったため、上着が手放せなかった。モントリオールはフランスの影響を強く受け、食事が美味しいうえに、フランス語以外に英語も通じ便利であった。

モントリオール発祥の有名なエンタテインメントといえばシルク・ドゥ・ソレイユである。我々は、日本でも移動公演が行われたアレグリアという演目を鑑賞した(写真2)。アクロバティックな曲芸ももちろん盛り込まれていたが、単なるサーカスの域を超え、オペラ、ロック、ミュージカルなどとも融合した芸術作品に感じた。その他、外せない観光スポットとしてノートルダム大聖堂がある。壮大なスケールの外観を想像していたが、実際はダウンタウンのビル群に囲まれて佇んでおり気軽に足を運べる。しかし、中に入ると外の喧騒とは一線を画し、壮麗な装飾や引き込まれるような青を基調とした内壁に目を奪われた。カナダ人歌手のセリーヌ・ディオンが挙式した場所としても有名であり、多くの観光客を魅了しているのも容易に納得できた。

学会は6日間で最初の2日間はEducational Sessionのみ、後の4日間はこれに加えてScientific Session、Power Pitch Session(大きな口演会場でプレゼンが行われ、近い距離で議論が可能)、 Digital Poster Sessionなどが散りばめられた構成であった。全演題数は約5500で下調べしてから参加する必要があるが、部位・トレンド毎にプログラムが絶妙に組まれており、聴講希望が重複することは少なかった。RSNAやJRCと比べるとコンパクトであるが、教育講演はもちろん学術発表も、最新技術を貪欲に吸収したいという雰囲気の熱心な参加者が多かった。特に臨床医より工学系のバックグランドを有する研究者・技術者の参加が目立ち、産医一体を下支えしている印象を受けた。ポスター発表は電子ポスターのみ(今年から紙ポスター廃止)であり、発表者は自分のポスターのそばで1時間待機しなければならない。閲覧者は総じて目的意識が高く、我々のポスター発表に対しても鋭い質問をされ、おかげで議論が盛り上がった。

今大会のトレンドは人工知能(AI)技術であり、全演題の約2割がAIと関連していた。AIの臨床応用は、いまや病変検出やセグメンテーションに留まらず、スループット向上や高分解能化など多岐にわたってきている。これは、多くのプログラミングやシーケンスに適用できる汎用性の高さが最大の理由と思われる。今回の我々の発表も2演題が深層学習を臨床応用していたが、まずノイズ除去アプローチであることを説明する必要があった点はAIの裾野の広さを改めて痛感させられた。

5月13日にはインターコンチネンタル・モントリオールでゲルべ・ジャパンによる『第9回Japanese Meeting in ISMRM』が開催された。ISMRMプログラム委員の本杉宇太郎先生(山梨大学)のご報告によると、ISMRMは公平性にとても配慮している点が大きな特徴とのことである。本部のメンバーや演者の選出では、地域はもちろん人種や性別なども大いに考慮されるそうで、全世界におけるMRIのレベルの標準化を目指す強い意思が感じられた。一般演題の採択率は8割程度とのことであり、肌感覚より高い印象を受けた。採択されるポイントはタイトルや図表とのことである。その他、田岡俊昭先生(名古屋大学)、長尾充展先生(東京女子医科大学)、伊東克能先生(山口大学)の講演では中枢神経、心臓、腹部領域における今大会のトレンドや注目演題などをご紹介頂き、大変有益な時間を過ごすことができた。今大会で発表されたが、山田惠先生(京都府立医科大学)がSenior Fellowを受賞されたことは大変喜ばしいニュースであった。その後の懇親会では、今後日本からもっと受賞者が出るのを見守っていきたいと仰っていた。

今回、ISMRM 2019に参加して最先端の技術やシーケンス、臨床応用にいたるまで世界のMRIのレベルを実感できたのは貴重な機会であり、大きな刺激を受けるとともに来年への活力となった。我々を快く送り出し、大いにサポートもして下さった横山健一教授をはじめとする医局の先生方や中西章仁技師長をはじめとする診療放射線技師の方々など、多くの方に大変お世話になった。この場を借りて深謝したい。

写真1

写真2

『ISMRM 2019 in Montreal』
ゲルべ・ジャパン株式会社 高橋昌哉

隔年で北米とその他の地域で行われるISMRMが、今年はカナダのモントリオールで開催されました。本年度の全採択演題数は5,512、うち日本人 (First Author)からの演題数は197演題 (内訳:臨床/基礎/他科等: 149、企業: 28、海外所属など: 20)でした。パリで行われた昨年2018年のISMRMでは、全体6,006演題、日本人243演題であったので、日本人からの演題は割合としても少々減少している結果となっています。

まず開催形態として今年から大きく変わったことは、traditional posterを廃止し、その代わりに従来からあるe-posterへ移行したことです。これには様々な理由によるものと想像しますが、個人的に見る側としての感想は、先ずは各演題の発表者が立つ時間に居なくては詳細が分かりづらいように思いました。さらに発表時間以外では演題の紹介がディスプレーに数秒づつ次々に表示されていましたが、回転が速いうえに違う領域の演題が混在していたため、気になる演題があってもキャッチし難い状況でした。このためtraditional posterの時のように、空いた時間でじっくりとまとめて領域ごとに内容をフォローするのが難しくなったと感じました。

発表内容の概観ですが、先ずはartificial intelligence (AI)、Big Dataに関しては、当然のことながらますます演題数が増加しておりました。各技術の応用例も、診断支援やノイズ低減などによる画質の向上関連にとどまらず、新たな画像再構成法、またMR Fingerprintingにも絡みvirtualによる各MRパラメータのmappingなど更に多様化した印象がありました。またこれらの技術による撮像時間の短縮により、MRIの最も基本的かつ重要なパラメータでありながらこれまで時間的に正確な定量が困難であったT1値が、各領域で組織診断・鑑別により重要であるという報告が増加傾向だと思います。更にT1値のみならず、MRIにより測定される様々なパラメータをより正確に定量化しようとする動きが促進し、他の画像装置によるパラメータに加え、生理的なパラメータ、あるいは遺伝子情報をも含めて、多変量解析により各患者の診断を行う”Radiomics”の報告も増加傾向にありました。

個人的な専門である分子イメージングに関しは、CEST (chemical exchange saturation transfer)/MTC (magnetization transfer imaging)のセッションが定着したように思います。CESTに関しては、これまでのAPT (amide proton transfer) imagingよりも、amine (-NH2)のプロトンを使ったglutamateのCESTがよりpH sensitiveであるという報告や、creatine・creatinineのCEST、hydrogen (-OH)をターゲットとしたglucose やglycogenのCESTに興味が移ってきているようでした。またCEST/MTのパラメータのみではなくT1, T2, ADC (apparent diffusion coefficient)や還流、造影T1など他の情報との組み合わせの報告が増加しています。これは、CEST/MTがより一般化したパラメータとして広く使用され始めた結果ではないかと想像します。

もう一つ個人的に挙げたいのは、glymphatic systemによる脳の水動態の研究の拡大です。我々放射線科の分野では、Gdの脳への残留・沈着の原因の解明という意味合いが強いと思っていましたが、従来より外科や内科による水頭症、あるいはアルツハイマー病の病態解明のキーとして研究されており、遅ればせながらいかに重要な研究分野であるかを改めて認識した次第です。水を観察するMRIでこそ出来る貢献があるはずであると、研究のアイディアを巡らせる良いきっかけとさせて頂きました。

最後になりますが、ケベック州モントリオールはフランス圏だけあり、同じ北米といえどもヨーロッパ調の外観で雰囲気があり、演題の内容だけでなく食事が非常に美味しかったと思いました。来年のシドニーでは、どのように本会が発展していくのか楽しみにしています。