『GEST2018 US 印象記』 大分大学医学部附属病院放射線部 清末一路先生

 GEST (Global Embolization Cancer Symposium Technologies) 2018 U.S.が5月17日から20日の4日間アメリカのマイアミで開催され、今回は初日の午前中と最終日の最終セッションが当たっていたので最初から最後までフル参加となった。また会場はマイアミビーチの高級リゾートホテルで、目の前がマイアミビーチというとても良いロケーションであった。しかしながら、ちょうど天候に恵まれずほぼ毎日雨または曇りであり、残念ながら会場に缶詰め状態で4日間を過ごしたが、その分普段以上に長時間多くの講義を聞いたので印象記を書くのには良い条件であった。

 GESTは塞栓術に特化した会であり、様々な塞栓物質の特徴に始まり疾患はAVMから腫瘍、エンドリークまで塞栓術のほぼすべての領域を網羅するセミナーである。フランスのSapoval先生, アメリカのHaskal先生とGolzarian先生が2008年に立ち上げ、以降毎年ヨーロッパまたはアメリカで開催されている。2014年と2016年には国立がん研究センターの荒井保明先生の会長にもとGEST Asiaが東京で開催され、そのためGESTという名前はご存知の先生も多いと思われる。私はパリで開催されたGEST2011から数回facultyとして参加させていただいているが、それぞれの年の会はいずれも全体をくまなく網羅している点は同じであるが、その年ごとに力を入れているトピックスが少しずつ異なり、また新しい機器や手技の普及に伴う標準的な手技の変化やfacultyの意識の変化により同じトピックスでも内容は年とともに変化しているところが多い。

 今年のGEST2018で最も力が入れられていたのは前立腺肥大に対するPAEであったと思われる。土曜日の午後4時間と日曜日の午前中2時間の計6時間29演題の教育講演があり、その内容は前立腺肥大の病態から、薬剤治療・外科治療、血管解剖、と塞栓術など多岐にわたりかつ詳細なものであった。またSapoval先生がPAEを始めるための重要なポイントを講演していたが、泌尿器科との連携が非常に重要であることを強調していた。一緒にカンファレンスや会食を行い、決してTUR症例を泌尿器科から奪っていくことではないということを泌尿器科医の理解を得たうえで、はじめはTUR困難症例から開始することが大事ということであった。我々の施設では今年中に泌尿器と合同でPAEを開始する予定であるため非常にタイムリーな内容であった。さらに他の会場では終日企業の協力のもとシミュレーターを用いたPAEのトレーニングも開催されていた。空き時間に体験してみたが、結構ちゃんと作られており、初心者においては十分トレーニングになるものと思われた。

 それ以外で変わったところといえば、肥満に対する左胃動脈塞栓術というセッションが新たに組まれていたり、昨年に引き続き奥野先生の関節炎の塞栓術が取り上げられたことなどがあげられる。分子標的薬の登場や肝炎ウイルスに対する治療薬の普及などで悪性腫瘍に対するIVR治療が頭打ちとなり、この先減少していくと予想される中で、欧米いずれも従来と異なる良性疾患に対するIVR治療領域を模索・開拓しているという印象を受けた。血管奇形の領域は韓国のDo先生がtype II AVMの少し細かい新分類を提唱されていたがそれ以外は目新しいことはなかった。内臓動脈瘤などコイルを使用する塞栓術のセッションでは、2011年に初めに参加した時と比べて推奨手技に大きな違いがみられた。2011年では内臓動脈瘤に対しではpushable coilとdetachable coilどちらを使うかという議論がなされ、会場で採決されたが私以外のほとんどの参加者が内臓動脈瘤の治療にpushable coilを使用するべきとの回答だったので愕然とした記憶がある。さすがに年月が流れ、内臓動脈瘤の瘤内塞栓術はdetachable coilで密に塞栓する、親動脈塞栓の際もアンカーを作ってその中に小さめのコイルを密に詰める、など今年のGESTではまともな内容が話されていた。塞栓物質のセッションでは新しいものとして透視下で視認できるマイクロスフィアなども紹介されたが、大須賀先生が講演中あっさりと“必要性を感じない”と述べられていた。

 HCCやその他の腫瘍、門脈圧亢進症などの残りの領域は私が聴講した限りは、大きな変化はなく特に日本誇る宮山先生の講義は例年と同じく非常に素晴らしい内容であった、また奈良医大の田中先生はA-port動注のわかりやすい講義をされており、聴衆から好評であったと思う。個人的にはSapoval先生が講義した慢性肝外門脈閉塞に対する経脾的アプローチによる再開通とTIPSを組み合わせた治療が少数例の報告はであるが、成績が良く興味深く拝聴した。内容はこのような感じであったが他に変化した点として、今回のGEST2018USでは立役者の一人であったHaskal先生が離脱したそのため、内容や参加者等、少し心配であったがプログラム構成や会場、内容等いずれもよいものであった。また最終日にGolzarian先生に聞いたところ参加者は約1000人とのことであったが、初日の早朝のセッションから会場は一杯であり皆熱心に聴講し非常に盛況であったと思う。今回のGESTから中国からのInvited facultyが見られた点も従来と異なる点である。今までのGESTでは東アジアからのfacultyは日本と韓国からだけであり、昨年は日本7名、韓国3名であった、今年は日本8名、韓国7名、に加えて中国6名といきなりの急増である。おそらく今年のGEST ASIAが香港で開催されることに関連しているのだと思うが、この領域においても中国のプレゼンスが増大しており。日本人としてはいろいろともっと頑張らないと、とあらためて思うとともに今30-40代の先生方のこれからの国際的・学術的な活躍に期待する。

Faculty Dinnerで韓国ソウル大学IVRグループの気さくなJeu教授(中央)、国立がん研究センター曽根先生(左)と筆者(右)

会長のGolzarian先生(右)と学会場入り口にて この後上の来年のGEST2019の看板を指して予定を開けておくようお願いされました。

『GEST2018 USがマイアミで開催』 大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座 大須賀慶悟先生

 2018年5月17日~20日、米国フロリダ州マイアミでGlobal Embolization Symposium and Technologies (GEST2018)が開催された。GESTは、毎年ヨーロッパとアメリカで交互開催され、今年で12回目を数える。北米・欧州・アジアなど世界各国から約1,000名の参加者が集まり、一流の豪華な講師陣に身近に接しながら、塞栓術の基礎から最先端まで包括的に学べるシンポジウムである。講師の側も、多数の講演、座長、パネル討論、ハンズ・オン、ライブ・デモなど、与えられる役割が多く、手が抜けない。コースディレクターが、各講師の持ち味をよく把握した上で色々割当てるので、講師は自分のパフォーマンスを存分に発揮しないといけない気にさせられる。日本からは、私以外に、荒井保明先生、曽根美雪先生、菅原俊祐先生(以上、国立がん研究センター)、宮山士朗先生(福井県済生会病院)、清末一路先生(大分大学)、田中利洋先生(奈良医大)、奥野祐次先生(オクノクリニック)が講師を務め、熱のこもったプレゼンで各自の専門分野を披露された。

 GESTでは、動脈・静脈・門脈・リンパ管の全ての塞栓術が扱われる。その対象は、肝腫瘍、腎腫瘍、骨腫瘍、子宮筋腫、消化管出血、内臓動脈瘤、大動脈瘤エンドリーク、脈管奇形、外傷、病的肥満、前立腺肥大、関節疾患、門脈圧亢進症、精索静脈瘤、骨盤うっ血症候群、リンパ漏など、非常に多岐に渡る。そして、各領域について、塞栓術の適応、塞栓物質の選択、詳細な技術論、文献的エビデンスなど塞栓術を掘り下げるだけでなく、背景にある疾患概念、疫学、手術や薬物療法のアップデートなど俯瞰的な視点でプログラムが練られている。一つ一つの講演のタイトルも巧妙でディベートがふんだんに盛り込まれ、参加者の興味を駆り立てる。4日間のプログラムは、広い会場でのプレナリー及びパラレル・セッション、小さい会場での症例検討、一般演題などが並列で進行する。ポスターも72演題と多かった。ハイライトのマスターズ・クラスでは、別室からのライブ中継で講師陣が色々な塞栓物質の使い方を実演してくれる。合併症セッションも、目が離せない衝撃的な症例のオンパレードである。また、ハンズ・オンやシミュレーター・ラボなど体験型プログラムも充実していて、企業展示では色々なデバイスを手に取って触ることができる。毎日、朝から夕方まで隙間のないプログラムで、参加者はどれも見逃すまいと会場間を目まぐるしく移動する。マイアミビーチに面するリゾートホテルでの開催だったが、最終日までどのプログラムも盛況であった。誌面の限りで多くは紹介できないが、新しいトピックスをいくつか採り上げたい。

【球状塞栓物質】

 球状塞栓物質(ビーズ)の方向性は、視認性、可溶性、そして、薬剤溶出性の3要素を兼ね備えたものを求める傾向である。特に、可溶性が重視され、治療効果の達成後は血管内に残らない方がよいのでは、と考えられているが、まだ研究段階のものが多く、製品化されているものは少ない。また、ビーズの注入は、従来フリー・フローの注入が基本といわれてきたが、血流制御下に注入した方がビーズが肝腫瘍に集まりやすいという日本のB-TACEに似たコンセプトも紹介された。さらに、ビーズの逆流防止用の新しいマイクロカテーテル(国内未承認)が注目を集めた。同カテーテルは、先端から少し手前に全周性に微小スリットを開けた単純な構造である。ビーズ浮遊液を注入すると、液体だけがスリットを抜けてカテーテル周囲に噴出され、血流を塞き止めるバリアの働きを生み出す。一方、スリットを通れないビーズは、マイクロカテーテル先端から血管内に注入されるが、スリットから噴出される水流バリアで逆流せずに前方にだけ流れるという原理である。バルーンや機械的な構造を全くもたない斬新なアイデアで驚きに値する。

【コイル・プラグ】

 企業PRも影響しているだろうが、高額の離脱式コイルを第一選択に使う風潮に対して、費用対効果が議論された。より少ないコイルで充填率を高めることも重視されており、新しいコイルの開発も太さと長さに加えて柔軟な形状や構造で充填率を高める傾向である。プラグは、既存プラグに変わる次世代プラグとして、マイクロカテーテルを通過するプラグの臨床経験が示された。これらは膜付きプラグで留置したら瞬時に血流を遮断するが、屈曲蛇行を越えての末梢留置には課題もありそうである。

【液状塞栓物質 】

 非接着性液状物質に関心が集まった。既に普及しているエチレンビニルアルコール(EVOH)製剤に変わるものとして、視認性を得るためのタンタル粉末をより細かく均等にしてサスペンジョンの安定性を高めた製品が登場している、しかし、これらのEVOH製剤はタンタルの事前混合に時間を要することやCTでの金属アーチファクトが問題となる。フランスでは、タンタルとの事前混合が不要のヨード含有PVAエーテルポリマー(国内未承認)の内臓・末梢病変を対象とした多施設研究が進行中である。

【前立腺塞栓術】

 前立腺肥大による下部排尿障害に対する塞栓術(prostatic artery embolization, PAE)が、今回大きくフィーチャーされた。日本では、まだ実施施設は少ないが、欧米では確実に裾野を広げている。実際、英国国立医療技術評価機構(NICE)もPAEを一つの治療オプションとして既に認めている。今後は、泌尿器科系の学会や雑誌でPAEを発信していく方向である。3日目午後と4日目午前は「PAEシンポジウム」が企画され、PAEに必要な臨床的知識、血管解剖や技術の詳細など“A to Z”のプログラムが組まれ、会場は満員であった。また、シミュレーター・ラボでも、血管解剖、マイクロカテーテル・ガイドワイヤー・塞栓物質の選択など、一つ一つのステップを確かめながら、実践さながらにPAEを模擬体験することができた。

【膝関節塞栓術】

 五十肩や変形性膝関節症の疼痛に対する運動期塞栓術は欧米でも脚光を浴びている。先駆者の奥野先生自身の講演に参加者は釘付けで、講演後も質問の人集りである。米国では小径ビーズを用いた変形性膝関節症に対する塞栓術(genicular artery embolization: GAE)の臨床試験が行われ、6ヶ月後に有意な除痛と症状改善が得られたとしている。今後の対プラセボ(シャム治療)の無作為比較試験の計画も示された。一方、永久塞栓ビーズでは一過性の皮膚変色や知覚鈍麻が経験されるなど虚血の懸念があり、GAEに適した可溶性塞栓物質の開発が待たれる。

【リンパ管塞栓術】

 なんといってもペンシルバニア大学のItkin先生らが、リンパ管イメージング及び塞栓術の研究を多角的に推進している。先天性心疾患に関連する蛋白漏出性胃腸症、鋳型気管支炎、リンパ管形成異常、肝リンパ管異常など、適応疾患の幅広さには驚かされる。リンパ流動態精査のため、Gd造影剤を用いたMRリンパ管造影(国内未承認)を積極的に活用していた。どの疾患も基本的にリンパ管造影でリンパ漏出を確認しNBCAで塞栓を行う(国内未承認)。鼠径から陰嚢へのリンパ漏では鼠径リンパ節からNBCAを直接注入する方法も示された。しかし、リンパ管におけるNBCAの重合時間は予測が難しく、静脈流出による非標的塞栓の危険も指摘された。頻度は少ないものの、右房に迷入したNBCAをスネアで回収したり、脳塞栓を起こした症例などが示された。

 GESTは、SIRやCIRSEなど公式学会とは少し違う“GEST flavor”と呼ばれる独特の雰囲気を持っている。プログラムは、初学者から上級者までどのレベルのニーズにも応える工夫がされている。参加者と講師陣との距離が近く、新たな友人と巡り会う機会も多い交流の場でもある。このGEST flavorは、コースディレクター達の深謀遠慮による演出で、この雰囲気に包まれながら、参加者は、すべての塞栓術に必要な知識と経験が共有できる充実感に満たされる。次回は、2019年5月9日-12日ニューヨークでの開催が決定した。是非、日本からも多くの先生や企業の方々が参加されるのを期待したい。

ホームページ GEST2018 U.S. :http://www.gestweb.org/symposium/

マイアミビーチをバックに会場のバルコニーで。左から奥野先生、筆者、田中先生、菅原先生

新型マイクロカテーテル(国内未承認)のデモ。左から、菅原先生、宮山先生、丸野先生