『ESUR 2019@Dublinに参加して』
札幌医科大学医学部放射線診断学 畠中正光先生

最近、前立腺や子宮疾患の拡散関連パラメータの研究を行っているのでDublinで開催された26th European Symposium on Urogenital Radiologyに初めて参加した。
私の年代の者(昭和60年卒)には北アイルランド紛争は強く記憶に残っている。Brexitになったら国境問題が再燃し、以前のIRAによるテロに似た事件が生じるのではないかとの懸念もあり、Dublinについて機内で多少予習してみた。以前フィンランドに行った際に、シベリウス・フィンランディアを知らず、フィンランド人のある教授(ご両親ともに音楽家であり、自分は音楽の才能がなかったから医師になったと仰っていた)からご教授頂いた痛い過去もある。早速、市内中心部に位置するTrinity College DublinのLong Roomに出かけた。何と16世紀の解剖学者Andreas Vesalius先生による詳細な解剖書が展示されていた(図1)。関ヶ原の戦いの前である。ダ・ヴィンチやミケランジェロも解剖学の研究を行っていたと言うから珍しくはないのかもしれないが。誤解されるといけないので白状しておくが、Andreas Vesalius先生を知ったのは展示本の説明を読んだ時である。
さて、当の学会はというと、各専門領域のグループミーティングの雰囲気は異なるのかもしれないが、新たな研究の発表の場として侃々諤々という感じではなく、最新の知見を共有しましょうといった和やかな雰囲気である。司会者が中央に座り、横で演者がプレゼンを行うというスタイルからも雰囲気が伝わるのではないだろうか(図2)。ESURといえば造影剤のガイドラインが有名なのでESUR Tutorial: Updates on Contrast Mediumに参加した。司会者が最初に特に新しいことはないと言っていたのが印象的ではあったが、実際、特別な知見はない様だった。ただ、適切な診断は重要であり、透析患者であっても、他に方法がないならGd造影剤を使ってMRI検査を行うことを考慮すべきだと発言されていたのが印象に残った。他に適切な検査法がないこと、造影MRIを行えば「適切な」診断が可能であることの蓋然性が高いこと、などの立証は簡単ではないように思われるが。
今回、京都大学の木戸晶先生に大変お世話になった。富樫先生の後任として多くのミーティングに活発に参加し活躍されており、高名な先生方にご紹介いただいた。公式Dinnerの際にご紹介頂いたRomeのGabrielle Masselli先生ご夫妻とホテルの朝食会場で一緒になり、これから私の発表があるからとのことで普段は参加しない最終日のPlacentaセッションに参加したお陰で、こちらも前夜にご紹介頂いたCopenhagenのVibeke Berg Logager先生から声をかけられ前立腺DWIのb-valueに関する議論ができた。と言うのも私の発表は、Prostate V2: Advanced Prostate Imagingの裏に配置されたため、このセッションに参加できずやるせない思いを抱えていたところ、木戸先生に救われたのである。PSMAに脅威を感じていたが、「前立腺は益々拡散強調像の役割が重視されているようですよ」との木戸先生のお言葉にも気をよくしてDublinを後にすることができた。
次回は、2020年9月3~6日、Lisbonでの開催予定であり、メインテーマはUrogenital Radiology and Oncology: Present and Futureである。是非ご参加ください。


図1 解剖学者Andreas Vesalius先生による詳細な解剖書


図2 学会場