『ECR(European Congress of Radiology) 2020 視聴報告』
大阪大学大学院医学系研究科次世代画像診断学共同研究講座 鍔本美津子先生

ECR(European Congress of Radiology)は毎年ウイーンで開催されるヨーロッパで最大級の放射線科学会です。2020年はCOVID-19のパンデミックに伴い、onlineのみでの開催となり、期日も従来の3月より7月に変更となりました。OnlineではLive-accessはもちろんのこと、年末までの長期間on-demand access ができます。今回私は、live-accessとon-demand accessでCOVID-19に着目して視聴しました。Live-accessでは最終日以外の毎日夕刻のheadline session としてCOVID-19関連の話題が特集されており、on-demand accessではCOVID-19に関してだけでも11個のセッションが設けられ注目度の高いトピックスでした。内容に関しては画像所見や病状のみならず、各国の状況や、検診、がん患者らに対する影響、検査室のマネージメント、AIが寄与する可能性など多岐にわたっていました。

Imaging in COVID-19 complicationsのセッションでは、①ARDS、②肺塞栓、③脳の合併症についてレクチャーがありました。①ARDSに関しては、COVID-19肺炎の予後予測と線維化の危険因子について解説がありました。COVID-19肺炎がARDSに進展するかどうかを初回のCT画像で予測できるかというテーマに対し、異常陰影の全肺野に対する割合で判断し、異常陰影の範囲が25%以下であればリスクは低く、26%以上であればリスクが高いという簡便な指標が報告されていました。ARDSからの生存者における肺の線維化の危険因子は、まだわかっていませんが、線維化があれば死亡率は高いので線維化の有無を判断することは重要と結論されていました。②肺塞栓は、造影CTを施行したCOVID-19患者の4分の1から3分の1に認められる合併症です。凝固系が亢進しているためとされています。segmental ~subsegmental の肺動脈に血栓を認める事が多く、虚血性心疾患、動脈系の塞栓も見受けられるようです。また肺野の血管影が拡張していることもあり、末梢の肺動脈が拡張し、あたかもtree-in-bud のように見える画像の提示もありました。最後に③脳の合併症についてです。SARS-CoV2 virus はACE2受容体を関して細胞内に入りますが、この受容体は肺胞上皮以外に、小腸、血管内皮細胞、免疫細胞、心筋や、中枢神経領域にも認められるそうです。脳の合併症を引き起こすには2つの経路が想定されていて、ひとつは気道や肺から血行性に侵入する経路。もう一つは嗅球を介して直接的に脳へ侵入する経路です。軽症~中等症の神経学的合併症として、嗅覚障害の症例が、嗅球の異常信号を呈するMRI画像とともに呈示されていました。また、重症患者の神経学的合併症として頭蓋内のサイトカインストームと関連づけて、Acute hemorrhagic necrotizing encephalopathy、Cytotoxic lesion of Corpus Callosum(CLOCC)、髄膜炎、梗塞など、いくつかの画像を呈示しながら説明されていました。

コロナ禍でweb開催の学会研究会が続いています。On-demand配信があれば、くまなく視聴したり、何度も聞き直したりできるメリットもありますが、web開催だけでは情報交換の欠如により、感化されたり刺激を受けたりする機会が減少するデメリットもあるでしょう。しかし、一昔前であれば、web開催するということも不可能であった事を思えばありがたい限りです。知恵と知識を蓄え文明を育ませながら、この時代を乗り越えたいと考えます。

大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座放射線医学教室

 

『ECR 2020 Onlineに参加して』
愛知医科大学 放射線科 鈴木耕次郎先生

2020年7月15日~7月19日にweb開催されたECR2020 Onlineに関して、IVR領域を中心に報告したいと思います。ECR2020は本来3月11日から5日間ウィーンで開催される予定でしたが、2月下旬頃にはEUでもCOVID19の感染が増え始め、3月初旬にESRからECRが 6月15日~19日に延期されると連絡がありました。その後もCOVID19の蔓延が悪化し、4月初旬にonlineのみでの開催に変更になる旨通知がありました。COVID19の蔓延状況を勘案すると致し方ないと思いますが、webのみでも開催されることは良かったと思います。
さて、本題のECR2020ですが、webサイトは総じて使い勝手がよく、プログラム確認や検索なども容易に行うことが出来ました。時差の関係や日常業務の兼ね合いもあり、on timeでのlive配信を視聴することは少し難しかったですが、録画されたセッションやposter exhibitionを中心に視聴しました。EPOSは全部で3814題(scientific exhibit:1797題、educational exhibit:1860題、eurosafe imaging:157題)の発表がありました。Non-vascular IVRでは、チェニジアのAbid先生らがCTガイド下膵生検110例の報告をしていました。膵のCT下生検は目新しいIVRではありませんが、本邦では内視鏡的なEUS-FNAが第一選択となっており、110例の報告は症例数が非常に多いと思います。経腹的直接穿刺、経肝的穿刺、経胃的穿刺、経後腹膜穿刺など様々な方向から生検が行われ、重度合併症はなく安全な方法であると結論されていました。この結果を見ると、膵のCT下生検を不安なく行うことが出来ます。Vascular IVRでは、educationでシンガポールのShi先生らが副腎静脈サンプリングで右副腎静脈のover-selectiveによる偽陰性に関して報告していました。これはカテーテル先端が奥に入りすぎて正常副腎部分からの採血になってしまうことで、サンプリング時のカテーテル位置、血管造影所見を詳細に評価する重要性を再認識しました。
IVR領域の受賞では、ポーランドのRago先生らが、”Intraarterial chemioterapy in retinoblastoma treatment – 4 years experience”でCum Laudeを、国立がんセンター中央病院の菅原先生らが”Direct embolization technique via preexisting nonvascular route for major arterial injury: when and how to do it”でCertificate of Meritを受賞されていました。菅原先生らの発表は、穿刺やドレナージなどのトラクト経由で直接動脈損傷部をコイルやゼラチンスポンジで塞栓する方法で、非常に上手く止血が得られた症例を数多く提示していました。これは日常診療においてのトラブルシューティングとして非常に勉強になる内容でした。
最後に、COVID19のパンデミックが早く終焉を迎え、例年通りウィーンでのECRに早く参加できるようになることを祈願してECR2020の報告を終わりたいと思います。


写真1: 愛知医科大学病院


写真2: IVRスタッフ

『ECR 2020 Onlineに参加して』
京都大学医学部附属病院 放射線部 片岡正子先生

今年は、COVID-19感染が日本のみならずヨーロッパ諸国にも広がり、ECRも直前で延期、そしてWeb開催に変更を強いられた。初めてウィーンの学会参加を予定していた人にとっては残念ではあったと思う。しかし、当時の混乱状況を考えると、多くの発表予定であった力作の教育講演、演題が学会お蔵入りにならなかったというだけでもまずは良しとしなければいけないのかもしれない。今後ますます広がるであろう、Web開催の学会の在り方を示す試金石として、注目していた。
発表準備について、大学院生が口演発表となっていたがスライドに音声を入れて動画を作成ということであった。本番に英語を忘れたらどうしよう?というプレッシャーからは開放されるが、リアルタイムの議論の機会がないのはせっかく口演なのに物足りない。質疑応答の機会をどのように提供し活性化させるのかは、今後の課題と思われた。
会期であった7月の15-19日までは、1時間程度を単位として、Liveの口演やシンポジウムが行われた。
シンポジスト3~4名の口演と、座長を交えてのQAセッション。画像の下に、チャットのような質問コーナーがあり、視聴者からの質問も取り上げられる形式となっていた。チャットで書き込めばいいので、非英語圏の人間には実はハードルが低いかもしれないとも思った。
Table Talk というコーナーでは、ECRの会長が、演者を招いて、今注目の話題についてどんどん質問をする、言ってみればWebインタビューコーナーである。いくつかあるトピックのなかでも、ESR iGuide (clinical decision support for referrers)を取り上げたい。臨床医が画像をオーダーする際のサポート機能を担うガイドライン及びそれを使うためのアプリのようである。(詳細:http://www.esriguide.org/)基準となるガイドラインは、アメリカのACR appropriateness criteriaそのままの部分もあれば、European Society 独自のガイドラインを用いているものもある。学会はこれの使用を進めていきたいように思われたが、今後の発展は注目に値する。ヨーロッパ全体が同じ基準でいいのかどうかは疑問ではあるが、少なくとも検査の適正化には役立つようである。E-learningに関する話題も取り上げられていた。
シンポジウムではBreast imaging に関するトピックもMRIやスクリーニングを話題にしたものがみられたが、数はあまり多くなかった。肺がんスクリーニングについてのセッションがあったが、いずれのスクリーニングも紹介する臨床医との協力や、AIの導入による読影の効率化が話題に挙がっていた。他に、COVID-19 関連、AI関連のトピックも目立っていた。
ただ、初めて参加したECR2020 Onlineの5日間で、内容がチェックできていないものが沢山ありそうだ。まず、最初1-2日ほどは、oralの検索の仕方がよくわからず、見たいものを探すのに右往左往した。Liveの口演がどの時間でどのように行われるのかわからずいくつか聞きたかったTalkを逃したようである(毎日メールでお知らせが来たのではあるが)。そして、時差のため夕方~夜半過ぎ(日本時間)に様々なLiveイベントが行われ、毎日寝不足になった。多くのものを見逃したに違いないと落胆していたら、これらのコンテンツはトピック毎に分けて、”Highlight Week” という形で会期後から11月にかけて再放送されるとのことで、ちょっとほっとした。


画像:ECR Online 参加中