『第14回APSCVIR2019レポート』
東海大学医学部専門診療学系画像診断学/付属八王子病院 画像診断科 長谷部光泉先生

第14回アジアパシフィック心臓血管IVR学会(APSCVIR)は2019年2月21日〜24日に、インドネシア(Bali)にて行われた。本学会は、アジア、オセアニア地区の16のIVR学会から構成されており、参加者は年々増加しており、2000名を越える参加者が集う学会である。アジア発のカッティングエッジな学術的な発表から教育講演、電子ポスターなどで構成され、温暖なリゾート地にもかかわらず、非常に活発な議論がなされていた。
その中で、2月22日の午前に行われたAPSCVIR MEETS SIR(Moderator: Prof. Andrew Holden, Prof. Brian Stainken)のセッション中でProf. Ziv Haskal (JVIR Editor/USA)が“Future IR”と題した講演を行った。世界的なKey Opinion Leaderの一人であるZivが行ったIVR領域の未来についての講演を興味深く拝聴した。彼の講演においては、IVR領域の新しい手技は、過去では、1)必要に応じたイノベーション、2)確定された病理所見に基づく治療、3)外科手術を置き換える低侵襲手技に応じて生まれてきたが、未来においては、”Directed innovation”が新しい手技を生むという考え方を示した。Directed Innovationとは、「方向付けられた進化」のことであり、従来のイノベーションの生まれ方とは一線を画している。すなわち、ニーズを待って新しい手技を生み出すのではなく、疾患を新しく再定義し、それを改善するために方向性を持ってテクノロジーの力を借りて新しいIVR手技を積極的に生み出すことが必要であろうという内容であった。新しい分野としては、全身状態をモニターするセンシング技術やニューロモデュレーション(neuromodulation)と呼ばれる埋設型の小型の神経刺激デバイス(例えば、脳深部刺激や脊髄硬膜外刺激など、その他全身について)の進化が近い将来には一般的になってくるだろうと予測されており、これらの開発や埋め込み手技などについても我々のIVR手技として対応していくべきだろうと述べた。また、日常臨床においても、いわゆる「確定した病理診断」がなくともIVRが対応すべき疾患概念は存在するという考え方である。その一例として、良性疾患である変形性膝関節症の痛みに対する塞栓術(Okuno JVIR 2013)を例に挙げ、関節痛がなぜ痛むのかという根本的なメカニズムはわかっておらず、こういった慢性的な病気に対する認識を変えていく必要があると述べた。その他、いままで病態がよく理解されていないリンパ系の病気についてもMR lymphographyなどで評価し、リンパ系の塞栓術の有効性などについても触れていた。その他、新しい血管造影装置のためのソフトウェアとして、Angiographic perfusion imageなどは、現在その有用性が検討されており、重症虚血肢の治療のエンドポイントの選択や、EVAR後の腎のパーフュージョンや、頭蓋内のパーフィージョン、その他、肝を含むInterventional Oncologyの分野での応用が期待されていることを紹介した。
ヘルスケアの未来予測として、「Healthcare 2030」、つまり、10年後の未来予想は、様々な人口統計、疾病構造、技術革新に基づき予測がでている。そして、その技術革新は、放射線医学、病理学からおこると言われている。さらに、P4 Medicine(Predictive(予防医学)、Personalized(個別医学)、Preemptive(収集したデータから先制して介入する)、Participatory(患者が理解してこうしたサービスに参加型))が一般的になってくるとされている。これらの革新は、いわゆる基礎研究と臨床研究をつなぐTranslational Researchからイノベーションが生まれることは多くの予測から知られているところである。また、2030年にはロボット手術や、遠隔患者ケアなども一般的となってくると予想されている。画像下治療:IVRについても、そのイノベーションの波は既にやってきており、急激に変化していくものと考えられる。今までの常識的な考え方、古い考え方ではその波についていくことはできず、我々のIVRの分野においても我々の専門性が大きく変革していくことを楽しみながら準備する必要があるだろうと講演を締めくくった。私個人としても、こういった考え方には大いに賛同することろであり、今までの古典的なIVR診療のみにフォーカスをおいているだけでは、革新のスピードについて行けないと考えている。そのためにもIVRに関するTranslational Researchを積極的に進め、イノベーションを生み出す側の新しいIVRistsを育成していきたいと強く感じた。